東京に着いたのはまだ夜が明けてない時間帯だった。
僕は、バスを降りて歩き出す。
今日は12月24日。
そう。クリスマスイブだ。
住宅街の街並みにはイルミネーションが綺麗な家もたくさんあった。
まあ、今日の夜はさらに公園とかもイルミネーションでいっぱいだろう。
それを見てキスをするカップルもたくさんいるだろう。
お金のある大学生や社会人のカップルは夜景の見えるレストランで・・・。
ってところかもしれない。
そのお金は男が出す。
だから、男はお金を持っておかなければならない。
この日は特に・・・だ。
僕は、財布の中身を確認する。
・・・金額は言わないがある程度は入っていた。
生活費などは通帳に入っているので今日でこのお金を大半は使えるだろう。
どうせ、そんな使わないとは思うけど。
いくら互いにお金持ちだからといって高校生のうちから高そうなレストランに2人で行く気はない。
それより問題なのは、由美にとって僕が俗名アッシーやらメッシーやらミツグ君であることへの不安。
多分・・・それはないとは思う。
というか、そんな不安を抱いてどうする。
しかも、考え方が古い。
僕は馬鹿らしくなって考えるのをやめて自分の家に向かった。
母親によると引っ越す前と同じ場所らしい。
高すぎて買い取り手がなかったのかもしれない。
家賃30万だからな・・・。
空はまだ漆黒の闇。
その中で僕はただ黙々とトランクケースを引っ張りながら歩く。
タイヤが地面を転がる音だけが響く。
まだみんな寝てる時間帯だ。
誰も外を歩く人はいない。
僕は携帯を開いて由美にメールを送った。
『今日の17時から時間空けといて』
一週間前にも似たようなメールを送った。
だから、これは確認だ。
今すぐに返事がほしいメールではない。
僕は携帯をしまって歩くペースを速める。
少し寒いな・・・。
新潟に比べればそんなに寒くはない。
けど、バスの中が温かかったせいで少し油断していた。
僕は意味もなく空を見上げた。
数多の星が見える。
「星か・・・」
昔、夏帆と見てたよなぁ・・・。
今はもう見ることはないだろうけど。
「はぁ・・・」
僕はため息をついた。
そのため息は白い霧となって消える。
もう忘れなくちゃ、夏帆のことは。
消し去らなくてはいけない。
由美だけを見ていくために。
こんな葛藤は何回目だろうか?
由美を忘れようと努力したり・・・夏帆を忘れようと努力したり・・・。
けど、どっちも忘れられずに今まで生きてきた。
人間はそんなものだ。
そう簡単に忘れられない。
大切だったら絶対に・・・。
そして、離れてから後悔の念が押し寄せる。
今度こそ・・・って思ってもそう簡単にはいかない。
それは百も承知だ。
それでも僕は決めたんだ。
今度こそ・・・今度こそ由美だけを見ていくって・・・。