大分に住むこの子は、俺の事を「師匠」と呼び、写真の撮り方や編集のやり方など
やりとりが始まった。
この子と接していると、「金儲け」や「女の嫉妬や妬み」「足の引っ張り合いの業界」
といったものとは無縁の日常に「やすらぎ」を覚えるようになった。
彼女と近くの公園に紫陽花を撮りに行った。
公園は思ったより人出も少なく、小雨が降る中二人で傘を差し、紫陽花の咲く小道を
写真を撮りながら歩いていた。
俺は用意した小瓶の中からカタツムリを取り出すと、紫陽花の濡れた葉の上に這わした。
これを見た彼女は「うわぁ~すごい、さすが師匠~」と言って何枚もシャッターを切っていた。
俺は「これはヤラセじゃなく演出だよ」と言うと、「ぷっ」と笑った。
あ~なんて落ち着くんだ、まったりと時が過ぎてゆき、癒されていく。
暫くして彼女の子供が病気になってしまった。
もしかしたら彼女はこう思っているのだろうか。
子供がこんなことになってしまったのは私のせい。
私が夫を裏切り、家庭を裏切り、不倫へと走ったから。
・・・・だから、神様が罰を与えた。
そして、これからの私の一生をかけて償う、子供のため夫のためだけに尽くす。
・・・これが、私の贖罪。
あれから10年、俺は今でも彼女の事を・・・・・・・
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