今回のLink MEは特別編として経済コラム「先月の円ドルレート[81] 20248」に引き続き、月末値変化で見た20248月の円ドルレート変動の原因を、日経新聞電子版マーケット欄為替・金融記事と「為替レート決定の仕組み ①~③」で説明した利子(金利)裁定式、に基づき解説します。

 

 20248月の円ドルレートは、第1・2週の2週連続の大幅な円高・ドル安でスタートし、第3週は揺り戻しの大幅な円安・ドル高に見舞われましたが、第4週は再び円高・ドル安へ回帰、円高・ドル安の勢いは最終第5週の月末取引最終日まで持ち越され、最終的には2024年7第5週7月31日(水)150.905.97大きく上回る、循環的変動となったことが、「先月の円ドルレート[81] 20248」のグラフより読み取れます。

 

 「為替レート決定の仕組み ①~③」で説明した、利子裁定式ii*=(πe-π)/π予想為替レート(πe)について解いたπe=π(1+ii*)を使って、2024731()2024830()の予想為替レートを求めてみます。利子率(金利)データ日米10年物国債利子率を使用します(時差を考慮し米利子率は前日データ)

 

 2024731()円ドルレート終値150.90円利子率1.045%米利子率4.139%を上式に当てはめると、予想為替レート146.23となります。同様に2024830()円ドルレート終値144.93円利子率0.890%米利子率3.862%を上式に当てはめると、予想為替レート140.62となります。2024731()から2024830()にかけての予想為替レート変化5.61円の円高・ドル安、他方両日の日米利子率格差はそれぞれ、3.094% 2.972%で日米利子率格差変化(Δ(ii*) ) 0.122%縮小となります。

 

 これらの値を以下の計算式に当てはめると、予想為替レートの変化(Δπe)5.61円の円高・ドル安が現実為替レートの変化(Δπ)へ及ぼした円高・ドル安効果は5.78、他方日米利子率格差変化(Δ(ii*)0.122%縮小が現実為替レートの変化(Δπ)へ及ぼした円高・ドル安効果は0.185.97(現実為替レートの変化) ≒-5.78円-0.18が得られます。円ドルレート予想日米利子率格差縮小はともに円高・ドル安圧力を及ぼす方向に作用しました。円利子率米利子率はともに低下しましたが、円利子率低下は植田和男日銀総裁の追加利上げ可能性発言によって抑制されていた一方で、米利子率は景気悪化・労働需給緩和・米雇用統計年次改定の大幅下方修正観測と大幅下方修正公表・米連邦準備理事会(FRB)の9月米連邦公開市場委員会(FOMC)利下げ踏み切り確実視と大幅利下げの可能性による米利下げ観測を受けてより低下したことが、日米利子率格差縮小をもたらした原因です。

 

 

 「先月の円ドルレート[81] 20248」のグラフで描かれる傾向線の動きは、利子裁定式の考え方に従えば、ともに円高・ドル安圧力を及ぼす方向に作用した円高・ドル安予想日米利子率格差縮小によって説明できます。前月末比並びに前週末・月末比でみた20248月の円ドルレートは第3週の円安・ドル高を除いてすべて円高・ドル安で推移したため、20248月第1245日経新聞電子版マーケット欄為替・金融記事より、円高・ドル安レート予想の原因を特定できます。

 

 円高・ドル安レート予想に基づく円高・ドル安圧力原因は、景気悪化・労働需給緩和・米雇用統計年次改定の大幅下方修正観測と大幅下方修正公表・FRBの9月米FOMC利下げ踏み切り確実視と大幅利下げの可能性による米利下げ観測に基づく米利子率先安予想、米景気減速に基づく米株式相場の大幅下落と円高進行に伴う日経平均株価の大幅急落に基づく「円キャリートレード」の巻き戻しパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の利下げ開始発言植田和男日銀総裁の追加利上げ可能性発言国内実需筋と投機筋による先行き円高・ドル安予想です。