~side翔~
今日は七夕。
願い事を短冊に込めて星空を見上げる日だ。
だからといって、特別学校がなくなることはない。
普通に登校して普通に授業を受けて。
平凡な毎日と同じ。
繰り返していく日常の1ページ。
それがめくられるだけだ。
特別なんてものはなにもない。
織姫と彦星なんて・・・。
そんなものは存在しない。
所詮は神話。
今日は晴れている。
その神話があったとして。
2人は橋を渡って会えたことになる。
なんて。
信じない僕がそんなことを考えてもしょうがないことだけど。
昼休み。
僕は誰もいない屋上で弁当を開けた。
いつも通りのお母さんが作ってくれた弁当。
基本的には昨日の残りのもだけど、朝早く起きて作ってくれたものもある。
それが当たり前でいつも通りで。
だからこそ、感謝しなくちゃいけない。
人は当たり前のことには感謝しない。
普通だって思っているから。
でも、ある時気付く。
それがなくなった時に。
それがいなくなった時に。
その存在の大きさに。
僕にとって母親がいるのは当たり前。
紗希がいるのは当たり前。
この二つはどちらもいなくなっては欲しくないもので。
でも・・・。
僕はいつか失うことになる。
だから、今・・・。
僕は空を見上げた。
「紗希・・・お母さん・・・ありがとう」
柄にもないことを呟く。
キーンコーンカーンコーン。
昼休みの終わりを告げるチャイムが鳴った。
もうすぐ5限が始まる。
・・・めんどくさい。
僕は、力なくその場に寝転んだ。
そして、目を閉じる。
真っ暗な闇の中で浮かぶ顔は紗希の顔。
笑顔で笑う紗希。
その笑顔を見ると・・・。
大好きだ。
そう言いたくなる。
抱きしめたくなる。
ガチャ。
「・・・授業始ったけど?」
ドアが開く音と同時に声が聞こえた。
僕はその声で眼を開いた。
「・・・麻衣」
「久しぶりだね」
ニコッと笑顔を浮かべる麻衣。
けど、その笑顔は少しぎこちない。
「作り笑顔・・・無理すんなよ」
僕は上半身を起こして、壁に座りながら寄り掛かった。
麻衣は、立ったまま隣で壁に寄り掛かっている。
「・・・ばれた?」
「ばればれ」
「自信あったんだけどな。作り笑顔」
「・・・きっと女優には向いてないな」
「多分・・・翔君にだけだよ。こんなにうまくいかないの」
一条の風が僕らの体を通り過ぎていく。
すり抜けるような弱々しい風だ。
その風で麻衣の髪がなびく。
「ごめんな・・・」
「別に・・・謝ることじゃないんじゃない?」
「なんで?」
「誰を好きになろうが・・・誰を振ろうがその人の勝手じゃん」
「・・・ほんとにそんなこと思ってる?」
僕は、手元にあった小石を拾い上げてそれに向かって思いっきり投げる。
「嘘。思ってない。当たり前じゃん」
「妹と別れろって思う?」
カラン。
僕の目の前に小石が落ちてきた。
「思うよ。まあ、それはないって思ってるけどね」
「それはわかんなくないか?」
「分かるよ。翔君と紗希ちゃんが別れる時。それは・・・」
「それは・・・?」
麻衣は空を見上げる。
「2人が会えなくなった時・・・かな」
「・・・どうだろな」
僕も空を見上げる。
「いつか、翔君と紗希ちゃんは織姫と彦星になるかもね」
麻衣のその言葉に僕はなにも返答せずに、ただ星の見えない空を眺めていた。
↑ ↑ ↑
押してください~!!
励みになるので。
あ~・・・。
自分に厳しくなりたい!!
が、なれない!!
う~ん・・・。