天皇の「お気持ち」と、皇太子の「お気持ち」と | 知財業界で仕事スル

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知財業界の片隅で特許事務所経営を担当する弁理士のブログ。

最近は、仕事に直結することをあまり書かなくなってしまいました。

本人は、関連していると思って書いている場合がほとんどなんですが…

天皇陛下「お気持ち」表明 「生前退位」を強く示唆
日本経済新聞 2016/8/8
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG08H2M_Y6A800C1000000/?n_cid=NMAIL002

>宮内庁は8日、天皇陛下が象徴としての務めについての考えを示されたビデオメッセージを公表した。現在82歳の陛下は「次第に進む身体の衰えを考慮する時、全身全霊で象徴の務めを果たしていくことが難しくなるのではないかと案じている」と表明。「生前退位」には直接言及されないものの、その意向を強くにじませた。

「お気持ち」のビデオを拝見させていただきました。

これは、感動ものですね!現天皇の人徳の高さ、頭の良さといったものが如実に感じられました。素晴らしいです。私だけでなく、多くの日本人が現在の天皇の存在に改めて気づき、高い評価をしたのではないかと思います。

この「お気持ち」の内容は、天皇ご自身が最後まで推敲を重ねられてできたものだそうで、取り巻きに言葉を曲げられたくない、というような意志が感じられる内容となっています。この点も、「お気持ち」のビデオが人の心を打つ重要な要因となっていると思われます。


この「お気持ち」ビデオをみながら、頭の片隅に「既視感」(デジャブ)が浮かんできました。何だったかと考えた結果、それは現皇太子の何年か前の発言でした。

検索してみましたら、これが出てきました。

人格否定発言
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%BA%E6%A0%BC%E5%90%A6%E5%AE%9A%E7%99%BA%E8%A8%80

>人格否定発言(じんかくひていはつげん)とは、2004年(平成16年)5月10日、皇太子徳仁親王が、欧州歴訪前の記者会見において、皇太子妃雅子に関して述べた発言。皇太子徳仁親王の御称号から浩宮の乱(ひろのみやのらん)とも呼ばれる

今回の天皇の「お気持ち」発言には、その「乱」と同質の強い〝批判″が込められているように思います。皇太子の時と同様、決して名指し等はされませんし具体的な批判もされませんが、抑圧に耐え切れず、言ってはいけないとわかりつつ言ってしまうぞ、みたいな切迫感がそこに秘められているように感じました。

これは、私だけかもしれませんが、「お気持ち」の発言を天皇が終えられた後、お辞儀をされた、あのお辞儀がまたすばらしいと思いました。私は思わず、パソコン画面の前でお辞儀を返したほどです。天皇からすればカメラの前でお辞儀されたに過ぎないのですが、そこには深い真剣なる気持ち、国民に対する「お願い」の気持ちがこもっているように感じました。

あの「お願い」の雰囲気はなんだったのでしょう?言葉は良くないですが、今の天皇制は奴隷制と変わらないのではないでしょうか。もちろん、天皇はお金をふんだんに使わせてもらえますし、社会的な評価は極めて高いですから、それらの意味では決して奴隷と同じとは言えません。しかし、「その筋に生まれたならその筋の人生を送るしかなく、自分の人生の選択権が法律的に認められていない」という意味では両制度に違いはありません。あの「お気持ち」は、そこから解放してほしいというお願いだったのではないか、と考えるのはおかしいでしょうか。

全国民数に比べて人数がきわめて少ないですので社会問題として扱われる価値のないことなのかもしれませんが、天皇の筋に生まれたら強制的に天皇になることを国から強制される立場の人たちが存在している状態を放置しているのは、国家として恥ずかしい状態のように思います。日本文化の伝承母体としての天皇制は残した方がよいし、その役割を担う天皇には潤沢に国民の税金を使っていただいてよいと思います。が、その天皇が世襲で決まるのは、その立場に生まれてしまった人たちの基本的人権を侵している状態になっていて、まずいと思います。

私は、「生前退位」のための法改正の機会を利用して、天皇制から世襲制をとり、選挙で天皇を決める民主的な天皇制にするのがよいと思います。「血のつながり」が重要という価値観があるのは存じ上げておりますが、それと、天皇になることしか許されない人に対する人権侵害を行っている現状とどちらが重要な問題かというと、圧倒的に後者でしょう。

世界に類を見ない文化遺産としての“天皇”は日本が世界に自慢してよいと思います。しかし、基本的人権を蹂躙している状態を残しているのは自慢できません。世界に対して堂々と“天皇”を自慢するためには、天皇が行う数々の歴史的・文化的儀式をしっかりと保存するのと同時に、その保存方法に民主的な手法を採用するべきではないでしょうか。天皇になりたい人に立候補してもらい、国民の総意によって選挙で天皇を選ぶのです。これで、現天皇もすっきりした気分で退位できますし、現皇太子は天皇をやりたくなければ立候補しなければよいだけなので雅子妃と共に幸せになれると思います。