以前から、特許屋の仕事の体勢と漫画家の仕事の体勢とが似ているなと思っております。理由は、アシスタントを使うからです。小説家がアシスタントに文章を書かせるということは普通ないと思いますが、漫画家はアシスタントに画を描かせるので普通です。
指定されたところを黒塗りにするとかスクリーントーンをのせるとかといった補助を他人にしてもらって漫画を仕上げているのにもかかわらず、漫画家は自作として作品を世に出します。
アシスタントにどの程度補助してもらうかは、漫画家の考え方やアシスタントの技量などによってさまざま。
漫画家が忙しく、一方でアシスタントの能力が高ければ、ストーリーだけを漫画家が作り、絵はすべてアシスタントが描くというようなこともあるのではないでしょうか。もっと極端なケースでは、漫画家は名前を出すだけで、ストーリーも含めてすべてアシスタントがやるというようなケースもあると思います(少なくとも、私が小学生だった頃の「オバケのQ太郎」はそうなっていたと私個人的には確信しております)。
無名時代からアシスタントに依存していた漫画家はいないでしょう。売れてきて忙しくなってきて、仕事をはくために少しずつアシスタント依存度をあげていくのだと思います。
そしてアシスタントへの依存度を上げていく際、どこまでならOKで、どこからは「自作」と言えなくなるのかはよくわかりません。
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さて、漫画家が有名になりまして、雑誌のインタビューが入りました。
雑誌社から記者が漫画家の仕事場に来ましたところ、出てきたのは本人ではありません。本人は忙しすぎて出てこれないので、代わりにアシスタントが出てきました。アシスタントは「このアシスタントが話すことを私が話したことと認めます」と書かれた漫画家からの委任状も持っています。
記者は、その委任状が本物であることを確認した後、アシスタントのインタビューをして帰りましたとさ…
…なんてことになるはずがありませんな!
私が、特許業務の合法化を語る際に「名義貸し」より「面接」を強調する理由は、以上のたとえ話から容易にご理解いただけるのではないかと思います。