「・・・」
紗希は黙ったまま。
お母さんは泣き崩れて。
僕は・・・。
近くにあったカバンを手に取った。
そして、お母さんの横を通って玄関に向かう。
紗希の手を引きながら。
「どこ行くの!?」
お母さんと紗希の声が被る。
だけど、2人の声の大きさは対照的だった。
「さぁ・・・。わかんない」
僕は、ローファーを履いて外に飛び出した。
紗希も慌ててローファーを履く。
これはただの逃げだ。
何の解決にもなっていない。
だけど、ばれた時はこうしようって思ってたんだ。
自転車にカギを差す。
自転車にまたがり、どこへ行くあてもなくペダルを漕いだ。
紗希を後ろに乗せて。
シナリオはここまで。
ここから先はなにも考えていない。
とりあえずカバンの中には自分の通帳。
確か・・・30万くらい入っている。
どれくらいの逃亡資金だろうか?
考えながら苦笑した。
長期間の逃亡は難しい。
まあ、自分のやったことを思い返しながら、今後どう生きていくのかを考えるには十分な資金かもしれない。
どうせ、まだ未成年。
高校生。
なにをするにも不便な年齢で2人で生きていくのは無理がある。
だから・・・。
これはただの逃亡資金。
捕まるまでの。
「どこ・・・・行くの?」
紗希の不安そうな声が僕の耳に入る。
「考えてない」
僕は即答した。
「なんで、家出ちゃったの?」
「あのままで・・・普通にまた生活できると思う?」
「・・・」
紗希はなにも答えない。
そう。
知られてしまった今、今までのような平凡な生活は許されない。
両親は間違いなく僕達を隔離するだろう。
一切会えなくする。
もしかしたら、僕の方を一人暮らしさせるなり、親類の家に預けるという選択肢を取るかもしれない。
「紗希・・・」
「ん・・・?」
「僕はもう少しだけ・・・紗希といたい・・・」
「もう少し・・・?」
「うん・・・もう少し」
自転車をひたすら漕ぐ。
気付いたらそこは知らない道。
とにかく、家から遠くへ。
そんな気持ちで自転車を漕いで行く。
道なりに進んでいくと、公園が見えた。
僕はそこで自転車を停める。
外は少しずつ暗くなっていた。
公園に明かりが灯る。
誰もいない公園は閑散としていた。
遊具はあまりなく、シーソーとブランコ。
それから滑り台くらいだった。
僕は紗希の手を引いて、芝生があるところまで行った。
芝生の上で寝転がる。
「翔?」
そんな僕を不思議そうに見る紗希。
「紗希も寝てみな?」
「うん・・・」
紗希が僕の隣に寝る。
肌が触れ合う。
肩がぶつかる。
薄暗い空。
まだ、星は完璧には見えない。
あと1時間もすれば真っ暗になるだろうか?
「翔・・・」
「どした?」
お互いに空を見ながら話す。
「私たち、いつまでこうしていられるんだろうね?」
紗希が手を握る力を少しだけ強めた。
「さあね。考えたくもない」
考えてた。
さっきまで。
だけど、それを口に出すのが嫌だった。
制服のままの僕達。
傍から見れば、カップルが空を見ながら語ってるだけかもしれない。
しかし現実は・・・。
エスケープを始めた愛し合う馬鹿な兄妹だ・・・。
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あ~あww
どんどん沼にはまっていく二人です。
逃避行をして・・・
何の意味をあるのでしょうか・・・?