~side亜美~
待ち合わせ場所となったのは表参道だった。
「なんでそこにするの?」
椎名君にそう聞いたら、思い浮かんだのがそこだった。
そう言っていた。
私はあきれ気味に、先に表参道に向かうことにした。
椎名君は学級委員の仕事があるので少し遅くなるらしい。
イブまでご苦労なことだ。
「待ってようか?」
椎名君に聞いたのだが、先に行ってて。
と言われたので、一人寂しく制服のままカップルで賑わう表参道の駅前で立ちすくむ。
さっきまで出ていた夕日は完全に沈んで真っ暗な空。
それを感じさせないぐらい光り輝く表参道の街並み。
空に点々と光る星。
その星は雲があるせいなのか、見えたり見えなくなったり。
イルミネーション。
それは光が織り成す芸術。
人間にしかできない技。
けれど、太陽が沈んで夜にならないと輝きが半減する。
逆に、空が暗ければ暗いほど光が際立つ。
私という闇。
きっとこの空よりも暗い。
でも、照らしてくれる相手がいない。
今までは。
でも・・・。
「ごめん!遅れて!!」
走りながら私のもとへ駆け寄ってくる椎名君。
この人なら・・・もしかして。
なんて淡い期待をしてみたりする。
「うん。学級委員は大変だね」
「ほんとだよ。もうクタクタ・・・」
彼は上半身をだらんとさせてため息をついた。
「そんな感じで一緒にいてもつまんないんだけど?」
「あ、ごめん」
椎名君は姿勢を戻してブレザーのポケットに手を入れた。
「デートコースは決まってる?」
信号が赤になって、立ち止まった時私は聞いた。
「全く・・・」
「やっぱりか・・・」
「ごめん・・・」
「ずいぶん苦い初デートになるかもね」
私は彼が手を入れていたブレザーのポケットに手を入れる。
右ポケットという狭い空間で私たちの手が触れ合う。
彼は驚き顔で頬を赤く染める。
私はそんな彼を無視して手を絡ませるようにして握った。
「こういう、手のつなぎ方イイと思わない?」
「凄くびっくりするけどね」
私が覗き込むように椎名君を見ると、彼は視線を左下に向けた。
ポケットの中で手を握ったまま私たちはどこへ行くあてもなく歩き続ける。
12月の冷気が混じった風が体を震わせる。
温かいのは左手だけ。
そんな寒そうにしている私を見て、
「どこかの店に入る?」
「う・・・ん。じゃあ、そこに入ろ?」
私は目の前にあった大きな大手百貨店を指差した。
高校生のデートの定番だとここでくるのはファミレスとか。
だが、生憎そんなところで使う金はない。
せっかくのイブだし、使いたい気持ちは山々だが、家計がかかっている。
ただでさえ、電車賃かかってんのに。
心に中で自分で納得がいく言い訳を作りながら店内へ入った。
そこで一度私たちは手を離す。
どちらかという訳じゃなく、同時に。
店内は、外とは全く違う温度。
寒さなんてものを全く感じなかった。
「とりあえず、座るところでも探す?」
彼の提案に私は頷いて一階をうろつく。
けれど、座れそうな場所はない。
私が、エスカレーターの方に向かおうとした時。
彼が初めて自分から行動に出る。
「え・・・?」
私の手を掴んで、真剣な眼差しを向けてくる。
なんなのだろうか?
私にはさっぱりわからない。
すると椎名君は、一度下を向いた後、もう一度私の方を見て
「こっちから上がろ?」
そういって、私を階段の方へ連れていく。
「何で階段?どう考えてもエスカレーターの方がいいじゃん」
「いいから」
彼に引っ張られる私の手。
こんな強引な椎名君を初めて見た。
・・・まぁ、デート自体も初めてなんだけど。
階段に着いて、私たちはゆっくり一段ずつ登る。
誰もいない階段は、クリスマスイブだということを忘れさせるぐらい静か。
私たちの足音だけが響く。
そして、踊り場に着いた時、彼が立ち止まって私の方を振り返った。
「どうしたの?」
そう聞く私の、肩を掴んで強引に唇を重ねた。
その時の私の感情は・・・。
言葉では表現できない、初めて感じるものだった。
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押してくれると嬉しいです!!
椎名君が初めて強引に行きましたね。
亜美はそれをどう受け止めたのか。
嬉しさ、悲しさ・・・。
そういうものではない、感じたことのない。
初めての感情。
次回、最終話です!