タイトル APPLESEED アップルシード

公開年

2004年

監督

荒牧伸志

脚本

半田はるか 上代務

声優

小林愛

制作国

日本

 

本作は士郎正宗による同名のSFコミックを、モーション・キャプチャーと3DCGを駆使してアニメーション映画化したモノ。士郎正宗と言えば「GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊」が有名だが、当初あの作品の描かれていた世界がさっぱりわからず、ず~と苦手意識を持っていたが、2000年頃から本作的にインターネットを始めた後で、あの映画を見るとさっぱりわからなかった事がすらすらわかる様になり、随分と時代を先取りした映画だったのだな~と感心したことがあった。ただそれでも苦手意識は消えず、本作を知った時も「士郎正宗か~」と、しばらく迷っていたが直前に見た「イノセンス」が割と好きだったこともあり結局見る事にしたのだが、「なんだ。普通に面白いじゃないか?」と妙に拍子抜けした。後で「攻殻機動隊」等で苦手に感じた部分は、押井守の個性だという事に気が付いたのだから、この感想は当然と言えば当然。

日本の興行成績はパッとしなかったようだが、海外での人気は高くDVDは続編公開時点までに、全世界で42万枚以上の売り上げを記録する。また、日本語のwikiは原作を含めた「アップルシード」の中に含まれているが、英語版だと単独の記事となっているほど人気は高い。

廃墟となった都市を進む重武装の装甲車を待ち伏せするゲリラたち。しかし忍び寄るサイボーグ兵に次々と倒されていく。ゲリラ隊長のデュナン・ナッツはその事に気が付き、すぐに迎撃態勢を取ると、サイボーグ兵の弱点を狙い的確に処理。重装甲車の攻撃も素早くかわすなど高い戦闘能力を示すが、デュナン以外は全滅し彼女も包囲される。そこにVTOL機が出現し降り立った特殊部隊でサイボーグ兵達は次々と倒され、その隙にデュナンは逃げ出すがその前に一人のサイボーグ兵が出現しスタンガンで気絶させる。その後、この場に似つかわしくない瞳と呼ばれる美少女と共に、彼女をどこかに連れ去ってしまった。

近代的な美しい大都市、オリュンポスに連れられたデュナンはそこで、既に世界大戦が終結し世界は荒廃。そんな中文明再興の象徴としてオリュンポスが作られ、人口の半分をバイオノイドと呼ばれる亜人類が占めていいる事を知る。彼らは欲望が薄く生殖能力も持たないため、定期的に延命措置を取ることで、若さを保ったまま長寿を得る事が出来る。その為、人間同士の無用な衝突を避ける緩衝剤として機能していた。そして、彼女を救った瞳もバイオノイドだった。そして、もう一人のサイボーグ兵はデュナンのかつての恋人ブリアレオスだった。ブリアレオスはデュナンの父カールの形見の拳銃を返す。

一見ユートピアに思えるオリュンポスの都市機能は、ガイアと呼ばれるコンピューターが管理していて、立法院の七賢老と行政院アテナの対立関係にある。アテナはバイオノイドだが七賢老は人間。一方、バイオノイドに反感を持つウラノス将軍率いる正規軍とESWATも対立している等、人の業は克服できない様子。人間だもの…

デュラン・ナッツを演じる声優は小林愛。あまりテレビアニメでの活躍は少ないが、アニメファンの間で「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」のチャコ。そして「嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦」での廉姫はいまだに根強い人気がある。他にも小杉十郎太や小山茉美、森川智之など実力派がそろっている。

それぞれの思惑が入り乱れる中、ウラノス将軍の部下で、最強硬派のハデス達がバイオロイド関連施設を襲撃。デュナンとブリアレオスと共に出動するが、何故かブリアレオスは一人を取り逃がす。原作やOVA版だとデュナンとプリアレオスは同時にオリュンポスにスカウトされその時点でサイボーグだったので、二人は強い絆で結ばれているが、本作ではあえてタイムラグを設ける事で彼の不気味さを出している。まあ、あんなのがいたら誰でも最初はビビるだろうが。

施設の破壊によってバイオノイドの延命が出来なくなり、ヒトミが倒れてしまう。会議の席上、七賢老はガイアがバイオロイドの活性化、生殖機能の復活を決定した事を告げ、その為アップルシード計画を復活させると宣言。デュナンとブリアレオス等ESWATはアップルシードの探索の為、海上の研究所に向かう。そこで、アテナが秘匿していたディスクからデュナンの母親がバイオノイドを作ったギリアム博士で、自分に託されたペンダントにアップルシードのデータが入っている事を思い出す。そして母はそれを必ずアテナに渡すように伝え、軍隊に殺された事も。そこにウラノス将軍とハデスが現れデータを渡すように強要する。そしてブリアレオスがケアセンター襲撃を持ち掛けた事を告げる。衝撃を受けるデュナン。だが、ブリアレオスはこの件にさらに裏があると告げるのだった。

本作は世界観が理解できるか否かで、印象は違ってくると思うが、本作ではあまりその辺をうまく説明できていない様に感じる。粗筋を切った所もブリアレオスの意図がいまいちよくわからなかったから。原作のファンならよくわかるのだろうが、本作以外はOVAしか見ていない私には少々敷居が高い。ただ、すべて完璧に理解できていないと面白く感じないかと言われるとそんな事はなく、私はぼんやりとしか理解できなかったが最後まで置いてけ堀を食らうようなことはなかった。

むしろ問題は作画面で、当時はすごい技術だったと記憶しているが、現在見るとややチープに思えるのが痛いところ。本作は、3DCGの映像をセルアニメ風に変換するトゥーンシェーダーと、モーション・キャプチャー技術を融合させた手法が採られているが、これは当時日本では3DCGアニメが人気なかったからだろうが、普通にセルアニメでやった方が陳腐化は防げたはずだ。

ただ、だからと言って本作がつまらないという事はない。主人公のデュナン・ナッツは魅力があるし、他のキャラもそれぞれ魅力的。かつて恋人だったブリアレオスは今でも自分が愛した頃の彼なのかという緊張感も、少々狙い過ぎている面もあるが、映画に適度な刺激を与えている。

何よりもそうした葛藤を乗り越えて再び強い絆で結ばれた二人が、ラストで巨大多脚戦車との戦いに赴く姿は胸が熱くなる。

ただこの「アップルシード・シリーズ」のアニメ化作品は以下の五作品あるのだが

①   OVA版アニメ「アップルシード」(1988年)2D

②   劇場版アニメ「APPLESEED」(2004年)3DCG

③   劇場版アニメ「EX MACHINA APPLESEED SAGA」(2007年)3DCG

④   ネット配信アニメ「APPLESEED XⅢ」(2011年)3DCG

⑤   劇場版アニメ「Appleseed Alpha」(2014年)3DCG

このうち続き物は②と③だけで、あとは異なる作品。そして微妙に世界感も違っていたりする。また、④は絵柄が微妙であまり評判がよくなかったりする。個人的におすすめは②と③を続けて見た後で⑤。➀と④は時間とお金があったらでいいと思っている。ちなみに②③⑤は荒巻伸志監督作品。