副院長からまたも衝撃なお話し
病院に着くと早速副院長室へ
最初の言葉は、「2年間病院で働きその後新設の杏林学園で勉強して検査技師の資格を取りなさい。」
というお話でした。続いての言葉は、「人生何が起こるかわからない、そのためにも専門学校ではなく短大に行きなさい。もちろん職員としてだよ。」でした。
一時間前に驚かされた余韻が覚めぬ間に、東京の短大に行けと言うのである。
嬉しさと同時に(勉強などまともにやっていない私にとって)、入学できる望みなど全くなかった。
でも、やるしかない。自分自身こんなに奮い立った経験はこれまでなかった。
人生のスタートだ。これで俺の道は決まり!頑張るだけだ!
そして新しい生活がスタートした。
昼間は検査室での仕事に駆け回り、5時以降は事務の宿直を引き受け、合間をみて高校時代の教科書を見直し始めました。
そうして半年が過ぎた頃、どうせなら1年前倒しで検査の勉強をしたいという欲望に駆られてきた。
技師長さんにその旨を伝えると、思いもよらず一つ返事で院長先生に相談してくれました。
即決でOKが出た。
しかし問題はこれからだ。本当に入学が出来るのか? 全く自信がなかった。
当然、推薦入学の準備から始めました。
病院長先生と多古高等学校長の推薦状を頂き、三鷹市にある杏林学園短期大学へ向かいました。
田舎者なので、遅れては大変。そんな思いがあり、予定より一時間も前に校門に到着した。
すると、「おいおい君、何だい?」と言って一人のおじさんが近寄ってきました。
見たところ警備や用務員さんでもなさそうでした、、、、が、どうやら先生らしかった。しかも、かなり偉そうな感じの対応でした。
その後の会話や起こったことは内緒にしておきましょう。
結果は、
またまた驚きの「合格」でした。
高校を卒業してここまでの実感は、ただ、ただ、「夢のよう」その言葉につきます。
心底「人生にこんなことがあるんだ」という思いでした。
次回は杏林学園時代のことを書きます。
バスを待つ10分間で人生が決まる
家の前のバス停で町に向かうバスを待っていると、
学生服から背広に代わった私を見て近所に住む看護師(吉次千代)さんが、
「あら椎名君、今日はどこに行くの?」
「今日から役場です。9時に辞令が出るんですよ。」
すると看護師さん「椎名君、顕微鏡を見たり、試験管でいろいろ病気のことを調べる検査の仕事ってどう?」って言うんですよ。
「エッ? そんな仕事があるんですか? そんな仕事が出来たらいいな」と、即答しました。
それ以後、バスの中で看護師さんとの会話はなく、私は役場へ、看護師さんは町の病院へ。
30分ほど早く着いたので、何気なく図書館に入った。
「読書」には全く縁のない私ですが、気が付くとブルーバックスの「血液のはなし」を借りていました。
これから毎日通ってくる職場なので、気楽な気分で借りたと思うが、全く意識のない行動でした。
予定の時刻が近づいたので辞令が出る会議室へ。
しかし、9時になっても、10時になっても辞令が出る気配は全くありません。
何だろう?、、、、ただ時間が過ぎました。
11時近くになって出た私の辞令は、「多古中央病院検査課勤務を命ずる。」でした。
とっさに辞令が遅れた理由がはっきりしました。
役場の玄関先で新入職員の記念撮影をしていると、黒いセドリックが入ってきました。
結局、私はその車に乗って病院へ。急転直下の展開にただただ驚くばかりでした。
一方、バスを降りて別れた看護師さんは、病院に着くやいなや(辞令が出る私のことを)婦長さんに、そして婦長さんと一緒に副院長先生に、そして院長先生へと伝えて頂いたようです。9時5分前に院長先生から町長さんに私の勤務部署の変更願いをされたようです。
ほんの数時間のでき事でしたが、言葉では言い表せないほど、そして今まで経験したことがないほどの幸せを感じました。
小さい頃から「義雄! 嘘をついても、悪いことをしても「風の又三郎がちゃんと見ているんだよ。」、、、と、母親によく言われてきた。
風の又三郎がどんな奴かは全く知りませんが、とにかくそう言われてきたので、それを信じてきた。
“きっと風の又三郎のご褒美かな”と勝手に思っていたことを思い出します。
ちょっと楽しくなった中学・高校生活
ちょっと楽しくなってきた中学、そして高校
喧嘩仲間達と中学に進んだ。
他の小学校から来た新しい仲間ができて楽しくなってきた。
新聞配達は隣村まで広がり、相変わらず継続していた。
一応、行きかう人には誰にでも「おはようございます」と挨拶はした。「おはよう」と言ってくれる人、黙って何の反応もない人、さまざまだった。
でも、「おはよう、ご苦労さん」と言って頂くととても嬉しかった。
そうか、そう言っていただけるようにするには、もっと大きな声で、「おはようございます」と言えばいいことに気づいた。
【「おはようございます」と相手にはっきりわかるように挨拶をすることが何より大事。
勉強も大事だけど、そんな挨拶が出来ることの方がもっと大事であることが分かった。
それは74歳の今になっても変わりません。】
当然、野球部に入部。そのお陰もあってか、どんどん背が伸びた。
2年、3年はB組、クラス対抗駅伝で自分の村を一番で駆け抜けたのは気持ちが良かった。
そうした嬉しいことをもっといっぱい経験したいと思った。
あっという間の3年間だった。
高校の選択は少し迷った。地元の多古高校か進学校である匝瑳高校かで。
先生は匝瑳高校を進めたが、母親は多古高校でもいいのではと言った。
なぜなら、「お前は将来国鉄に入って車掌さんになりたいんだろう。高校はどこでもいい、国鉄に入ってから中央鉄道学院に入れるように頑張ればいい。
「高校時代で一番大切なのは一生付き合えるいい友達を作ることです。」と言うんですよ。
なるほど? そしてそうすることに決めた。
その言葉が、私の人生で最大の宝物になっていました。「どんなことがあっても友達を裏切ることはしない」母親への最大の感謝です。
3年間もあっという間に過ぎた。
さて就職は、、、? その年は国鉄の採用はなかった。
国鉄時代が終わろうとしていたのである。
焦ったのは父。匝瑳高校のある八日市場市(現在は匝瑳市)の消防士を勧められたが、自宅から遠かったので✖
そうこうしていると多古町の職員募集の話が舞い込んだ。
同級生7人程と一緒に合格した。
希望部署の話が出た。私が希望したのは「土木課か建設課」。外で働くことを希望した。
なんとなく、建設課ではないかと聞こえてきていた。
そしてその年の4月1日を迎えます。
次回の記事です。
久しぶりです
皆さん、お久しぶりです。
あと5年、80歳まで現役で仕事を続けよう。
どれほど役に立つかは分かりませんが、自身の経験と信念の総決算のつもりでこのブログを再開します。
もし役に立つことがあればこの上ない幸せです。
【ちょっと辛かった小学生】
いじめに会ったと言うより、負けていなかった(小学4生年まで)。
小学校1年生の12月、千葉県の多古第一小学校から興新小学校に転向しました。
同じ町なのに、田舎に来たな。そんな感じかな。
あまり詳しく覚えていないが、喧嘩に明けくれた小学校低学年だった気がします。
自分が悪かったのかも? 今となってはわかりませんが、人生で一番厳しい時代だった。
4年生の時、学校帰りに同級生6人に待ち伏せにあった。
小学生とはいえ、本格的な喧嘩であった。
結構勇ましい立ち合いだった。
何せ、相手は同級生とは言え6人だから。その場がどう決着したのか分からないが、覚えていたのは血だらけで家に帰るわけにもいかないので、田んぼの道を帰りながら湧き水で顔や頭を洗い、一休みして帰宅しました。
するとびっくり。担任の先生と父親が待っていました。
近くで畑仕事をしていた人が学校に通報したみたいだ。
その時とっさに脳裏をかすめたのは、みんなに心配をかけてしまった。
我ながら優等生的な反省の心だった。
そして、もう喧嘩はやめようと決心した。
【しかし、そう決めるためにはかなりの勇気が必要だった。
何をされても絶対に耐えなければならないからです。
子供ながらにそれを耐えることの恐怖感は結構強いものがありました。
だれかに守ってもらいたいという気持ちもあったが、結局のところ一人で耐えなければならないことを覚悟した。】
転向した冬から10軒ほどだったが新聞配達をはじめたので、子供ながら貯金は結構あった。
母に相談して、野球のグローブとボールを買った
それは自分で決めたこと。しばらく誰ともしゃべらず、遊ばず、ただ、バックネット相手にひたすらボールを投げ続けようと思ったのです。それしか自分を抑える手立てがなかったのかも知れない。
そうして数か月、一年が過ぎた。
気が付くと喧嘩相手達も特に気になる存在ではなくなり、“野球キチガイ”なんて呼ばれるようになっていた。
そんな頃かな?
突然「お医者さんになりたい」なんて思った頃があった。
特に何があったわけでもなく、本当に一瞬の思いだった。
とっさに、自分の家では無理無理とあっさり勝手に決めていた気がします。
夏休みと冬休み、通信簿をもらうとすぐさま信州のおじいさんのところに行って過ごした。
4年生の頃からは夜行列車に乗っての一人旅。規則正しく伝わるレールからの振動(ガタンゴトン)が心地よかったけど、踏切を通過する時の警報機の音はとても寂しく聞こえた。
ある時、車掌さんが車掌室に連れて行ってくれて、碓氷峠のアブット式のこととか、いろいろな話をしてくれた。翌朝5時頃に長野駅に着くと、その車掌さん、次の飯山線の機関車の運転席にも乗せてくれた。今では考えられないとても素敵な経験をしました。
ひとりでの長旅ですが、チャレンジしなければ絶対に経験できない貴重な経験だった。
でも、これは私が決めたチャレンジではありません。母親のチャレンジだったのです。
卒業式で優等賞を頂けたのは嬉しかったな。
独り言の記事ですみません。
しばらくお付き合いください。
新型コロナは糞口感染 飛沫感染 消毒用アルコールも品薄、ならば!
糞口感染(ふんこうかんせん)とは、感染している人の糞便(ふんべん)の中に含まれるウイルスやばい菌が直接的または間接的に人の口に入って感染することです。
この糞口感染症の代表格がノロウイルスです。
感染が成立するまでの過程は比較的分かりやすく、感染している人の糞便そのものや糞便が付着した衣類、糞便を処理した手が汚染源として重要になります。しかし、感染していない人が感染している人のこれら汚染源を直接口に入れる可能性があるのは性交渉のように極めて濃厚な接触以外はまれで、トイレのノブや電車のつり革、エスカレーターのベルトなど感染者の衣類や手の汚染源から自身の手を介して間接的に口に運ばれるケースが大半です。
“手を石鹸でよく洗おう”“消毒用アルコールでよくふこう”と言われているのはこうした理由によります。
私は仕事柄、感染予防のため、“手洗い”や“アルコール消毒”は仕事の一部になっていますので、毎日少なくても15回はそれら対策をしていますが、出張で都内に出ることがあれば、先ずは“なるべく物には触れない”ようにして、やむをえず机やテーブルに触れた後はすぐ洗えないので消毒用アルコーを
“シュ”と手に吹きかけ、手洗いをする要領でまんべんなく広げています。
消毒用アルコールが手に入らない時は、やはり“むやみに触らない”“こまめな手洗い”が欠かせませんね。
もう一つの重要な感染経路は“飛沫感染”です。
マスクは飛沫感染を防ぐ目的でとても大切です。昨夜のニュースで腰に半径1mの円盤状のボール紙をまとったユニークな人を紹介していましたが、飛沫汚染を防ぐためには人との距離を1m空けることが大切であることを分かりやすくアピールしたものです。
今回の新型コロナウイルスの感染拡大で、マスクを使用する習慣がない国があることを初めて知りました。なるほどニュースで紹介された動画を見てもマスクをしている人は一人も見られません。私達日本人には信じられない驚きの光景ですが、そのような集団では新型コロナのような感染症は急速に拡散するでしょうね。飛沫感染によることも明らかだからです。
新型コロナは感染している人からの飛沫が口や鼻、さらに目からも侵入するといわれていますので、インフルエンザとノロウイルスの対策ができれば新型コロナ対策は完璧です。
今日は糞口感染と飛沫感染についての対処法を考えましたが、比較的見逃されすいのは衣類ではないでしょうか? 特に最も上に着ている衣類には飛沫によってウイルスが付着している可能性があります。感染がさらに拡大するようなことがあれば、このような衣類対策も考えておく必要があると思います。比較的弱いウイルスですので、短時間の日光消毒も効果があると思われます。
新型コロナウイルスで憂鬱な毎日ですが、桜も開花宣言が出され、春本番を迎えようとしています。
昨日は同じ検査業を営んでいる友人とゴルフを楽しみました。
私達はHIVやHPV、それにクラミジアや淋菌の遺伝子検査を郵送で行っています。
病院に行かなくても自分が採取してポストに入れるだけで検査ができる“郵送検査”で新型コロナウイルスの検査もできるようになるといいね。
保健所に聞いてみようか? でも? 何かよく分からないことがあるみたいだから?
そんな話をしていましたが、皆さんも屋外で体を動かしましょう。
この季節、サクラソウもきれいに咲き誇っています。
新型コロナウイルス HIVもHPVもみんなウイルス
人間はすごいな。
HIVは人の免疫をつかさどる最も大切なリンパ球に感染するウイルスです。
不治の病と恐れられていましたが、今では感染初期(ウイルスの量が少ない時)に治療を開始すれば、感染していない人と同じぐらい生きられるようになりました。
HPVは子宮頸がんを起こすウイルスです。
私が細胞診断学(子宮頸がんなどの“がん”を顕微鏡で診断する学門、子宮頸がん検診はこの方法で行われています)を学び始めた1970年頃は子宮頸がんの原因すら分かっていなかったのです。しかし、ハラルド ツア ハウゼンという先生が1983-1984年にかけて子宮頸がんで最も危険なHPV16型と18型を突き止めました。その結果、子宮頸がんワクチン(現在はHPVワクチン)が開発され、診断技術も急速に進歩し、今では(HPVワクチン接種をしなくても)検診を受ければ子宮も命も守れる時代になったのです。
新型コロナウイルスは今年になって中国武漢市を中心に爆発的に感染が広がり、3月15日現在、イタリアでは感染者21,157名、死亡者1,441名(6.81%)、お隣の韓国は感染者8,086名、死亡者72名(0.89%)に達しています。同日、同時間の日本は感染者773人が確認され、死亡者は22名(2.85%)になっています。検査が進んでいる韓国における死亡者数を基本に予想すれば日本国内の感染者は約3倍の2,000名以上存在する可能性があります。
この日日本では、一日の当たり最も多い感染者数になったようです。
検査処理数が上がるにつれ著しく増加するのか、それとも緩やかな増加に留まることができるか、正念場を迎えています。“がんばれ日本”。
“がんばれイタリア”“がんばれ韓国”“がんばれみんな”
世界中ワンチームでがんばれ!
新型コロナもウイルスだ!
世界中の学者や専門家が必死で頑張っています。
きっと近いうちに撃退法を考えてくれますよ。
それまで、みんなで自分ができることを精一杯頑張ろう。
そして、みんなで今しばらく耐えよう。我慢しよう。
いつもマスク姿の文在寅(ムン・ジェイン)大統領を見習いましょう。
日本の国を守る人達も、国民の今やらなければならないことの手本を見せて頂きたいところです。
手洗いが面倒な人は、消毒用アルコールを持ち歩きましょう。
基本的に何も触らないようにしていますが、何かに触ったら“シュ”
何かを食べる前にも“シュ”
座ったテーブルも“シュ”
結構こまめにやっていますよ。
(人間ドック学会に参加して)細胞診精度向上の第一の鍵は細胞採取
佐々木寛先生、小田美紀先生、共に日本臨床細胞学会でおなじみの先生方による「子宮頸がん検診における細胞採取法について」のご講演がありました。
佐々木寛先生が冒頭のご挨拶で、これまで子宮頸がん細胞診の細胞採取法に関する教科書が存在しなかったとのお話がありました。
細胞診の基本は「適切な細胞採取」そして「適切な標本作製」さらに「適切な観察(スクリーニング)」の3つの手技が“適切”に行われて初めて精度の高い検査になるわけで、その最も大切な手技を詳細に記述したテキストがなかったとは驚きを隠せません。
適切とはいえない標本がかなりの頻度で存在し、その事が度々細胞学会のシンポジウム等でも取り上げられてきたにもかかわらず、そのような状況だったのは大変残念です。これからでも遅くはありません。是非先生方のご尽力でこの問題を前進させて頂きたいと感じました。
小田先生はいろいろな採取器具を使って採取の様子を詳細に解説してくれました。
子宮膣部の位置やクスコの挿入方法によって子宮膣部が目視できないケースがある事、さらに擦過に用いた器具の外側に病変が存在する症例など、改めて細胞採取の難しさを痛感致しました。
これから細胞採取を志す先生方には、単に一つの方法だけでなく、受診者の状況に合わせた器具の選択やより広範からの採取、更にLBC法の積極的導入をお考え頂きたいと思いました。
私共に婦人科細胞診を依頼される先生方の大半はお産もされている関係で、全て綿棒採取による液状化細胞診です。しかし、開業以来先生方から細胞診に関するクレームは未だ1件もありません。
綿棒採取でも目的の細胞は十分採取されるのですが、直接塗抹すると綿棒側に細胞が残ってしまうことで精度が落ちてしまうのです。綿棒に附着した細胞を掻き落とし、液状化処理(LBC)標本を作製することで異型細胞の検出感度が2倍に上昇するのです。単に「綿棒採取はダメ」と言うのと、「自己採取はダメ」と言われるのに何か共通点があるように思われます。
日本で最初に車検診を始められた野田紀一郎先生が「検診を受ければ子宮頸がんの死亡率を限りなくゼロに近づけることができる」旨のお話をされたこと、若き頃の私の脳裏に鮮烈な記憶として残っております。しかし昨今、遺伝子検査の普及に伴い細胞診の信頼性(評価)が急速に下がっている現状に胸を痛めております。
遺伝子検査は発展途上の検査であり、HPVの感染有無を知ることが目的です。細胞診はHPVの感染に伴う細胞の変化(ASC-USからSCCまで)を見る検査です。科学が進歩しても細胞診の価値が下がるものではなく、更なる精度向上に努力すべきと痛感した次第です。
お二人の先生方のご尽力に心より敬意を表します。
自己採取型子宮頸がん検診についても「悪い」だけではなく、こうすれば社会の役に立つというところにも目を向けて頂ければ幸いです。
喫煙歴のある男性は「膀胱がん」に注意
偶然だろうか?
昨年の暮れに膀胱がんで恩師を亡くしました。
そして、ある会合で毎月一緒に仕事をしていたMさんが最近亡くなったことを知りました。
Mさんの近所に住むKさんにMさんのことを尋ねると、「俺と同じ病気だよ」「膀胱がんだよ」という返事が返ってきました。
「何か自覚症状はあったのですか?」と尋ねてみると、「Mさんも俺も何もなかった。ただ、頻繁にトイレに行きたい気分になったよ。」という返事が返ってきました。
(なるほど、何も症状はなかったのではなく、明らかな症状があったんだ。)
子宮頸がんのことばかり考えていましたが、私達(細胞検査士)にできることはまだある。なぜかというと、膀胱がんは膀胱の内側を覆う粘膜に発生するので、尿で調べることができるからです。
しかし、尿は血液をきれいにした排斥物ですので、塩分をはじめとするいろいろな成分が含まれるため、細胞たちにとっては最悪な環境なんです。ちゃんと顕微鏡で観察できる状態でアイラボまで運ぶことができれば・・・何だかおもしろくなってきた。
職場について早速メスシリンダーに尿を採ってみた。
180mlでした。淡黄色で透明で見た目は何ともないぞ。
私のおしっこの中の細胞たち、元気な姿を見せてくれるかな?…楽しみ!
何か宣伝するかな?
アイラボの子宮頸がん検査キットは、東京都中小企業振興公社のニューマーケット支援対象商品です。詳しくはこちらを見てください。
今年になってA型肝炎が増加中
肝炎にはA型、B型、C型があり、A型肝炎はA型肝炎ウイルス(Hepatitis A virus)の感染で起こる急性肝炎です。
感染経路は「糞便―経口感染(糞便中に存在した微生物が直接的または間接的に口から入って感染する)」が基本で、我が国ではカキやアサリなどの食物を介して経口感染することがよく知られています。
感染力が強いため家族内感染や院内感染、さらに性的接触による感染の危険性についても注意が必要な感染症です。
我が国におけるA型肝炎の発症件数は年間おおむね100‐300件で推移していますが、本年は24週(6ヵ月間)ですでに417件の報告があり、とりわけ経口感染に比べ性的接触の割合が増加しているようです。
特にその傾向は男性で顕著にみられるようです。
アイラボのHPの中の“してしまった行為で性病が心配な方”https://ilabo-cyto-std.com/ でも注意を呼び掛けていますが、A型肝炎ウイルスの感染経路の基本が「糞便―経口感染」ですので、初対面の人や不特定多数の人との接触がある人との“クンニ”には注意が必要ですね。
文責:アイラボCytoSTD研究所 所長 椎名義雄
アイラボの自己採取型子宮頸がん検診の取材
Web メディアで働く女性(A)から『セルフキット(自己採取型子宮頸がん検診)の使用について否定的な意見もあるなかで、アイラボ様がどのように精度を保ち、誇りをもって運営をされているか、ぜひ勉強させていただけますと幸いです。』といった取材の依頼メール届きました。
日本の子宮頸がん検診受信率は42.4%と先進国中最下位、さらに世界70ヶ国余りで接種されているHPVワクチンは中止状態で、日本の若者は子宮頸がんの危機的状況下にあります。
2009年以降、5年間で受診率を50%まで引き上げる目標を掲げ“無料クーポンの配布”や企業に働きかけた“がん対策推進企業アクション”、さらにLOVE49プロジェクトによる啓発活動などなど、様々な活動が展開されてきました。
ちょうどその頃から、私達は“いつでも自宅で気軽に採取できる自己採取型子宮頸がん検診”に目を向け始めました。
そのきっかけは、産婦人科医であり、細胞診専門医であり、日本臨床細胞学会功労会員でもあった故八田賢明先生が「女性にとって婦人科なんてお産以外は来たくない所なんだよ。もっと精度の高い“自己採取法を考えてくれよ”」と言われた一言でした。
(今日は自己採取型子宮頸がん検診についてAさんとのお話を紹介します。)
A:私の知り合いがセルフキットで子宮頸がん検診を受けて異常なしと診断されたのですが、程なく進行がんが発覚し子宮全摘術を受けました。私はこのことがきっかけで『自己採取型子宮頸がん検診』に関心をもち取材活動を行っているなかで、アイラボさんのHPにたどり着いた次第です。
椎名さんは杏林大学で教鞭をとっていた頃、学生に“自己採取型子宮頸がん検診は”あまり良い方法ではないと話していたとのことですが、なぜ今この方法を採用しているのでしょうか?といった質問から話が始まりました。
椎名:そうですね。
当時から学会でも自己採取法は否定的に考えられていましたので、講義では『あまり良い方法ではないと言われています。』と話していました。しかし、四半世紀も前のある出来事が脳裏から離れなかったからです。
当時、ある検査所で細胞診の仕事をしていましたが、婦人科の先生から依頼された検体の3割程が適切とはいえない慢性的問題を抱えていました。
(これはその時の検体ではありませんが、おおむねこんな感じと言うことで理解して下さい。×印の検体は細胞が少なかったり、塗り方が厚く観察できない理由で“適切ではない標本”としたものです。このようなケースは私が関係した検査所だけでなく、学会でも常に問題になっていたことです。)
そんなある時、加藤式で採取されたかなり多くの検体を検査する機会がありました。どの標本も細胞が沢山採取され、比較的良好な標本が多かったので、(つい本音で)検査所の技師さんに「お医者さんが採取するよりよっぽどいいんじゃないですか?」とつぶやいたことがあります。すると技師さんから「大きな声で言えないんですが、本当にそうですよね」といった返事が返ってきたのです。
いつか自分が加藤式を使うようなことがあれば、必ず自分で検証してみようと思っていたんですよ。
A:アイラボさんでは精度のいい加藤式という器具を採用していますが、器具にはどんなものがあるんですか? また、どうして他の検査所では同じ器具を使わないのですか?
椎名:「私は加藤式以外に使ったことがありませんが、多分、今日本で使用されているのはこの3種類と思います。」
(写真1 中央の白い器具が加藤式です。)
ということで、実際の器具を見せながらそれぞれの構造や機能についてお話ししましたが、使用経験のない2つの器具についての私見を述べることは控えさせて頂きました。
一般の人に検査精度と言っても “どれがいいの悪いの” なんて分かるはずはなく、検診機関や検査機関から提供されているものだから、多分、何も考えず使用しているのではないでしょうか?
採取器具の選択についてある検査会社の責任ある立場の方と話したことがありますが、「ユーザーから特にクレームもないので検査精度はあまり良いとは言われていないが、これからも使っていく」とはっきり言い切った方もいます。そう考えている関係者は少なくないと思います。(そうですかね? ユーザーさんはそこまでわかっていないと思いますが?・・・というのが私の考えです。)
私は細胞診の精度は、①適正な採取(目的の細胞がちゃんと採取できるもの)、②適正な標本作製(顕微鏡で観察しやすい標本をつくること)、③適正な観察(大切な細胞を見逃すことがないような注意深い観察“ASC-USの鉄則を遵守”)、この3つ全てが適正に行われなければ、適正な検査精度は得られないと考えています。
従って、採取器具はお医者さんの代わりになるものなので、高価であっても最も良いものを選ばなければならないと考え、加藤式を採用しています。
A:液状化処理を重要視していますが、それはどのようなことですか?
(加藤式で採取した検体は、スポンジ部分に細胞が採取されていますが、
写真の様にスライドガラスに直接塗りつける方法を推奨しています。)
(実際このように塗りますが、この写真では一度の採取で1番目から16番目まで塗れるほど十分な細胞が採取できることを説明しています。しかし、日常業務では、1枚目または2枚目までの標本で検査することになります。※子宮癌検診器具製造所から配布されている“加藤式自己擦過法器具による標本の作り方より抜粋”)
椎名:前にお話しした、初めてたくさんの加藤式で作った標本を検査した時、2つのことに気付きました。その一つは“細胞が重なって観察し難い点”、もう一つは“異常な細胞が偏って出現する傾向”が見られたのです。
つまり、1~5枚目の丸く塗られた周辺部で細胞が重なっている部分(色が濃く見える部分)に異常な細胞が出現するため、発見できない可能性があるということです。
薄く均一に塗られた11番目が観察しやすい標本と思われますが、異常な細胞がそこに残っていない可能性もあるのです。そんなことを考えていましたので、もし私が加藤式を採用する時はスポンジ部分についた細胞を全て保存液の中に洗い出し、それを遠心分離器にかけて異常細胞を濃縮させ、薄く細胞の重なりがない標本を作製しようと考えていましたので、それを実行したにすぎません。
(これが、アイラボ自慢の標本です。)
このように少し手間をかけることで、異常細胞の検出率(検査精度)は予想以上の2倍に跳ね上がったのです。やってみるものですね。
A:なるほど、良くわかる気がします。
さらに3番目に大切とおっしゃった、ASC-USの鉄則を遵守することで、お医者さんが採取するのとほぼ同じ精度が得られるということですね。
椎名:その通りです。
検査というものは100%正しい結果が出るとは限りません。例えて言うならHIVの抗体検査でも1,000人検査すると3人程偽陽性(本当は陰性なのに陽性の反応が出てしまうこと)の結果が出てしまうため、陽性の反応が出た時は“確認検査”を行うことになっています。
検査をする側は常に100%正しい結果が出るよう(または100%に近づける)努力しています。私達が加藤式を選び、液状化処理やASC-USの鉄則遵守といった面倒なことにチャレンジしていることは検査を請け負う側の使命と考えているからです。
A:なぜ他の企業さんはそうしないんですか?
椎名:採取器具の選択については器具自体のコストが関係しているのではないかと思います。加藤式の場合、採取器具だけでも600円以上かかりますので、高いという意見を耳にしたことはあります。他の器具については購入経験がなく詳細は分かりませんが、前にも言いましたがお医者さんに代わるものだけに、私は精度最優先を考えています。
液状化処理については、検査を担当する技師さんからは「そんな面倒なことやっていられません」という言葉が返ってきますが、「検査精度が2倍になるんですよ。自己採取の検体を受け入れる(受託する)のであれば、是非液状化処理法を採用して下さい。」と言いたいですね。
機械に頼ることができない細胞診検査は採取器具にかかる経費と検査費用までが値引き合戦に引き込まれては、検査の信頼性は益々低下の一途をたどるでしょう。
検診を依頼する側は検査料金だけでなく、検査方法や検査精度についても目を向けるべきと思います。
A:これからもっと検体が増えてきたらどうされますか?
椎名:当然、私達の会社だけではさばくことはできませんので、アイラボの方法を企業秘密にしておりません。様々な学会やネット上で技術は公開しておりますし、必要があれば弊社での実践教育にもお答え致します。
アイラボは大きな検査会社を目指しておりませんが、もしどこも受け入れないということになれば、人を増やすしかないですね(笑い)。
A:今回、産業衛生学会で発表されたとの事ですが、どのような内容ですか?
椎名:自己採取型子宮頸がん検診の検査精度に関する情報はほとんどありませんが、東京都衛生検査所精度管理調査報告書の中で見ることができます。それによると、精密検査が必要なASC-USやLSIL以上の細胞がどの程度発見されているかというと、概ね医師が採取したものの1/5~1/3で、Aさんが「セルフキットの使用について否定的な意見もある」と書かれていますが、検診に携わる学会で“悪法のレッテル”が張られている理由がちゃんとあったのです。
私達は自己採取法が“悪法”に至った原因は利益優先、精度無関心の検査体制にあったと考えています。従って、先ずはそのことを受け入れた上で、自己採取法を導入するのであれば精度最優先の基本に立ち戻って襟を正すべきと考えています。
(ちょっと横道にそれましたが)
熊本で開催された産業衛生学会では、ある検診機関の過去6年間の自己採取型子宮頸がん検診の成績を発表してきました。発表した理由は、“検診対象者がほぼ同じ”“採取器具も同じ加藤式”、異なる点は検査機関だけなのです。つまり、液状化処理とASC-USの鉄則遵守をしたかしなかったかの違いを皆さんに伝えたかったからです。
冒頭に述べましたように、自己採取法の欠点を全て解決できたわけではありませんが、
使い方によっては決して“悪法”ではなく、病院での検診が苦手な人や仕事や子育てで検診に行けない人(検診弱者)にとっては極めて有効な方法であることを改めて理解を求める次第です。
私達は、自己採取法の決定的な欠点である子宮頸部腺癌(子宮の入口から少し奥に入ったところにできる癌)の早期発見には不向きであることに目をつむることはできなく、この問題で結構な時間を費やしました。しかし、研究が進むにつれ、子宮頸部腺癌の70-80%はHPV感染によることが分かってきましたので、HPV感染を見逃さない細胞診を追求することで“自己採取型子宮頸がん検診”に道が開けると確信しました。
近未来的には『 “精度の高い自己採取型細胞診”と“HPV検査”の併用検診』、そして最終的には子宮頸がんに関係する全てのHPVを確定し、コスト的にも導入可能になれば、遺伝子検査が一次スクリーニング法にとって代わる時代になると思いますが、現状では時期尚早の感があります。
そんな色々なことを考えながらも、先ずは病院での検診が苦手な人達にも安心して検査を受けて頂けるところまでこぎつけた次第です。
最近になって私達の「子宮頸がん検査キット」が東京都中小企業振興公社のニューマーケット開拓支援商品に選ばれました。健康保健組合や自治体の検診においても病院での検診が苦手な人のために“郵送検診”として採用して頂けるよう一層の努力をしてまいる所存です。
この度、Aさんが来所され、多くの国民を代表して様々な疑問を投げかけて頂いた思いです。是非、多くの方に私達の活動を伝えて頂ければ幸いに存じます。
ありがとうございました。
文責:(株)アイ・ラボCyto STD 研究所 所長 椎名義雄 (2018,7,10) 詳細はこちら