「好き・・・じゃなかった。けど、今は好きになりかけてる」
彼はそう言った。
「じゃあ、出会った当初は好きじゃなかったんだ?」
「うん・・・」
それが一番最悪だよ。
あのころ・・・単純だった私は助けてくれてた君に惹かれた。
裕樹君との葛藤があった。
君を選んだ。
けど・・・元々私は眼中になかったんだね・・・。
「よく・・・好きでもない人とキスできるね」
私は蓮君に吐き捨てるように言った。
「・・・」
彼はそれに対して何も言わない。
「よく・・・セックスできるね。好きでもない人と・・・」
私の目からは当然のように涙が出ていた。
「ごめん・・・」
「あれが初体験って言ったのも嘘?」
「いや・・・それは本当」
「夏帆のためなら・・・初体験だって捨てられるんだ?」
ただの皮肉。
でも言わずにはいられなかった。
「ごめん・・・」
彼は俯きながらそれしか言わない。
やっぱり・・・悪い人じゃないんだ・・・。
ちゃんと罪悪感はあるんだから。
蓮君は夏帆に踊らされたただのピエロ。
だんだん彼のことが可哀想に思えてきた。
「今日・・・学校休むって先生に言っておいて・・・」
私はそう言って踵を返す。
「由美!!」
背中越しに蓮君の大きな声が耳に届いた。
「いままでありがとう。ごめんね・・・」
私は何の返事もせずに歩き出す。
家に戻ると、梨香さんが驚いた表情で「どうしたんですか!?」と聞いてくる。
「今は一人にして・・・」
私はそう言って部屋に入る。
蓮君に裏切られた。
けど・・・今私は蓮君を責めない。
そして・・・首謀者である夏帆も責めない。
だって・・・本当に悪い人を見つけたんだから。
それは自分。
本当に必要で大切だった人を選ばずに、近くにいるという単純な温もりだけをを選んだ私だ。
最悪だよ私・・・。
涙がこぼれてきた。
今・・・もしここに裕樹君がいてくれたらどれだけいいだろうか・・・?
けど・・・君はいない。
会えるなら、もう一度会いたい。
「あはは・・・」
そんなの無理・・・。
もう・・・泣きつかれた。
これ以上悲しみたくない。
自業自得なのはわかってる・・・。
頭の中が混乱してくる。
悲しみと自己嫌悪で。
もう、何もかもが嫌になる。
その時、ふいに頭の中が真っ白になった。
そして・・・浮かんだのが裕樹君と蓮君の顔。
「いい加減にしてよ・・・」
自分にそう言って・・・私は机の上にあるペン立てからカッターを取り出した。