朱色が夜の帳に変わっていく空。
幻想的とは程遠いありきたりな空が私の目に映る。
カラスの鳴き声も次第に減っていき、家の近くに着いたころには完全になくなった。
そして、空も暗闇だけが一面を覆い私を照らすのは月だけになっていた。
家の電気がついていないことを確認した私は、カバンから家のカギを取り出して、開いてるかの確認もせずに鍵を差しこんだ。
少しさびれてきた鍵は、スムーズには中に入らない。
軽く揺らしながら、押しこむ。
完全に入ったのを直感で感じて、私は横に鍵を傾けた。
ガチャ。
扉が開いた音がした。
私は鍵を抜いて、扉を開ける。
玄関は真っ暗で、まるで私が中に入るのを拒んでいるかのよう。
私は、ローファーを脱いで、玄関の電気をつけた。
煌々と照らす光は眩しいぐらいの勢いで目が眩んだ。
光が見えているのにもかかわらず、視界が一瞬真っ暗になる。
そんな現象。
普通逆な気がする。
明るければ明るいほど物はよく見えるんじゃないかな。
眩しすぎたら、暗くなる?
なんでだろうか。
わかんない。
馬鹿な私には到底。
眩んだ目が景色を映して正常に戻った。
私は2度目を擦って、ちゃんと見えるのを確認した後に、リビングに向かった。
閑散としたリビング。
誰もいないと異様に広く感じる。
いつもなら・・・狭く感じるのに。
だから、私はいつも自分の部屋にいる。
狭さを感じない部屋に。
でも、今日は部屋にいたいとは思わない。
リビングにいた方がずっと落ち着くんだ。
私は、ソファに座ってテレビをつけた。
チャンネルを何度も回して、結局電源を消した。
制服を脱いで、部屋着を着る。
下着を取ろうか取るまいか。
ブラは少し窮屈ですぐにでもはずしたい衝動が起きる。
いつもは、お兄ちゃんもお父さんもいるしあまり外さないけど。
でも今日は誰もいない。
「いないし・・・いっか!」
私はブラを外して、和室に放り投げた。
あまり大きくない私のブラ。
それが、私の胸が小さいと物語っているかのようで少し嫌だった。
友達のは異様に大きかったのを覚えている。
EかFか。
私のとは大差があった。
簡単に見分けがつくぐらい。
私は和室の扉を閉じて、ブラが見えないようにした。
ただの現実逃避。
それが見えても見えなくても、胸が小さいのには変わりはない。
私は自分の胸元を見て自嘲した。
谷間すら作れない私の胸はきっと誰も誘惑なんてできないだろうな。
そんな意味を込めての自嘲だった。
私は胸の前で手の平を合わせておもっきり力を込めた。
これをやると、胸が大きくなるらしい。
とはいっても、そんなの絶対ってわけでもないし継続させなくちゃいけない。
持続力のない私には到底不可能な話だ。
私は力を弱めて、手を楽にした。
ぶらぶらと上下に動く手は何もかもをあきらめたかのよう。
次第に、手の揺れは弱くなっていき、最後は止まる。
止まった後私は、ソファに完全に身を預ける。
頭を乗せて、全体重をかけて。
私は目を閉じて、無音の世界に浸る。
ここで何も考えなければ最高の休息なのだろうが、私の頭はそんな都合よくできていない。
ふと、頭よぎるのは、なんで私は胸を大きくしようなんて考えているのだろう?
とかいうくだらない問題。
でも、このくだらない問題だが意外にも答えは見つからない。
男を虜にするため?
女の子に見せつけたいから?
いや・・・ただの自己満足?
どれもパッとしない答えだった。
そして、その中に隆弘の評価を上げるためとかそんな答えもなかった。
じゃあ・・・なんで。
自分の中で答えを見つけることができないまま、私は気付いたら夢の中の世界に迷い込んでいた。
現世では存在することがない夢の世界へ・・・。
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