タイトル DUNE/デューン 砂の惑星2021年版

公開年

2021年

監督

ドゥニ・ヴィルヌーヴ 

主演

ティモシー・シャラメ

制作国

アメリカ

 

アメリカのSF作家フランク・ハーバートのSF大河小説「デューン砂の惑星」を映画化したもので、本作では全4巻のうち2巻目を映画化している。2部作として映画化される予定でその1作目となる。ずいぶん昔読んだだけなので断言できないが、かなり忠実に作られている様に感じた。その点だと原作ファンは喜びそうだが、だからと言って映画として面白いかは別問題だが。

本作は、宮崎駿監督の代表作「風の谷のナウシカ」など多くの名作に多大な影響を与え、1984年にはデイヴィッド・リンチが「デューン/砂の惑星」として映画化。長大な原作を1本で映像化しようとした為随分短縮した内容になったが、リンチ特有の映像美もあって一部に熱狂的なファンを獲得した。その一方で炎上もしたけど…。

本作は色遣いに派手さが皆無。その為、貴族らしい豪華さを感じない

 

その後、2000年にはリチャード・P・ルビンスタインが米ケーブルテレビ局Sci-Fiチャンネルにてテレビシリーズ「デューン/砂の惑星」を製作し、巨大生物・サンドワームのビジュアルなど、原作の壮大な世界観を圧倒的な映像美で再現している。なお、1970年代にカルト映画の巨匠アレハンドロ・ホドロフスキーが10時間以上の超大作として企画するが、製作中止に終わった。その後製作過程が「ホドロフスキーのDUNE」として2013年に公開されることになるのは別の話。

非常に有名な作品なので、粗筋の紹介は簡単にしたいと思う。

ポールを始め、俳優はイメージ通り

 

西暦1万190年、1つの惑星を1つの大領家が治めそれらの大貴族の上に皇帝が君臨する時代。レト・アトレイデス公爵は、それまで宿敵ハルコンネン男爵家が治めていたデューンと呼ばれる惑星アラキスを治めることになった。

アラキスは香料メランジの唯一の生産地であるため、アトレイデス家に莫大な利益をもたらすはずだった。しかし、デューンに乗り込んだレト公爵を待っていたのはメランジの採掘権を持つハルコンネン家と皇帝が結託した陰謀だった。やがて皇帝の支援を得たハルコンネン男爵は、アラキスに襲来し公爵を殺害。嫡男ポールと愛妾ジェシカは危ういところで脱出する。二人は砂漠に生きるフレーメンと合流すべく、砂漠をさまようのだった。

登場メカで一番よかった”トンボメカ”

 

まず良かった点は、これはとりもなおさず原作に忠実というところだ。

貴族間の陰謀やベネ・ゲセリット教団の暗躍等、前半の人間ドラマは原作通りだし、全体的に派手さを抑えているのも好評価だ。

奇を狙わない、スティルスーツのデザインもカッコいいし、登場人物も原作から抜け出してきたかのように忠実に再現されている。ポールの繊細さ、ジェシカの気高さ、誇り高いレト・アトレイデス公爵。そしてハルコネン男爵の異様さなど。なんといっても砂虫のデザインは、素晴らしいとしか表現しようがない。口を開けたときに、剣のような夥しい歯が見えるところは、多くのファンにとっては満足いくつくりだったのではないだろうか。

その一方で残念な点も多い。

戦闘シーンも中世風で未来感は乏しい

 

話のテンポが緩い。これは原作がそうだし「DUNE/デューン」をハイテンションで描くわけにはいかないのだから仕方ないのだが、原作を知らない観客は退屈するだろう。

続いて派手さがない。「スター・ウォーズ」や「宇宙戦艦ヤマト」のような派手な宇宙での戦闘は皆無。宇宙船は、冒頭の方で少し登場しただけだし、中盤の戦闘シーンも基本地上戦。それも刃物を使った肉弾戦が主で、ビーム兵器の派手な撃ち合いや、巨大な歩行戦車が出てくるわけではない。「スター・ウォーズ」を見慣れた現代の観客にとっては、見どころが少なく感じるだろう。

そして全体的に薄暗い。建物の中が中世の城郭の様に薄暗いのは演出なのだろうが、デューンの砂漠も曇天下のように薄暗いし、色合いもくすんだ感じに描かれている。ポールをはじめ大半の登場人物が、軍服を着ているから仕方ないのかもしれないが、レディ・ジェシカも喪服を着ているのかと思う程彩色が地味。また貴族の部屋なのに調度品が、まるで前衛芸術のようにそっけない。貴族の邸宅なのだから、もう少し豪華さを出しても良かったのではないだろうか。

これらの問題点のほとんどは、原作に忠実に作ったことが理由なので、良かった面と表裏一体となっているから、そこが最大の問題点じゃないかと思っている。

本作を簡単に表現すれば「派手さのない『スター・ウォーズep1~3』」か「色鮮やかではない『アバター』」となると思う。

個人的に退屈するほどつまらなくは感じなかったが、血が逆流するほどの興奮も感じなかった。ある意味可もなく不可もなくといったところだ。

なお、第2部は「デューン 砂の惑星 PART2」としてアメリカでは2023年の後半に、日本では来年に公開される予定。本作の不満点をうまく解消できるか、監督のお手並み拝見と行きたい。