「隆弘・・・」
ドアの目の前に立っていたのは幼馴染だった。
「どうしたの?」
私は聞いた。
「親いないらしいから、心配になって」
「・・別に私はそんなに子供じゃないんだけど。それに、彼氏連れ込んでいるところだったらどうしたのよ?」
「彼氏いるの?」
「もしもの話だって」
私はその場に書かんで、玄関に散らばった靴を端の方に寄せる。
そして、あがれば?と彼に素っ気なく言ってリビングの方へ戻った。
彼は「おじゃまします」と言って靴を綺麗にそろえて、私の後ろを歩く。
「なんで親がいないこと知ってるの?」
「昨日理菜の親に言われたんだ。様子見に行ってくれって」
「迷惑な・・・」
私は苦笑しながらさっきまで座っていたソファに腰掛ける。
「嫌だった?」
「うん」
「ひどっ・・・」
「ひどくない。それにしても、私の親はどれだけ隆弘を信用してるんだか・・・」
「幼馴染だからね。家族ぐるみの付き合いだし」
「そういう問題か・・・?あ、座れば?」
「ありがとう」
彼は、私の隣に座った。
この家のソファは異様に大きいので二人座っても十分な距離が取れる。
「そういう問題なんじゃない?」
「隆弘が私の家に来ると安心だと?」
私はあきれ気味にそう言って、背もたれに深く寄りかかった。
「君の親はそう考えたらしい」
「ずいぶんおかしな親だ」
「なんで?」
「この状態で安心できる親の気がしれないよ。思春期の男女二人だよ?」
「そうだね。普通ならすごく危ない状態」
彼は敢えて『普通なら』を強調した。
「普通なら?」
「普通なら」
彼はその言葉を繰り返す。
「私と隆弘は普通じゃないの?」
少しむっとした。
隆弘にはそんな感情はないのかもしれないけど。
私は・・・隆弘のことを・・・。
「兄妹みたいなもの・・・そう考えてるんじゃない?うちの親も理菜の親も」
「兄妹・・・ねぇ」
てことは、私は大方、兄に恋をした虚しい妹ってところか。
「まぁ・・・違うんだけどね」
ポツリと彼はそう呟いた。
「違う?」
「なんでもない・・・。理菜は俺を異性として見てる?」
「急に何さ?」
「気になっただけ」
「見てるっていったら?」
探るように私は彼を見る。
「俺は帰った方がいいかも」
「なんで?」
「異性と二人きりは怖いだろ?」
冗談交じりに彼はそういった。
彼の言葉はどこまでが本気なのかわからない。
「隆弘と二人っきりは怖くないなぁ。人畜無害だし」
「失礼な・・・」
私はここで少し踏み込んでみようと考える。
二人きりで、誰にも邪魔されない場所なんだし・・・。
付き合いたくないと言っていた自分のと矛盾が生じた。
心の中で矛盾が。
二人きりという空間が、私の心を変化させていくんだ。
付き合って、いつかいなくなってしまうのは嫌だ。
でも・・・でも・・・。
付き合わなければ触れられない・・・。
想いが通じ合わなければ、何も始まらない。
失うのは当たり前だけど怖い。
それでも・・・やっぱり・・・。
触れたい・・・キスしたい・・・。
さっきまで裕哉さんのことを考えてたのに、今は隆弘。
移り変わりが早い?
ううん。
二人とも好き。
大好きだ。
比べられないほどに。
「人畜無害じゃないなら、私を襲える?」
そんな一言。
試すように・・・誘惑するように・・・。
慣れないことをしている私に彼はどんな反応をみせるだろうか。
「・・・襲ってほしいの?」
彼は気付かれないようにしたつもりだろうけど。
私にはわかった。
彼が唾を飲むのが。
「無防備な女の子が真横に1人。襲うのが自然じゃない?普通なら」
私も彼のようにあえて『普通なら』を強調した。
「草食系男子なら襲わないと思うよ?」
彼が何かと必死に戦っているのが容易に想像できた。
「狼は羊を目の前にしたら襲うよ?」
「いらない例えだな」
彼の視界は安定していない。
色々なところへ飛びまわっていた。
「隆弘には私を襲う勇気はない?」
屋上でやられた時とは逆。
今度は私から、彼の手を握った。
手探りの誘惑は上手く行っただろうか?
ジレンマが生じた私の心。
選んだのは、彼をものにするという選択肢。
手を握った今。
もう、引き返すことは難しい。
もう、火を灯すことを頑張るしかないんだ。
灯して・・・それを消さないようにするしか・・・。
二人きりという空間は、想いを隠し通せなくなる。
自分の感情が優先されて・・・
後先を考えなくなる。
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押してください~!!
励みになるので
結局・・・隠せられない理菜。
とはいっても、好きとは言ってないですけどね。
ただ、誘ってるとは分かりますよね。
明日は、同じシーンの隆弘編です。