113話 もう何もかもが | love storys  ~17歳、私と君と。~

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どれだけ、時間が戻ればと思っただろう。

どれだけ、彼が愛おしいと思っただろう。

どれほど・・・

       私は君との未来を願っただろう。

「好き・・・じゃなかった。けど、今は好きになりかけてる」


彼はそう言った。


「じゃあ、出会った当初は好きじゃなかったんだ?」


「うん・・・」


それが一番最悪だよ。


あのころ・・・単純だった私は助けてくれてた君に惹かれた。


裕樹君との葛藤があった。


君を選んだ。


けど・・・元々私は眼中になかったんだね・・・。


「よく・・・好きでもない人とキスできるね」


私は蓮君に吐き捨てるように言った。


「・・・」


彼はそれに対して何も言わない。


「よく・・・セックスできるね。好きでもない人と・・・」


私の目からは当然のように涙が出ていた。


「ごめん・・・」


「あれが初体験って言ったのも嘘?」


「いや・・・それは本当」


「夏帆のためなら・・・初体験だって捨てられるんだ?」


ただの皮肉。


でも言わずにはいられなかった。


「ごめん・・・」


彼は俯きながらそれしか言わない。


やっぱり・・・悪い人じゃないんだ・・・。


ちゃんと罪悪感はあるんだから。


蓮君は夏帆に踊らされたただのピエロ。


だんだん彼のことが可哀想に思えてきた。


「今日・・・学校休むって先生に言っておいて・・・」


私はそう言って踵を返す。


「由美!!」


背中越しに蓮君の大きな声が耳に届いた。


「いままでありがとう。ごめんね・・・」


私は何の返事もせずに歩き出す。


家に戻ると、梨香さんが驚いた表情で「どうしたんですか!?」と聞いてくる。


「今は一人にして・・・」


私はそう言って部屋に入る。


蓮君に裏切られた。


けど・・・今私は蓮君を責めない。


そして・・・首謀者である夏帆も責めない。


だって・・・本当に悪い人を見つけたんだから。


それは自分。


本当に必要で大切だった人を選ばずに、近くにいるという単純な温もりだけをを選んだ私だ。


最悪だよ私・・・。


涙がこぼれてきた。


今・・・もしここに裕樹君がいてくれたらどれだけいいだろうか・・・?


けど・・・君はいない。


会えるなら、もう一度会いたい。


「あはは・・・」


そんなの無理・・・。


もう・・・泣きつかれた。


これ以上悲しみたくない。


自業自得なのはわかってる・・・。


頭の中が混乱してくる。


悲しみと自己嫌悪で。


もう、何もかもが嫌になる。


その時、ふいに頭の中が真っ白になった。


そして・・・浮かんだのが裕樹君と蓮君の顔。


「いい加減にしてよ・・・」


自分にそう言って・・・私は机の上にあるペン立てからカッターを取り出した。