72話 長かった一日 | love storys  ~17歳、私と君と。~

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どれだけ、時間が戻ればと思っただろう。

どれだけ、彼が愛おしいと思っただろう。

どれほど・・・

       私は君との未来を願っただろう。

「お疲れ様です」


私は大学生の先輩二人に一礼して、休憩室に戻った。


そこには誰もいなかったが、一応更衣室に入って着替えをする。


着替えの途中で手をグーに握ってみる。


何の不自由も感じなく握れる。


額に手を当ててみる。


まだ、少し熱いけど朝ほどではない。


動いて熱って下がるもんなんだな・・・。


私は、制服を着て裏口から外に出た。


「よっ!」


椎名君が笑みで私を出迎える。


「ずっとそこにいたの?」


「いたよ。藤崎さん、出てくるの遅い」


「着替えてたんだから仕方ないじゃん」


私たちは自然と横並びになって歩き出す。


「で・・・熱は大丈夫そう?」


「おかげさまで。だいぶ良くなったよ」


「ならよかった」


安堵の笑みを浮かべる椎名君。


「そんなに気になったの?外で私を待つほど」


「うん。すごい心配だった。学校終わって、てっきりすぐに家に帰ったのかと思ったよ」


「私、普段、そのまま家に帰ることないんだよ」


「毎日用事があるの?忙しいね」


「毎日バイトがね」


「え・・・毎日?」


彼は怪訝そうな顔を浮かべる。


「うん。三か所でやってるから」


「なんでそんな・・・」


「家にお金がないから」


平然と私は言う。


「そっ・・・か」


彼はそれの本当の意味を察してくれたようでそれ以上は聞いてこなかった。


その後、彼とした会話は何事もない他愛もない会話。


けど、それがすごく楽しくて。


「私、この電車乗るから」


駅での別れ。


何か名残惜しく感じた。


そんな私から、当然のように笑みは消えていた。


彼からも笑みが消えている。


だからと言って、彼も私と同じように名残惜しいのかはわからないが。


「送ってこうか?」


彼が嬉しいことを言ってくれる。


「あはは。ご冗談を」


「冗談じゃないよ」


「・・・気持ちだけ受け取っておくよ。さすがにこっちまでこさせると、椎名君帰るの大変になると思うから」


椎名君は残念そうに「そっか」と頷く。


電車が来るまであと三分。


この三分が経ったら今日の椎名君といる時間は終わりを迎える。


久しぶりの男の子との会話。


浩平を除いて。


すごく楽しいものだった。


一人寂しく駅まで向かう20分が今日はすごく早く感じた。


それが、異性と話したからなのか、椎名君と話したからなのか。


そこはまだ分からないけれど。


「そういえば、椎名君はバイトしてないの?」


「僕・・・?僕は・・・」


彼が言葉を発しようとした時、電車が私たちの前を通り過ぎていく。


そして、車体が真ん中ぐらいに到達したとき、電車が止まった。


ドアが開いて、一斉にホームで待っていた人たちが乗る。


私もその波に従うように電車に乗ろうとした時。


椎名君が私の腕を掴んだ。


「え・・・?」


私は目を丸くして彼の方を見る。


椎名君は顔を赤らめながら俯いた。


「どうした・・・の?」


「・・・」


彼はなにも言わない。


何かを迷っているように見えた。


『ドアが閉まります。ご注意ください』


アナウンスが流れる。


そのアナウンスで彼は我に返ったようで


「あ・・・ごめん。ばいばい」


焦りながら作った笑顔。


今日、私が熱の中で頑張って見せた営業スマイルよりも不格好な笑顔。


「・・・?ばいばい」


私はそんな彼に疑問を持ったまま電車に乗った。


「あ・・・」


そういえば一つ聞こうとしていて忘れたことがあった。


エレベータの中で意識を失いながら私は椎名君になにをしたのか・・・。


「まぁ・・・いいか」





今日一日は色々あった。


朝から熱が出て、エレベーターに閉じ込められ。


椎名君と一緒に。


そして、バイト先でまた椎名君に会って。


一緒に駅に向かって。




椎名君・・・か。


電車の中でポツリと彼の名前を呟いた。




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凄い今助かってますww


そういえば、昨日コメントいけなくてすいません・・・。


昨日の分と合わせて、後で携帯で見に行こうかなと思っています。


今日は初めてのサークルの新入生歓迎会!!


楽しんできますね♪