面接ガイドラインの不思議 ――将来あるべき姿―― | 知財業界で仕事スル

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知財業界の片隅で特許事務所経営を担当する弁理士のブログ。

最近は、仕事に直結することをあまり書かなくなってしまいました。

本人は、関連していると思って書いている場合がほとんどなんですが…

 特許業界(特許事務所と知財部を含む)は将来どうあるべきなのでしょうか?

 今回議論してきている範囲で考えたときに、次の2つの道があると思います。
(1)弁理士をもっと増やし企業知財部内にも容易にいきわたるようにする。
(2)従業員による特許手続きは無資格であっても認める。

 道(2)を採用するなら、法改正が必要になるでしょう。逆に言えば、法改正で認めてしまえば、それで「知財部員は会社と一体であって、知財部員の業務は会社自身の業務である」などといった考え方も合法になります。




 ここで、弁理士制度が設けられている理由に立ち返ってみましょう。

 コンサイスな表現をなかなか見つけられなかったのですが、「条解 弁理士法」(経済産業調査会、知的財産実務シリーズ。何年か前に、弁理士全員に弁理士会から強制配布された)の弁理士法第3条の趣旨解説の部分(48ページ)に、
「弁理士制度は、主として工業所有権に関する国民の権利取得を確実、円滑なものにするため、工業所有権法やその権利範囲に関する専門的知見を有する者に対し、業務独占を付与するものである。」
とあります。

 上記「権利取得を確実、円滑なものにするため」の意味としては、大きく2つあると思います。
(A)特許庁での業務が円滑に行われるようにするため。
(B)出願人本人の利益を守るため。

 これらの趣旨をよりよく満足させるためには、上記道(1)か道(2)のいずれがより好ましいでしょうか?

 道(1)を採用した場合に、弁理士資格保持者濫造による質の低下を問題にする人もおられることでしょう。しかし、仮にそれが正しいとしても、非合法な活動を黙認している現状よりはよほどマシであると私には思えます。
 現状、9000人以上の人が受験して、8000人以上の人が落ちる試験です。試験によるふるい落としとしては、それくらいで十分ではないでしょうか?弁理士の質の低下の要因としては、少なくとも私には合格後に競争原理が働き難い難関試験にし続けることの方が大きいと思えています。

 一方、道(2)を採用すると、法人に関しては「従業員」であれば無資格者が合法的に手続きできるようになります。そのような人たちが特許取得業務を行う際に、(A)特許庁での業務が円滑に行われること、(B)本人(法人)の利益を守ることができるでしょうか?
 道(2)の場合には、弁理士試験によるふるい落としは存在せず、まったくハードルが無いのです。その状態で、特許庁での業務が円滑に行われるとは思えません(理由(A))。また、法人は従業員のものではなく株主のものです。法人は株主の利益のために運営される必要があります(理由(B))。
 道(2)ではまずいでしょう。

 道(1)、道(2)のいずれをとっても、それぞれ問題は残るでしょう。弁理士数をこれからも増やし続けることに懸念を示される方もたくさんおられます。
 しかし、総合的にみて、法律的に不自然な法改正が必要で、しかも上記理由(A)、(B)ともに満足させにくい道(2)よりも、道(1)の方が圧倒的に好ましいと私は考えます。

 特許業界の現状は、歴史的必然性みたいなものに起因して非合法な活動が長年にわたり黙認されてきている状態です。それを「合法」な社会に変えていく必要があります。そのとき採用するべきは、道(2)ではなく道(1)になるのだと思います。






 この「面接ガイドラインの不思議」シリーズは、このあたりでほどほどにした方がよいように思えております。「非合法な活動を黙認している現状」などと書いてきてしまっているので、弁理士会や特許庁から叱られるかもしれません。 (-_-;)

…あと一回で終わることにします。
 インドの話に戻りたいデス。\(^▽^)/