タイトル ピンクの豹

公開年

1964年

監督

ブレイク・エドワーズ

脚本

モーリス・リッチマン ブレイク・エドワーズ

主演

デヴィッド・ニーヴン

制作国

アメリカ

 

本作は、イタリアを舞台にデヴィッド・ニーヴン、ピーター・セラーズ、ロバート・ワグナー、キャプシーヌ、そしてクラウディア・カルディナーレの5大スター競演のロマンティック・コメディ映画。タイトルの“ピンクの豹”とは、ヒロインのダーラ王女が所有し、怪盗ファントムが狙うダイヤモンド。そしてファントム逮捕に執念を燃やすのがパリ警視庁のクルーゾー警部という図式。宝石をめぐり、二人の間で激しい戦いが繰り広げられるのだった!となるのだが、このクルーゾー警部がとんだポンコツで、ドアを開けようとすればノブが壊れ、電話の受話器を取ろうとすると、コードを引っかけて近くの物が落ちてしまうというドジっぷり。それじゃあファントムは凄腕かと言われると、意外とそうでもなく、ファントムはクルーゾー警部の妻が恋人でしかも警部は美人で色っぽい奥さんにぞっこん。聞けばなんでも答えてくれるので、捜査情報は筒抜けだからまんまとせしめる事が出来る訳。

シリーズの名物キャラだが、内容には全く関係ない

 

中東某国で、幼いドーラ姫は“ピンク・パンサー”という銘の宝石を父の国王から「いずれお前のモノになる」と言われ、首にかけられるところから始まる本作。

月日がたち、革命により国を追われた王女は、父より受け継いだピンク・パンサーを手にヨーロッパへ亡命していた。資産を持っているのか、かなり優雅なセレブ生活を送っていて、今日も今日とて、イタリアのスキーリゾート、コルティーナ・ダンペッツォリゾートホテルに宿泊してスキーにパーティーと優雅に暮らしている。そこにプレイボーイで名高い英国貴族のチャールズ・リットン卿が姿を現せていた。

奥さんにぞっこんの警部だが、奥さんはそれほどでもない

 

その頃、ヨーロッパでは凄腕の宝石泥棒“ファントム”に手を焼いていた。警察は血眼になって彼の行方を追っているが、鮮やかな手口で事件の糸口すらつかめないことから、女性を中心に熱狂的なファンがつき、警察官の間からも畏敬の念を持って迎えられている。そしてリットン卿こそ怪盗ファントムだった。

パリ警視庁のクルーゾー警部は、ファントム出現を予想し、愛妻シモーヌを伴ってコルティーナを訪れた。しかし、前述の通りシモーヌはファントムの愛人で、クルーゾーの捜査方針はリットンに筒抜けであった。一方、姑息な手段でドーラ姫と知り合えたリットン卿だったが、卿の従弟ジョージが現れ、まずはシモーヌに夢中となる。中盤は、宝石そっちのけの恋のさや当てと、クルーゾーが繰り広げるドタバタばかりで、これがクライムサスペンスであることを忘れてしまう。

しかしこのクルーゾー警部は、ドジだが意外と有能。卿のお付のアルトフが、卿の雇人と同一人だということを知った警部は、リットン卿こそ怪盗ファントムと見抜き逮捕しようと部屋に駆け込むが、シモーヌの働きで間一髪脱げだすことに成功。

その後、舞台はローマにあるドーラの別荘で華やかな仮装パーティーが開かれ、リットン卿は金庫破りを実行する。が、ジョージもまた宝石を狙っていた。そして、ドーラ姫もダイヤを盗まれた事として、革命政府の返還要求から逃れようという意図があったのだ。それぞれの思惑を胸に、パーティーは始まるのだった。というのが大まかな粗筋。

リットン卿の正体に気付くなど、無能ではないだけに逆にドーラ姫らの罠にはまることに

 

一応クライムサスペンスと紹介したが、見どころになるはずの怪盗ファントムによる鮮やかな盗みのテクニックなど全く描かれず、スキー場ではドタバタとラブコメが全開。ローマに移ってからも、子供だましの様な手口だし、ラストのカーチェイスもドタバタギャグの延長。しかもリットン卿もジョージもマヌケにも捕まってしまう。その点で、主役のはずのファントムの活躍を期待すると、完全に肩透かしとなってしまう。

本作でファントムを演じているのが、名優デヴィッド・ニーヴン。一癖ある上品な英国紳士役が、十八番の彼にとってはまさに当たり役。になるはずだったが、ふたを開けて見ると徹底的なドジっ子のクルーゾー警部に人気が集中。あまりの人気に、翌年スピンオフとしてクルーゾーを主人公に格上げした「暗闇でドッキリ」が公開され人気が不動のものとなり、その後「ピンク・パンサー・シリーズ」として78年の「ピンク・パンサー4」まで作られ、主演のピーター・セラーズの死後も、2本作られたというから人気のほどが分かるだろう。

肝心のギャグも今見るとこてこてすぎて、いまいち笑えなかったりするのだが、5人のスターによる演技合戦として見ると、なかなか見ごたえはあると思う。そして、ヘンリー・マンシーニのテーマ曲はある意味映画より有名かもしれない。私は今でも、夜中に足音を忍ばせて家の中を徘徊するとき、この曲が脳内で再生される。

 

誰でも一度は聞いたはず。不滅の名曲。