89話 彼との会話 | love storys  ~17歳、私と君と。~

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どれだけ、時間が戻ればと思っただろう。

どれだけ、彼が愛おしいと思っただろう。

どれほど・・・

       私は君との未来を願っただろう。

「他の学校の生徒の者です」


僕はそう答えた。


しかし当然ながら彼の不審者を見るような眼は変わらない。


「・・・どこの学校ですか?」


「それは秘密ってことで」


ただ、分かんなかっただけ。


ここら辺にある学校のことなんて知らない。


「じゃあ、質問を変えます。ここで何をしているんですか?」


「屋上の景色を見て、その帰りです」


「ドアに寄り掛かって座っている意味は?」


「足元がふらついて、その場に倒れ込んだ・・・ってとこですかね」


僕は苦笑しながら彼を見上げる。


見降ろす彼に見上げる僕。


歳はきっと僕の方が上なのだろうけど、今の関係図だとこれは適当なものなのかもしれない。


「よくわかんないですね」


「何がですか?」


「あなたが何でここにいるかですよ」


彼のその言葉で、僕は必死に思考を巡らせる。


何かいい手はないか・・・。


ベストなのは彼をここからいなくならせること。


不信感を取り除いて・・・だ。


でも、そんなことできるだろうか?


いくつかのパターンを瞬時に組み立てるが、どれも失敗しそうなものばかり。


焦るな・・・落ちつけ・・・。


悩めば悩むほど。


時間が経てば経つほど。


彼の不信感は募っていく。


その時だった。


僕らの無言が打ち消される。


しかし打ち消したのは僕でも、彼でもなく。


・・・理菜さんだったんだ。


「裕哉・・・さん?」


会話が途絶えたのを不思議に思ったのか、それとも今の僕らの会話が聞こえてたのか。


そんなことはわからないけど。


そんな理菜さんの言葉に彼が反応する。


「・・・裕哉さん?」


「そう、裕哉って言います」


「そうですか。それより少し気になることがあります」


僕の名前のことを触れることなく、少しだけ話を逸らす。


「何ですか?」


「ドアの向こうにいる女の子は誰ですか?すごく聞き覚えのある声が聞こえたんですが」


この時に分かる。


裕哉さんというワードに反応した意味が。


「それはあるでしょうよ。同じ学校の生徒なんだし・・・」


なんとなく、彼の気持ちは分かっていたのだが、確実性をも他焦るために分からないふりをしておく。


「それだけじゃない。もっと深い関係の女の子の声に似ていたんです」


「深い関係?もしかして彼女ってことですか?」


「・・・そこは言いませんよ」


彼は明言を避けたがなんとなくわかる。


僕の予想は当たっているのだと。


「とりあえず、その子の名前を言ってみてください」


「理菜って言います。その子ですか?」


今さらになって気付く。


この嫌な雰囲気に。


瞬間的に嫌な空気が僕の周りを包みこんだように感じた。


「その子ですよ」


「どういう関係で?」


少しだけ、彼の言葉のトーンが荒くなった気がした。


冷静さが少しだけ。


ほんの少しだけ薄れた気がしたんだ。


「プライバシーですよ」


そんな彼に僕は冷静に返答した。


「教えてください」


「じゃあ、先にそっちから。そこまで聞くってことは何かしらの関係があるんですよね?」


「そこは本人に聞いてください」


「なんで・・・」


「なんでもです。きっと理菜は俺がここにいることを知らない。小さい声で話しているから聞こえていないはずです」


「わかりました。名前は?」


「隆弘です」


初めて聞く名前。


この名前は僕にとって嫌な名前になったんだ。


理菜さんが出す返答によって・・・。




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