目次8、「俺がJekyllでいられる時間」 | カメラマン 兼 作家の備忘録

カメラマン 兼 作家の備忘録

あの頃まだJekyllから時々Hydeだった、だが今ではもうすっかりハイド時々ジキルなのだ。

 

 大分に住むこの子は、俺の事を「師匠」と呼び、写真の撮り方や編集のやり方など

やりとりが始まった。

この子と接していると、「金儲け」や「女の嫉妬や妬み」「足の引っ張り合いの業界」

といったものとは無縁の日常に「やすらぎ」を覚えるようになった。

 

 彼女と近くの公園に紫陽花を撮りに行った。

公園は思ったより人出も少なく、小雨が降る中二人で傘を差し、紫陽花の咲く小道を

写真を撮りながら歩いていた。

 

 俺は用意した小瓶の中からカタツムリを取り出すと、紫陽花の濡れた葉の上に這わした。

これを見た彼女は「うわぁ~すごい、さすが師匠~」と言って何枚もシャッターを切っていた。

俺は「これはヤラセじゃなく演出だよ」と言うと、「ぷっ」と笑った。

 

 あ~なんて落ち着くんだ、まったりと時が過ぎてゆき、癒されていく。

 

 

 

 暫くして彼女の子供が病気になってしまった。

 

 もしかしたら彼女はこう思っているのだろうか。

子供がこんなことになってしまったのは私のせい。

私が夫を裏切り、家庭を裏切り、不倫へと走ったから。

 

・・・・だから、神様が罰を与えた。

 

そして、これからの私の一生をかけて償う、子供のため夫のためだけに尽くす。

 

・・・これが、私の贖罪。

 

あれから10年、俺は今でも彼女の事を・・・・・・・

 

 

 

待望の第2弾「続・Hyde時々Jekyll」9月1日文芸社より発売

 

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