思い出の場所に着く。
そこは裕樹君と星を見た河川敷・・・。
雨の中、自分たちの想いをぶつけ合った河川敷だ。
道路に雪はまだ積もってはなかったが、川の目の前の草が生えている場所には雪が積もっていた。
積もっているとは言っても一面が白く染まっているという程度だが。
「さすがに、星を見た時みたいに寝転がったら寒そう」
私はひとり言をつぶやきながら急な下り坂を下りて、川の目の前まで来る。
私は空を見上げた。
顔に雪が当たる。
それでも上を見続ける。
星を探して・・・。
「見えない・・・か」
まあ、当たり前だ。
天気が悪いんだし。
私はポケットからカッターを取り出した。
もう・・・充分だろ?由美・・・。
自分で自分に言い聞かせた。
夜まで引き延ばした意志の弱い自分に。
「じゃあね・・・由美・・・」
自分に別れの言葉を告げて・・・私は自分の手首を切る。
さっきとは比較にならないほど深く・・・。
もちろん、その分かなりの激痛が走る。
これが死ぬってこと・・・?
死ぬって・・・こんな痛いんだ・・・。
でも、こうやって死ぬ前に考える時間があるのもいいかもしれない。
自分の罪悪感を少しでも浄化するため・・・。
何の?
私が裕樹君を選ばなかったことへの・・・。
血が大量に流れる。
白い雪の上に鮮血がこぼれ落ちる。
それも、今まで見たことない量だ。
私は手の力を抜いてもう一度空を見上げた。
この空の続く先に・・・君はいるんだよね?
裕樹君・・・。
今の私にこんなこと言う資格ないかもしれないけど・・・
大好きだったよ・・・。
足元がふらつく。
血が足りなくなってきたようだった。
もうすぐ・・・意識がなくなる。
そして、この人通りのない場所だ。
朝まで誰も気づかない。
私は誰にも気付かれることなく死ねるだろう。
その時、一瞬あり得ない感情が芽生えた。
死にたくない・・・。
もう一度裕樹君に会いたい・・・。
あり得ない願い。
血は止まらない。
後悔は・・・ないはずだよね?
自分に問いかける。
答えは・・・でない。
そんなことを考えていると、私の瞳から涙がこぼれて左手首に当たった。
「痛いなぁ・・・」
そして、その痛いは手首じゃなくて・・・心。
でも・・・思ったところでで何も変わらないのは分かってること。
意識が徐々に安定しなくなってくる。
その時・・・その時どこからか声が聞こえた。
幻聴だろうか?
私は周りを見渡す・・・。
雪が降ってるだけで人影はな・・・
一人・・・見つけた。
顔は見えない。
いや・・・それは嘘。
見えてるんだ。
けど、それを信じられなかっただけ。
信じようとしなかっただけ。
だって、君がこんなとこにいるはずなかったんだから。