「ここ、絶景だと思わない?」
紗希が言った。
坂道の上の方、ガードレールに体重を預けながら海を見る。
「うん。けっこう近くに海があるもんなんだな」
「知らなかった?」
「全く。紗希は知ってたのか?」
「知ってたよ。たまに、一人でブラブラ自転車漕ぐ時があるから。その時にたまたま見つけた」
「そうなんだ」
広大な海は視界には収まりきらないほどの大きさ。
沼とか川とかとは違って澄んでいて、綺麗だ。
「砂浜の方までいかない?」
紗希が言った。
「うん、いいよ」
僕は、近くに止めた自転車に乗る。
紗希が荷台に乗ってきて、僕は自転車を走らせる。
下り坂。
ブレーキを軽く握り少しづつペースを落としながら走行する。
「何、その安全運転?」
「いや・・・歌であるじゃん。長い長い下り坂を君を自転車の後ろに乗せて、ブレーキいっぱい握りしめて・・・なんとかって」
「ああ・・・。私は、勢いよく下りたいな」
「・・・わかったよ」
僕はブレーキを握りしめていた手をハンドルだけに持ち替えて猛スピードで下っていく。
「わぁ・・・速いね」
「紗希のリクエスト通りだろ?」
「うん。ありがと」
下り坂が終わったところで僕は自転車を止めた。
「なんかあっという間だったね」
「そりゃあ、あのスピードだったからな」
僕は自転車の鍵を抜き取り、砂浜に降りるための階段を下りる。
砂浜への第一歩。
いきなり、ローファーに砂が入った。
「翔・・・!ちょっと待って!」
急いで降りてくる紗希。
僕はそんな紗希を無視して海の方へ歩いていく。
制服。
こんな恰好で来る場所じゃない。
そんなことはわかっているけど・・・。
さっきまで波が来ていた場所まで行ってみる。
だけど、次に来た波は弱くここまで届かない。
「何してるの?」
紗希が横に立って僕の手を握った。
「何も・・・」
僕は紗希に笑顔を見せる。
波の音。
風の音が交互に聞こえる。
「ねぇ・・・翔」
「ん?」
大きな波が来た。
その波はさっきとは比較にならないもので。
ザアァァァ。
僕らの足元まで来て、通り過ぎていく。
ローファーの中が水浸しになる。
・・・冷たい。
「私たち、恋人だよね?」
「うん」
「だったら・・・」
紗希は一度下を向いた後・・・。
「キスしたい」
そう言った。
恋人なら普通で当たり前の行為。
ごく自然な行為。
こんな宣言してまですることでッもない。
流れの中でできるものだ。
だけど、僕らは特別。
普通の恋人とは違う。
簡単にはできない。
麻衣は・・・簡単にあっけなく僕にキスをした。
それは、他人だから。
でも・・・兄妹だと・・・。
法律では、禁止されているのは結婚。
キスすることは禁止されてはいない。
違法ではない。
なら、すればいい?
それも違う。
なぜ、法律で禁止されていないのに兄妹がキスをしないか。
そんな前例がほとんどないのか。
それは、道徳的であり当たり前だから。
しないことが普通だから。
「だめ・・・かな?」
「キス・・・したら、兄妹の一線を完全に越えるね」
僕は苦笑した。
「越えてもいいじゃん。私たち・・・恋人なんだから・・・」
「そうだね」
僕は紗希の肩に手を乗せて、そっとキスをした。
波が・・・また僕達の足元を濡らしていく・・・。
この波にいつか・・・僕達は浚われていくのかもしれない。
↑ ↑ ↑
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昨日の記事なんですが、誤字あったので直していたら、
公開をしなくて、下書きにしてしまいました。
夜中に見てくれている方、申し訳ありません。
夜に直していたので・・・。
明日は紗希編。
明後日、し明後日は大介編、麻衣編に一話ごとに変わります。
書きかたいところがあるので。
sideを作ると物語自体はすすまないんですが、
これはこれで大事なので・・・。
是非読んでください!
そして、もう30話です。
まだ終わらないですが、これからもよろしくお願いします。