~side理菜~
夏休みが終わって、また学校が始まった。
今は九月。
過ごしやすい秋。
と同時に、少しずつ肌寒くなってくる季節だ。
彼から降られた傷が癒えていない私は、とぼとぼと新学期が始まる学校への道のりを歩く。
どうすれば・・・この傷は治るのだろうか?
諦める。
そうすることが一番いいんだと分かっている。
でも・・・。
それは難しい話だ。
『好き』
彼からそう言われているのだから。
「家が近かったらなぁ・・・」
なんて空に向けてポツリとつぶやいた。
無理な願い。
現実を見なくちゃいけないのに・・・。
どうすれば、忘れられる?
いや、忘れるのは無理だろう。
初恋の人だし・・・。
じゃあ、やっぱり諦める方法を考えなくちゃ・・・。
頭をフル回転させる。
・・・まぁ、浮かぶはずもない。
信号が目の前で変わって赤になる。
私は横断歩道の前で立ち止まって、青になるのを待つ。
車が私の横を通り過ぎていって、その風で私の髪がなびく。
私は髪を一度かきあげてため息をついた。
信号が青に変わって、また歩き出す。
木々の葉の色は次第に緑から茶色に変わっていく。
そんな木を見ながら時の流れを実感する。
裕哉さんと会ったあの頃の木は緑だった。
緑から茶色に変わるまでに、私は振られて・・・。
色々な感情の変化があって・・・。
「あはは・・・」
感傷に浸っている自分に苦笑。
学校初日になにを考えながら登校してるんだか・・・。
「おはよ」
その時、後ろから肩を叩かれた。
私はびくっと体を反応させて後ろを振り向く。
「隆弘か」
「不満?」
「驚いたんだよ。肩叩いてくるから」
「さみしそうな背中が見えたもんで」
「そうだった?」
「うん。また何かあったのか?」
「いや~・・・まだ引きずってるだけ」
「なにを?」
「あ・・・」
私は視線を逸らす。
隆弘に言ってない。
裕哉さんのこと。
好きな人のことを・・・。
「なに?」
怪訝な顔で私を見る隆弘。
「なんでもない」
「それが一番気になるんだよなぁ・・・」
「気にしないで」
「もしかして、あの日のこと?」
「あの日って?」
「雨にぬれてた日」
鋭いなぁ・・・。
「違うよ」
平然に嘘をつく私。
だけど・・・
「その日のことなんだ?」
「だから違うって!!」
「理菜の嘘は分かりやすいんだよ」
「な・・・」
「顔に出る」
「そうかなぁ・・・?」
みんな、私の嘘には気づかない。
小さなことでも大きなことでも。
親でも、親友でも。
なのに、毎回隆弘だけは気付く。
「嘘。顔にはほとんど出てないよ」
「じゃあ、なんでわかるの?」
「秘密」
嘘。
それは、バレてしまえば、意味のないものだが・・・。
バレなければ真実になる。
そう誰かが言っていた。
私の嘘は隆弘相手ではすべてが意味のないもの。
でも、他の人には真実になっている・・・?
なっているのなら・・・。
私が嘘をつくのが上手いのなら・・・。
一つ・・・諦めるためのいい手段を思いついた。
それで、諦められるかは別だけど・・・。
私は、自分のために・・。
苦しみから解放されるために・・・。
一つの決意をした。
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今日は理菜編でした。
理菜の思い浮かんだこととは?
話の流れ的に分かる人もいると思いますが・・・。