「亜美、早くしないと遅れるよ?」
椎名君は時計を見ながらため息ついてそういった。
「分かってるよ!!でも、まだ化粧してないし・・・」
「スッピンで行けばいいんじゃない?」
ソファに座ってダラッとする椎名君。
なんだか、見ていていらっとする。
ちくしょう・・・。
「うるさい!」
私は、洗面台で化粧ポーチを取り出した。
滅多にしない化粧。
社会人になったのにもかかわらず、未だにほとんどしない。
そのせいで、普通の人よりさらに時間がかかる。
「亜美ー!!」
「何!?」
私は、眉毛を慣れない手つきで書きながら応答する。
「あと、20分しかないけど?」
「うるさいなぁ」
「もう少し早く起きたらいいのに・・・」
椎名君は洗面台の方に来て、呆れ顔で私を見た。
「だったら、椎名君が起こしてくれえばよかったじゃん!」
「起こそうと思ったんだけど・・・」
椎名君は、首をかきながら下を向いた。
「なに?」
「寝顔に見とれてた」
「なっ・・・」
私は手に持っていた、アイブロウを落とす。
「あ~~!!椎名君が変なこというから!!」
さらにタイムロスだ。
「あ・・・ごめん」
今までの会話で分かっただろうが、私たちは2人で暮らしている。
都内のマンションで。
大学を卒業して、3年が経った私たちはお互いに経済的にも余裕ができてきて一緒に暮らすことができるようになったんだ。
私は、名門大学に首席で入学。
みごとに、全額免除で入ることができた。
椎名君も、名門大学。
それもかの東大だったらしい。
それほど頭が良かったのか。
椎名君が、合格証明書を自慢げに見せてきた時はかなり驚いたものだ。
その後、2人とも一流企業に就職することができて今に至る。
3年でもかなりの貯金がたまるほどの給料。
母の方にも十分なお金を振り込むことができた。
最初は貰えるお金の額がバイトと雲泥の差で驚いたものだ。
それよりももっと驚くことがある。
椎名君と一緒に暮らしてもう半年。
付き合って8年!
セックスをしたのは一度だけ。
一緒に住んだ最初の夜。
あの時だけだ。
性欲のなさに呆れる。
そして、不安になる。
「ねぇ・・・時間やばくない?」
「うん。もう少し待って!!」
今日はとても大事な日。
絶対に行かなければいけない特別な用事。
その場所は・・・。
「準備できた!!」
「了解。じゃあ、車出してくるよ」
「あれ?送ってくれるの?」
「当たり前だ。酒飲むかもしれない彼女に車運転させられるかよ」
「飲まないでしょ。結婚式だよ?」
「ワインぐらい飲むんじゃないの?」
私は、普段着ないような服を着て家を出た。
*****************
花婿が待つところへ、父親とともに向かう花嫁。
そして、2人はみんなの前で愛を誓い・・・。
キスをする。
そのシーンを私は初めて目にした。
それも・・・祐二と晴香の。
幸せそうな二人。
「おめでとう・・・」
誰にも聞こえないくらい小さな声で私はそう呟いた。
結婚式が終わって、披露宴が終わって。
帰ろうとした私に、後ろから今日の主役が声をかけてきた。
「もう帰っちゃうの?」
晴香の声。
「だめだった?」
「ううん。ただ、亜美と少し話したいなぁと思ってさ」
「いいけど・・・どうしたの?」
「いや・・・なんとなくだよ」
晴香は薄く微笑んで、私を椅子に座るように促した。
2人で、向かい合うように座って他愛もない話をする。
大学を卒業をして、今まで何をしていたか。
どんな恋愛をしているのか。
中学を卒業して以来、会わなかった私たち。
きっと、「あれ」があったから。
「ねぇ・・・亜美」
晴香が、急に真面目な声になる。
「・・・何?」
「あの頃・・・私、祐二と亜美が付き合ってたの知ってたよ・・・」
「やっぱ・・・そうなんだ」
「亜美は祐二のことが好きだったんだね」
「あの時は・・・ね。ほんとごめんね」
「いや、いいよ。ただ・・・」
「ただ・・・?」
晴香は、空を見上げて
「言ってほしかったなぁ・・・」
そう呟いた。
「ごめんね・・・」
少し寂しく見えたその顔に私は小さな声で言った。
「亜美・・・これから、また友達でいてくれるかな?」
その微笑みは、昔の私には絶対にできないような可憐な微笑みで・・・。
「うん」
でも、もちろん。
今の私にもその微笑みができる。
だって私も幸せなのだから――。
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珍しく、完璧なハッピーエンドですね。
二作目以来です。
明日は、浩平編です!多分ww
浩平のサイドストーリーを少しだけ書かせていただきます。
浩平大嫌いな人も見てくれると嬉しいです。
浩平以外に、今までほとんど出てこなかったあの人が・・・。
登場します!!
さぁ、あの人とは!?