ほんとに特許出願するのがよいのかどうか? | 知財業界で仕事スル

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知財業界の片隅で特許事務所経営を担当する弁理士のブログ。

最近は、仕事に直結することをあまり書かなくなってしまいました。

本人は、関連していると思って書いている場合がほとんどなんですが…

Maji DESCAさん、
コメントをありがとうございました。




>製造部門ではあれだけコストパフォーマンスが要求されるのに、なんでだろ?

ほんと、そうですね。不思議です。

製造品だと、単純に価格の安いものを選択する、という形で選択していたらそれでコストパフォーマンスの向上にだいたいつながりますね。パフォーマンスの方も計りやすいから。

特許出願サービスについては、パフォーマンスの方がうまく計れませんので、お客さんの方はいきおい価格だけでの比較をしがちなんではないでしょうか?

日本では職人気質みたいなものがまだ生きていて、値段が安くても「プロとしてこの線はゆずれない」みたいな感覚で品質を維持する努力をしようとしますが、米国ではそれがありません。安ければ悪くなる。自由競争原理がうまく働いている社会です(笑)。
そんな米国社会でも、価格ばかりに着目したコストパフォーマンス向上努力が日本企業によってなされている感じがします。
そして、(低価格=低品質)→特許取得までの手続きが長い→総合コストでは平均的米国出願人より高い、みたいなことが起こっていると思います。また、(低価格=低品質)→特許取得手続きの内容が悪い→特許の質が平均的米国出願人より低い、みたいなことも起こっていると思います。両方が、同時に普通に起こっている感じです。


>貴方の目指す方向はきっと正しくて、しかもけっこうやれているとなると、ちゃんと評価できる客からはかなりの信頼を得ているものと存じます。ちと羨ましいくらいです。

ぜひ、弊所にご依頼ください(笑)。




>今の私の抱えている問題は…。これはどうみても世界的レベルの価値がある発明でありながら、出願人も発明者も欲がなくて、ない袖は振れぬとかいう理由で外国出願の予算をとってくれないというお客さんも稀にみえまして…。こういう「ふつうとは逆で困る」場合の方が、ずっと損失が大きいはずです。

特許制度の本質は、発明の保護と利用である、というのはご存知のとおりです。日本出願だけした場合には、「発明の保護」は日本でだけで、「発明の利用」は世界でなされる状態になります。「世界」の中には中国企業を含め、あらゆる国のあらゆる企業が含まれます。中国企業によって日本の公開公報が利用されているのはよく知られています(もちろん合法です)。


世界的レベルの価値がある発明でありながら、世界的に特許をとっていかないのであれば、「発明の利用」のことを考えると、日本出願をして公開されてしまうより、出願しない方がマシかもしれませんよ。

製品にしてしまうと簡単にバレる発明であれば、日本出願をしてもしなくてもバレて模倣されると考えられますので、日本出願だけでもしてあった方がましかもしれませんけれども。

日本出願に代えて、PCT出願をされるのも選択肢になると思います。この場合であれば、出願日から30ヶ月の間は「どこの国で特許をとるかわからない」状態が維持できます。30ヶ月あれば、その発明に世界的レベルの価値が客観的にもあるのかどうかはそれなりに判断できるのでは?

あと、日本出願を省いて米国出願だけするというのも、合理性のある選択肢になるケースが結構あると思います。明細書を英語にしないといけないので、その分はコスト高になりますけれども、日本出願分のコストは浮きます。
世界が市場になるのであれば、その中で最大の市場である米国だけで特許をとっておくのは、日本だけで特許をとっておくよりベターでしょう。