98話 僕にとっての光 | love storys  ~17歳、私と君と。~

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どれだけ、時間が戻ればと思っただろう。

どれだけ、彼が愛おしいと思っただろう。

どれほど・・・

       私は君との未来を願っただろう。

わき腹が痛く、立ち上がるのさえ躊躇ってしまう。


「倒れてないで早く立てよ」


隼人は容赦なく、倒れている僕のわき腹を思いっきり蹴る。


「がはっ!!」


僕の唇が切れる。


痛い。痛い。痛い。


その単語だけが頭の中に駆け巡る。


でも、このまま倒れてるだけじゃただのサンドバックだ・・・。


僕は、手を使い必死に立ち上がる。


「へぇ・・・立てるんだ?」


隼人がそう言いながら僕の方に歩き出す。


一歩一歩、ゆっくりと。


そう。その動きは余裕。


もう、相手は攻撃してこないだろうという余裕。


・・・一矢は報いたい。


何となくそう思う。


やられっぱなしってのもなんか嫌だし。


そう思い、僕はもう一度だけ・・・全身の力を込めて余裕綽々で歩く隼人めがけてこぶしを放った。


それが見事に隼人の左頬にあたる。


「っ・・・」


隼人は苦悶の表情を浮かべた。


そして、その表情が一瞬で憎悪に変わる。


その表情を見た途端に、背筋が凍った。


いつもの隼人には想像できない瞳。


かなり冷たい瞳だ。その瞳は僕を捕える。


・・・何だよその瞳。


「やってくれるじゃん。裕樹」


隼人はニヤリと笑った。


不敵な笑みだ。


そして、指を鳴らした。


すると、そこには目を疑うような光景があった。


奥にあったドアから、たくさんの人が出てくる。


少なくとも高校生ではない・・・けど若い連中だ。


「なんの冗談だよ・・・」


僕は隼人の方に視線を戻す。


「暴力団のしたっぱってとこかな?」


冷たい声で隼人は言った。


「へぇ・・・で、こんな人集めて何する気だよ?」


自分の声が震えてる。


強気で言っているけど、震えるんだ。


もう、この先どうなるか・・・分かりきってることだから。


「お前をボコボコにしてやるよ」


さっきの連中が僕の周りを囲む。


「お前一人で来いよ」


「この方が面白いだろ?・・・いけ」


隼人がそう合図を出すと、怖そうな面々が指を鳴らしながら僕の方に近づいてくる。


もちろん囲まれているので逃げ場はない。


「安心しろ。顔には当てない。次の日に腫れあがってたらみんなが不思議に思うからな。骨折しない程度。一人一発だ」


そう言って、あらかじめ用意されていたもう一つの椅子に座る。


一人一発・・・。


僕は周りを見渡しながら苦笑いを浮かべる。


ざっと20人はいる。


それに顔に当てないってことは全部、腹部ってことになる。


あ~・・・明日3食のうち何食食べられるだろ?


そして、一発目のパンチが腹部に容赦なく命中する。


二発目は後ろから、背中にヒットする。


「やめて!!」


夏帆の声が聞こえるがそんなのは無意味。


すずめの涙にも満たないもの。


僕は、20発くらい終わり、地面に倒れ込む。


「じゃあ、帰るぞ」


隼人は足早に退散しようとする。


「なぁ・・・隼人・・・」


僕は倒れたまま隼人に声をかける。


「これで・・・なんになったんだよ?意味あったのか?」


僕のその問いに隼人は足を止め僕を見下ろす。


「言っただろ?ただの憂さ晴らしだって・・・」


隼人はそれだけ言って歩き出す。


なんだよそれ・・・。


「裕樹君!!」


夏帆が走ってこっちに向かってくる。


その時の君は僕にとっての光だった。