~side理菜~
私は携帯電話をバックから取り出して画面を開く。
そこには、信じられない相手が表示されていた。
なんで・・・今更。
私は出るべきか出ないべきか悩む。
この電話に出てしまったら・・・声を聞いてしまったら。
また、あの頃の恋心が戻ってきてしまうんじゃないか。
そんな不安が頭の中を駆け巡った。
クリスマスイブの夜。
彼は私に何の用事があるというのだろうか。
なんでわざわざ電話を・・・。
考えている間も、着信音は鳴り続ける。
耳障りな音。
よし。
私は、心の中で一つの決意をして、通話ボタンを押した。
『もしもし・・・』
裕哉さんの声がはっきりと聞こえた。
その声は、耳から脳へ。
そして、心に届いた。
ドクン・・・。
心臓が大きく波打った。
大好きな人の声。
忘れかけていた人の声。
忘れようとしていた声。
色々な感情が蠢いて、その言葉は行き場をなくし、私の体の中を彷徨い続ける。
『もしもし。どうしたんですか?』
なるべく、感情を出さないように・・・。
喜んでいると悟られないように。
必死に抑える。
『いや・・・あんまり意味はないんだけどさ。今日なにしてるかなって』
『今日・・・ですか?別になにも・・・』
『そっか』
その彼の言葉の真意はわからない。
ただ、ほっとしたような、悲しそうな・・・。
そして、罪悪感を滲ませるような。
そんな言葉だった。
『裕哉さんは何かしてるんですか?』
『僕?僕は・・・家にいるよ』
少し悩んだ後の裕哉さんのその返事。
・・・なんで嘘をつくのだろうか。
電話越しに微かに聞こえる人々の話し声。
そして、店内でかかっていそうなBGM。
この二つが彼がファミレスか洒落た店にいることを決定づけさせる。
『家・・・か。じゃあ、今日はずっと一人ですか?』
『うん。そう。理菜さんは1人?』
『はい。今家ですよ。裕哉さんと同じで』
全くの嘘。
今いる場所は、イルミネーションで光に満ち溢れている繁華街だ。
陽気なクリスマスのメロディが流れ出す。
この音は意外に大きく、電話越しの裕哉さんにも聞こえているかもしれない。
まあ・・・別にいいけど。
『・・・彼氏はできた?』
唐突に質問が変わる。
それに驚き
『へ?』
変な声を出してしまう。
『いや・・・だから。恋人はできたかなって』
『恋人・・・ですか。もしもいるなら今日は予定が入ってるはずですよ』
私は苦笑しながら言った。
『そうだよな』
『裕哉さんは彼女は?』
『いないよ』
『じゃあ、好きな人は?』
間髪いれずに私は聞く。
『どうだろうね』
彼は言葉を濁して、私の問いから逃げた。
これはつまり、肯定を意味する。
好きな人がいるって。
その時、昔の裕哉さんの言葉が脳裏によぎる。
「理菜さんのことが好きだ」
もしかしたら・・・まだ・・・。
その期待は一瞬だけ。
絶対にあり得ないと分かっているから一瞬。
『理菜さんは・・・好きな人は?』
『私は・・・』
好きな人。
誰だろう。
裕哉さんなのか。
隆弘なのか。
忘れようとしている相手なのか、距離を取ろうとしている相手なのか。
二人に振られて、尚も好きでいるなんて往生際が悪い。
『いません』
力強く言った言葉は、嘘の言葉。
と同時に。
そうであってほしいと願う言葉。
そうであると自分に言い聞かせるように言った言葉。
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押してください~!!
励みになるので。
電話の相手は・・・裕哉でした!!
隆弘ではなくて・・・です。
この時の裕哉の感情、想いは裕哉編で過去の記憶として少し出るかもです。
ただ、裕哉はもう2月にいるので普通にこのシーンを書くことはないです。