私はカッターを手で弄んだあと、刃を出した。
チキッ。
少し高い音がして、銀色の刃が姿を現す。
私はその刃を自分の左手首に当てた。
これで力を加えば、動脈まで刃が届き、血が大量に流れ出す。
簡単に自分の命が終わるんだ。
人の命は重い。
けど、簡単に失くすことができる。
私は少しだけ力を入れる。
「っ・・・」
少し痛い。
これで、動脈を切ったらどれほど痛いのだろうか?
かなりの激痛だろう。
けど、別に私に躊躇する気持ちにはならなかった。
もう何かを考えるのが嫌なんだ。
裕樹君のことも蓮君のことも夏帆のことも・・・。
手首から血が出る。
その血が流れ落ちてカーペットに斑点模様としてペイントされた。
・・・ここで大量の血を流すのはやめといた方がいいかもしれない。
それに、途中で発見されたら生き延びてしまう可能性もあるし・・・。
こんなことを考えられる私はどれだけ冷静なんだろうか。
思わず苦笑してしまう。
私は、制服のブレザーのポケットにカッターをしまって家を出た。
外に出ると、冷たい何かが私の頭に当たる。
雨・・・かな?
私は空を見上げる。
雨ではなかった。
冬にしか降らない「雪月花」のひとつの雪だった。
雪と光は幻想的な空間を生み出すことができる。
最期にそんな景色を見るのもいいかもしれない。
だから、蛍光灯が光を灯す夜まで・・・。
でも、家に戻るのもどうかと思う。
私は制服のまま外をうろつくことにした。
昼間の平日の時間。
外にいるのは主婦ばっかだ。
制服でこの時間帯にいるのは私だけ。
歩いていると、あの交差点に着いた。
蓮君が私を助けてくれたあの交差点。
今までいい思い出。
けど、今は・・・。
「はぁ・・・」
私はため息をつきながらその交差点を渡った。
このため息は蓮君への当てつけ。
もう、会いたくない蓮君への・・・。
色々なところを回っているうちに日が沈んだ。
雪はまだやまない。
少しづつではあるが、積ってきた。
まあ、もうすぐこの世からいなくなる私には関係のないことだけど。
蛍光灯が雪を照らして、すごく綺麗に見える。
もし、クリスマスのイルミネーションの中で雪が降ったら綺麗だろうな・・・。
私はそんなことを考えながら思い出の場所に向かった。
そこで死ぬことを決めていたんだ。