面接ガイドラインの不思議 ――第八十二条―― | 知財業界で仕事スル

知財業界で仕事スル

知財業界の片隅で特許事務所経営を担当する弁理士のブログ。

最近は、仕事に直結することをあまり書かなくなってしまいました。

本人は、関連していると思って書いている場合がほとんどなんですが…

 再び、弁理士法第82条を引用します。

第八十二条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、第七十九条、第八十一条又は前条の違反行為をしたときは、その行為者を罰するほか、その法人又は人に対し、各本条の罰金刑を科する。


 ここで出てくる第79条は、以下のとおり。

第七十九条 第七十五条の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。


 そして、第79条で出てくる第75条が、いわゆる非弁行為を禁止した規定です。内容は以下のとおり。

第七十五条 弁理士又は特許業務法人でない者は、他人の求めに応じ報酬を得て、特許、実用新案、意匠若しくは商標若しくは国際出願若しくは国際登録出願に関する特許庁における手続…(中略)…を業とすることができない。




 さて、第82条は、いわゆる両罰規定であり、「法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者」が非弁行為(第75条)を行った場合には、法人又は人も罰せられると規定しています。

 明らかに、法人と、法人の代表者、代理人、使用人その他の従業者とは、別人として条文が作られていますね。「知財部員は会社と一体であって、知財部員の業務は会社自身の業務である」などといった扱いには、当然ながらなっていません。


 何度も書いてきていますように、今現在の現実問題として、無資格知財部員の面接を拒絶したら特許行政が回りません。それはわかっているのですが、それでも特許庁がガイドラインとして、無資格の従業者が法人を代理して(委任状までつくって)面接審査で意見を述べる状態を許すことを文章で表明してしまうのはまずいのではないでしょうか。

 特許事務所側は、無資格補助者の面接審査を禁止する正論ガイドラインを受け入れられるところまで来ました。次に改善されるべきは、企業内での無資格者による面接代理行為だと思います。Complianceが重視される世の中ですから、企業は弁理士の雇用に積極的になり、社員による面接代理行為もキチッと正論で処理できる状態を作り出す必要があるはずです。
 法人は代表者のものでも社員のものでもありません。法人は株主のもの。株主の利益をまもるのに、無資格者に代理を許し面接審査を受けさせるのは間違っていると思います。

 正論を全面的に受け入れるためには、まだまだ弁理士の数が足りません。「今や弁理士が余っている」などという議論がまかりとおるのは、違法状態の横行を放置しているからに過ぎないと思います。