面接ガイドラインの不思議(終) ――輸入品としての法律―― | 知財業界で仕事スル

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知財業界の片隅で特許事務所経営を担当する弁理士のブログ。

最近は、仕事に直結することをあまり書かなくなってしまいました。

本人は、関連していると思って書いている場合がほとんどなんですが…

 今回の議論を通して、日本ではまだまだ「法律」が輸入品にすぎないんだなあ、とあらためて思いました。
 憲法で保障された国民主権の概念さえ、いまだに日本に根付いていない気がします。民主主義がなかなか機能しない社会です…

 法律が単なる建前として扱われる社会。正論は論理的に正しくても社会的には正しいとは限らない社会。そのような日本にあって、特許業界(特許事務所、企業知財部を含む)で長年培われてきた無資格代理行為、名義貸し行為が存在しえているのだと思います。


 私が、特許業界に入ったのは20年以上前ですが、そのころの弁理士資格は「特許事務所を経営するための資格」と言われていました。会社や事務所の従業員で生きていくのであれば弁理士資格をとる努力は無駄だ、という風に先輩から教えられました。当時は、それがまったく正しい社会でした。

 しかし、弁理士資格を取ってから弁理士法を学ぶ機会があって、法律で決められている「正しいやり方」と現実の特許業界での「正しいやり方」との間に大きな違いがあることを知りました。それももう20年位前のことですが、そのときは「世の中とはそんなモンなんだろう」くらいのことしか考えませんでした。




 ようやく最近になって、「Compriance」という英単語がちょっとした流行語になるくらいに順法精神が重んじられる傾向が日本にも出てきました。今回主題にしている面接ガイドラインや名義貸し禁止のための弁理士法改正は、その新しいトレンドにのって出てきているのだと思います。
 とは言いましても、たとえば米国の順法精神に比べたら日本の順法精神はまだ最初の途についたばかりです。

 これから、どんどんいろいろなことが世間の常識ではなく法律に則って動いていくようになるのだと思います。このトレンドが後戻りすることはもう決して無いでしょう。
 それをもってして、世知辛い世の中になってきたとか、面白みの無い社会になってきたとかといった評価も可能だろうと思います。日本人にとって、世間の常識が働く社会と法律に則って動く社会のいずれがより幸せな社会となるのかは良く分かりませんが、少なくともいえることは前者から後者への変化が不可逆的に起こっているということです。


 特許業界で働く我々個々人の身の振り方は、その不可逆的変化に沿ったものになるべきなのだと思います。
 私が弁理士試験に合格した年の合格率は2%台でした。その頃に比べたら今は格段に合格率が上がっています。今や1年、2年の勉強で合格しても驚かれません。
 受験校からの回しモンのような話になってしまいますが、これからこの業界でやっていこうと考えている人は弁理士試験を受験して、できるだけ早く弁理士になっていただきたいです。弁理士資格をもっていなければ特許業務をやりにくい世の中になっていくことは間違いありません。

(終)