~side理菜~
「行ってきます」
私は家を出る。
今日はこの後部活があった。
陸上の練習だ。
外に出た瞬間にすぐ家の中に戻りたいという欲求が襲いかかる。
・・・今日サボろうかな。
なんて。
こんなことで休んだら、毎回行かなくなる気がする。
それは避けたい。
自分に甘い人間にはなりたくない。
私は、なるべく日陰を通りながら駅までの道のりを歩く。
暑い・・・暑い・・・。
日焼け止めは塗ってきた。
それでも焼けてしまいそうな暑さ。
今日の温度は何度だろうか?
体温越えてるんじゃないだろうか・・・。
汗が背中を伝わる。
長袖のワイシャツは失敗だろうか。
でも、半そでが嫌いだ。
そうすると、必然的にどんなに暑くても長袖になる。
半そでが嫌いな理由。
それは腕が見えるから。
あとは、長袖をまくってた方が何か好き。
そんな大きな理由はない。
まあ・・・あれだ。
冬でもスカートを短くしてる人たちみたいなもんだ。
・・・少し違うか?
大通りを歩いていると、1人の人に目が止まった。
顔はよく見えないが、きょろきょろ周りを見ている人。
きっと、観光客とかなんだろう。
ただ、何で一人?
もしかして、彼女と待ち合わせとか?
・・・もしそうだとしたら羨ましい限りだ。
私には今まで彼氏がいたことがないのだから。
でも、好きなった人はいる。
1人。
たった1人だけ。
その人には告白はできなかった。
遠くから見ていただけ。
学校も違った。
住んでるところも知らない。
陸上の大会で、たまたま見つけたんだ。
一目ぼれだった。
名前は・・・確か・・・あれ?
なんだっけ・・・。
中学の時、高校の全国大会で見つけただけだからあまり思い出せない。
1年前。
顔だけは未だに覚えててる。
忘れることはない。
二年の月日がたてば顔が変わってるかもしれない。
今見れば、もしかしたら別人のようになってるかもしれない。
でも、それでも・・・。
また会えるかもって思って私は陸上部に入ったんだ。
何の手がかりもない人を。
ただ・・・。
1年前に高校生だから彼は陸上部を引退しているかもしれない。
あの時2年生だったら。
それでも、それしか共通点がないから・・・。
ばかみたい。
そんなことは分かってる。
一縷の望みにかけてみた。
青春の高校生活を捨てて。
全国大会の舞台までいくことができれば、また・・・。
そんなことを思いながら。
観光客の男の人は、まだ周辺を見ている。
その時、一瞬こっちを向いた。
そこで初めてちゃんと顔を確認した。
・・・みたことある顔。
いや、違う。
みたことある顔に似てる人だった。
一目ぼれした相手に瓜二つの顔だった。
ドクン。
当たり前のように心臓が高鳴った。
もしかしたら・・・。
そんなはずない。
心の中で頑張ってその確率を否定する。
だけど、期待がある。
してはいけない期待が。
期待はすればするほど、外れた時のショックが増える。
失望が増す。
だけど、信じたい。
・・・奇跡を。
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