~side隆弘~
「じゃあ、出かけてくるね」
俺はそう言いながら靴を履く。
「どこ行くの?」
母さんが俺に聞いてきた。
今から夕飯を作るところだったらしく、エプロンを巻いていた。
「理菜の家だよ」
「あ~・・・そういえば昨日言ってたわね。行ってらっしゃい」
「うん。行ってきます」
お母さんの言葉を背中で受け止めて、俺は家を出た。
外に出ると、お世辞にもきれいとはいえないハンパな三日月が暗闇の夜空を照らしていた。
とはいっても、それだけではとても明るくなるものではなくて・・・。
当然のように、たくさんの街灯が煌々と明かりを灯していた。
俺はその光が写し出す、正しい道を歩き彼女の家に向かった。
俺が何故、理菜の家に行くのか。
それは昨日の夜のこと。
携帯電話に、ふいに理菜の母親から電話がかかってきたんだ。
そこでお母さんが「1人だと心配だから一緒にいてあげない?」
唐突に言われた言葉に「はぁ」
としか俺は答えられなかった。
「あの年の女の子一人だと、物騒な世界だし不安じゃない。それに、彼氏とか連れ込ませないようにしてほしいの」
この時点で分かったこと。
この人は、俺を男として見ていない。
「え・・・と」
「じゃあ、お願いね」
理菜のお母さんは一方的に電話を切った。
きっと、これ以上話しと断られる可能性があるとみたからだろう。
素晴らしい洞察力だ。
こんなめんどくさいことに俺は行きたくない。
とはいうものの・・・。
理菜と二人きりか・・・。
少し嬉しいかもしれない。
理菜は、俺のことをなんとも思ってないと思うので大した期待はできないけど。
いっそ俺から襲うか?
・・・それはお母さんの期待を裏切る結果になるだけか。
一番いいのは、何もなく、つまらなく。
穏便に一日が終わることだな。
彼女の家に着く。
何のためらいもなく押したインターホン。
甲高く家中に響く。
その音がした後・・・。
なかなか彼女は出てこない。
どうしたんだ・・・?
そう思い、少し不安になりながらもう一度押す。
もしかして、本当に彼氏と・・・?
一瞬・・・。
男といちゃついてる理菜の姿が浮かんだ。
「嫌なもんだな・・・」
俺は苦笑した。
それが、理菜のことを本当に好きなんだと物語っているようで。
すると、ガチャ。
という音と同時に「隆弘・・・どうしたの?」
不思議そうな彼女の顔が俺の目に映った。
「親いないらしいから心配になって」
少し・・・棒読みになっていた。
だけど、鈍感な彼女はそれに気づいていない。
「別に私はそんな子供じゃないんだけど・・・。彼氏連れ込んでたらどうするの?」
その言葉に少し胸が痛くなった。
「彼氏いるの?」
俺はそれが顔に出ないようにして彼女に聞いた。
別にそこまで興味ない。みたいな言い方で。
すると彼女は
「もしもの話だって」
今いることを否定した。
よかった。
そんな安堵の言葉が頭の中を駆け巡った。
彼女は素っ気なく、上がれば?と言った。
俺はお邪魔しますと言って、彼女の家に上がった。
初めての二人きり。
リビングでは、普段より広く見える。
だけど、緊張によってすごく視野が狭い。
ドクン・・・ドクン・・・。
彼女の家に二人きり・・・。緊張感がどんどん上がっていく。
平凡に・・・過ごせる気がなくなってきた・・・。
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隆弘編、分けてみました。
長くなりそうだったんで・・・。