バラナシからデリーに戻ってから、そして、デリーからワシントンDCに戻ってから、インド人とバラナシの話をする機会が何度もあった。話が詰まれば、バラナシへ行ってきたときのことに話を振れば、インド人との会話は一挙に盛り上がる。
しかし、デリーのインド人とバラナシの話をするのではあるが、彼らは誰一人としてバラナシへ行ったことがないのであった。バラナシは遠いのでベナレスに行くんだ、と説明したインド人もいたけれども、総じてベナレスでもバラナシでもそもそも沐浴場へ行ったことが無い人が多い。
デリーの都会型インド人は、もしバラナシへ行くにしても観光気分に近い気持ちで行き、ガンジス川に浸るなどということはもっての外で、せいぜい、手で少し水をすくって頭にふりかける程度にしておくそうだ。
そういった人たち(ほとんどがロイヤー)を相手にした会話なので、他の“敬虔”なるヒンズー教徒の皆さんとの会話用には不適切かもしれないけれども、多くのインド人を爆笑の渦に巻き込んだジョークを披露しよう。
元は私が或るインド人から聞いたもので、私の創作ではない。しかし、インド人の間でもあまり知られていないようではある。その証拠に、私からオチを聞いたインド人は皆さん大爆笑だった。…決して、それは社交辞令の一環としての笑いではないはず。
さて…
(元は英語なのでここでも英語で書いてもいいのだけれども、日本語にしておきます)
インド人の説明。ガンジス川は聖なる川で、そこに流れる水も聖なる水。その水は、聖なる力によって殺菌作用までもち、バイ菌の住まない“清らかな水”です。
その水に自らの体を浸そうと、多くのインド人がバラナシを訪れます。また、外国からの観光客も多く訪れ、沐浴を試みます。
私からの質問。実際には、その水で下痢をしたり伝染病かかって死にそうになる人も中にはある。特にインドの環境に慣れていない外国人にはそのリスクは高い。これは、ガンジス川の水は決して清らかではなく非常に汚い水である証拠ではないのか?
インド人は答えた。いえいえ、そうではありません。ガンジス川の水は聖なる水であり、雑菌を殺す殺菌作用まである清らかな水なんです。ガンジス川の聖なる水は、そのような奇跡的パワーを持っています。だから、その水を飲んでもまともな人間なら全然大丈夫。もし、飲んだ人が病気になったり死んだりしたなら、それは、その人が世の中のバイ菌だからです。