音がしたと同時に、翔君の腕を引っ張って歩き出す。
私は毎日通る、自分には当分縁がないだろうなと思っていた場所の前で立ち止まった。
「ね?私っておかしいでしょ?」
自嘲。
なんか、自分って馬鹿だな。
そう思った。
「初めて」を自分から失おうとしているんだから。
「麻衣・・・」
「私はこうまでしてでも翔君を手に入れたい。前まではそうは思わなかった。でも今日こうやってデートして改めて思ったんだよ」
目から自然と涙がこぼれ落ちた。
何でかは分からない。
いや・・・わかってるか・・・。
「翔君が好き・・・。ずっとそばにいてほしいって」
我儘な私の心からの願い。
「麻衣・・・僕は・・・」
「何も言わないで。私の話だけ聞いて?」
私は彼の言葉を制して自分の話を続ける。
翔君が言おうとしている言葉がわかったから。
その言葉を言わせたくなかったから。
「う・・・ん・・・」
「人間って欲張りな生き物なんだよ。昔の私は翔君を遠くで見ていられればいいって思ってた。その姿を目に焼き付けられればそれで十分だって」
そう・・・。
君を好きになったあの時から・・・。
「でも、大介君から話を聞いて付き合えるんじゃないかって思って嬉しくなった。それがたとえ利用されるだけであっても。だって、翔君に触れることができるようになるんだもん。この時点で私は欲張り。見ているだけじゃ満足できなくなっていたんだから」
また・・・涙がこぼれる。
涙は止まらない。
「そして、こうやってデートして・・・」
翔君の手を握る力が強くなった。
「私・・・翔君をもう離したくないっ・・・!」
ただの重い女。
これが好きな人同士ならいいかもしれない。
だけど、私の一方的な想い。
届かないかもしれない・・・儚い想い・・・?
「麻衣・・・」
ほら。
やっぱり、翔君は困ってる。
『ごめん』
謝ろうとした時だった。
翔君は私を抱きしめた。
優しく・・・
そっと。
包み込むように・・・。
と思ったら、急に強くなる。
痛い。
そう思うぐらい強い力。
だけど、それが逆に私に安心を与える。
弱い力で抱きしめられるとすぐにいなくなってしまいそうで怖い。
こうやって強く抱きしめてくれたほうが、私にはちょうどいい。
そして、翔君は私が一番欲していた言葉を口にした。
「麻衣・・・好きだよ」
その言葉はきっと嘘。
目の前にあるこの建物への欲求にきっと負けたんだろう。
でも、それでいい。
偽りの好きでも充分嬉しいよ。
君と初のセックスができるならそれでいい。
私のバージンは君に奪われたい。
翔君が私から体を離した時、月が見えた。
さっきまでは雲に覆われていて見えなかった月が。
その月は満月。
満月の夜。
翔君はおおかみになって、私は・・・小羊になる。
私は襲われることに翔君を手に入れることができる。
翔君は責任感が強い男の子だから。
私をほっておくことはなくなるだろう。
やり逃げ。
その言葉が一番似合わない男の子。
大介君とは真逆。
それは言いすぎか。
私はラブホテルの中に入っていく。
初めて入る場所。
不安、大好きな人とやるという期待。
この二つの感情が入り混じる。
自分の不安を消し去るために、私は
『やれば、翔君を自分のものにできるんだよ?』
そう言い聞かせて、不安を消し去ろうとした。
部屋の中は、ピンクばかりで。
そういえば、欲求を強くする色ってピンクだって聞いたことがある。
考えてるんだな。
部屋の中、私は平常心でいようと心掛ける。
翔君は部屋の中央で固まってる。
きっと彼も初めてなんだろう・・・。
このままだとうやむやに終わる可能性がある。
翔君は小心者。
臆病者。
実際にその場になるとなにもできなくなる、だめな草食男子。
そんな君が好きだ。
そんな君を落とすためには、私が頑張らないと。
決意を決めて、私はベッドに腰掛けた。
よし・・・。
一度大きく深呼吸をして・・・。
思い出せ、思い出せ・・・。
告白した後、キスをした妖艶な自分の姿を・・・。
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さぁ・・・どうだったでしょうか?ww
麻衣の頑張りです。
これが・・・翔には届くんでしょうか・・・?