行き止まりの見えない空を見上げながら、君はなにを想っているのだろう?
雲に覆いかぶされた空を見ながら君はなにを想っているのだろう?
太陽は私たちを照らそうと、光を放ってはいるけれど、私たちにはそれは一切見えない。
悠然と漂う雲はただただ茫漠とそこに立ちふさがる。
屋上から見える景色はいつもこんなものだった。
つまらない同じような景色。
それをずっと眺めていた私。
眺めることで何かがわかるわけじゃない。
何かが変わるわけじゃない。
だけど、私は眺めていた。
なんで?
ただ・・・1人になりたかったから。
そんな想いで上がった屋上。
そういう想いの日に上がる屋上。
だけど、今日は先約がいた。
「何やってるの?」
そこにいた彼に話しかける。
彼は壁に寄り掛かって座りながら空を見上げていた。
雲で覆われた、今にも雨が降りそうなこの空を。
「ああ・・・。理菜」
彼は、空から私に視線を移した。
「ただ、物思いにふけてただけだよ」
「おじさんじゃん」
「失礼な・・・」
彼は苦笑しながら、隣座る?と聞いてきた。
「うん」
私は、彼の横に座って壁に寄り掛かった。
少し痛い壁だけど、今日は何となくそれが心地よく感じた。
「理菜はなにをしにここに来たの?」
「ここは私の特等席だよ?」
「それは初耳。よくここに来てるんだ?」
「三日に一回くらい」
「・・・友達いないの?」
「失礼な。友達ぐらいいます」
私は舌を出して不満そうな表情を浮かべた。
「そっか」
「そうだよ」
そこで話は途切れて少しの間の無言の時が訪れる。
何も話さない時は、色々な音が良く聞こえる。
風が流れていく音であったり、小鳥が鳴く音であったり。
みんなのはしゃぎ声であったり、救急車の音であったり。
数多の全く違う音が私の耳に入ってくる。
その音たちは決してメロディを奏でることはない。
一つの音ではあるけれど、モノが全く違うから。
もしも、私に絶対音感でもあればその音たちを音感でとらえてメロディに変換することもできるのかもしれない。
でも、そうしてしまえば不協和音を生み出すかもしれない。
だから、このままでいい。
ただただ流れる音たちを耳に入れるだけで。
深追いはよくない。
それは何だってそうだ。
パンドラの箱は開ける必要はない。
中身を知らなければ、平穏な人生を過ごすことができるのだから。
恋愛も・・・。
友達のままでいられれば、その人を失うことはない。
深く・・・・深く・・・。
愛を求めても・・・。
恋愛はいつか終わるものだ。
そんな結果論として客観的に恋愛を見ると、大切な人は恋人にはしてはいけないって思う。
友情は一生ものだ。
でも、恋愛は水ものだ。
綺麗にしろ・・・汚いにしろ・・・別れはくる。
それはまるで火だ。
最初は赤い炎のように燃え上がる。
それが、時が経つにつれて、冷静な青い炎に変わっていく。
そして、いつかは・・・。
灰になってさらさらと、風で流されていく。
私は隆弘を・・・。
そんな関係には持って行きたくない。
大切な彼は・・・今の心の支えの彼は・・・。
私にとっての唯一の光なのだから。