~side隆弘~
『おかけになった電話は・・・』
彼女にかけた電話は繋がらない。
アナウンスコールが聞こえるだけ。
間が悪いのか。
それとも、彼女が電波が届かないようなところにいるのか。
どちらにせよ。
こういう運命なんだなぁ・・・。
そう思うしかなかった。
俺は決意を固めたところで、告白をするチャンスには巡り合えない。
少し経ってもう一度電話すればいいだけの話。
だけど、俺にはそれはできない。
一度した固い決意が崩されて、もう一度決意を決めるなんて・・・。
俺には無理難題だった。
賭けたはずのチップは自分のもとに手をつけられることなく戻ってくる。
絶対にないと思っていた、現状維持。
何も変化はない。
俺と理菜の間に、進展もなにも。
嬉しいことのはずだけど・・・。
少しモヤモヤした。
俺はため息をつきながら携帯電話を閉じた。
弱い自分は変わらず・・・か。
好きな人に告白をできなかった俺は、まだ弱虫のまま。
繋がらなかったという仕方がない状態でも。
それでも、告白できていないという事実は何も変わらない。
ただの言い訳。
どんなことをしてでも、相手に想いを伝えたいのならまた電話をすればいい。
ポストに手紙を入れればいい。
彼女を探せばいい。
いくつもの選択肢がある。
でも、俺はどれにも手を出さない。
選択肢を破棄して、強い自分になることをあきらめる。
今日は雪が降るって天気予報で言ってた。
ホワイトクリスマスになるって。
けれど、実際は暗闇の空がただただ佇んでいるだけ。
悠然と漠然と。
ズキン。
そこここにつもった悲しみが俺の体を締め付ける。
痛いくらいに。
俺はその悲しみを全身に受けながら歩く。
1人でクリスマスイブで賑わった繁華街を。
なんで歩こうと思ったかなんて見当もつかない。
ただ・・・足が勝手に動いた。
家に戻るのを拒否したんだろう。
弱い自分が打ちひしがれることのできない家は窮屈以外何物でもない。
楽しそうに歩くカップル達。
それらには対照的な俺の表情。
俺は楽しそうに笑うことなんてできない。
目の前にそびえ立つのは大きなクリスマスツリー。
ツリーにつけられた電球たちが忙しそうに様々な色を照らしている。
そのツリーを囲むように人だかりができている。
どうやらこのツリーはここでは結構な人気らしい。
そのツリーを見て何を思うかは人それぞれ。
綺麗と思う人もいれば、電気代どれくらいかかるんだろう?
なんて現実的に見ている人もいる。
前者は声に出してそんなことを言うけど、後者は声には出さない。
マイナス的な発言は周りの印象が良くないから。
日本人は周り印象をひどく気にする。
となりに恋人もいるわけだし。
前者の場合は女の子が言うと可愛らしく聞こえる。
後者を言えば、男でも女でも冷めた目で見られるのは確実。
まぁ。
今の俺にはそんなことはなにも問題ではなかった。
だから・・・。
「くだらない・・・」
そんなことを口にして言えたのだろう。
でも、小さな声。
聞こえたのは近くの数人だけ。
その数人は俺の方を振り向く。
俺はその視線に一瞬だけ目を合わせて、その場を立ち去った。
なにしてるんだか・・・。
内心肩をすくめて苦笑する。
僻んでいる自分は馬鹿みたい。
弱い自分は馬鹿みたい。
そして何よりも・・・。
悲しみを背負って歩いている自分が一番馬鹿みたいだった。
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