~side理菜~
無言の時が続く。
君も私も・・・何も話すことはない。
私は感傷に浸って、君はなにを考えているかはわからない。
大切な君だけど。
私には君のことが分からない。
君の気持ちを知ることはできない。
それでも・・・大切な人だ。
今、一番失いたくない大切な人。
恋愛対象に見てはいけない・・・そんな人。
好き?
もし、そう聞かれても私は答えられない。
というより、わからない。
好きなのかもしれないし・・・そうじゃないかもしれない。
大切と好きは違う。
でも、同じ場合もある。
私は願いたい。
前者であることを。
君を好きじゃないと思いたいんだ。
もし、好きなら・・・。
裕哉さんの時と同じように、傍からいなくなってしまう。
話せなくなってしまう。
まだ、裕哉さんは遠い場所だからいい。
連絡を取ることもまだできる。
だけど、この距離で同じことが起きたら・・・。
きっと隆弘は私の前からいなくなってしまうだろう。
そんなのは絶対に嫌だ。
絶対に・・・。
その時だった。
彼が私の手を握ってきた。
ドクン。
心臓が波打つ。
ドクン・・・ドクン・・・。
何度も何度も。
君の手の温もりが私に伝わってくる。
温かい温もりが。
それは嫌じゃなかった。
というより、心地よく・・・そして嬉しかった。
自分の心は正直だ。
いくら否定しようとしても言い逃れはできない。
この瞬間に、私は実感した。
隆弘のことが好きだと。
最悪なことにこの人のことを好きになっていると。
幼馴染。
その存在を超越して、恋愛対象として。
不意に涙がこぼれた。
「隆弘・・・バカ」
温もりを感じながら私はそういった。
とても安らぐこの温もり。
嬉しいはずの私はそれとは対の言葉を発する。
彼が手を握ったことで、気付いてしまったこの気持ち。
恋愛は辛い。
誰だよ。
恋愛はいいものだとか言った人は。
「理菜・・・?」
彼はなにも分かっていない。
私の辛いこの気持ちも。
いつも鋭いはずの君なのに・・・何でこういう時は鈍感なんだよ。
「バカ・・・バカ・・・」
私は何度もその言葉を繰り返して、涙を流した。
好きになってしまった気持ちは自分ではどうにもできない。
変えられない。
なら・・・どうする?
答えはただ一つ。
裕哉さんの時と同じような轍を踏まないこと。
告白しようなんて考えないこと。
それが大事だ・・・。
裕哉さんのことは今でも好き。
そして、隆弘のことも好き。
失うのは・・・一つだけで十分だ。
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あと、昨日の隆弘サイド「僕」になっていたのを「俺」に直しました~
彼の一人称は「俺」なので。。