きよの漫画考察日記926 修羅の刻第6巻 | きよの漫画考察日記

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我が家の本棚のマンガを1冊づつ考察中。
ちなみに3,000冊近くあります...

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お月様

さて寛永御前試合、その主催者が登場!

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徳川家光!
徳川家の将軍はもちろん15人とも家康の血脈に連なるわけですが、家康、秀忠以降の13人の将軍は織田家の血脈も受け継いでいます。どーゆーことかというと家光の母親であるお江の方が浅井長政とお市の方の娘だからです。お市の方はご存知織田信長の妹であり織田信秀の娘なわけですから。
なぜ今こんな話をするかというと、天斗にも織田家の血が流れておるからです。天斗の親父はもちろん陸奥八雲。その八雲の親父は陸奥狛彦。さらに狛彦の親父は陸奥辰巳、そして母親は琥珀。この琥珀も織田信長の妹、織田信秀の娘。つまり何が言いたいかというと徳川家光と天斗は織田信秀を共通の祖先とする親戚なんです。
…だからどーしたって言われると困っちゃう(笑)

そんなわけで始まった御前試合、最初に言っておきますがここから登場する人物は全て実在の人物であるということをお忘れなく。

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柳生兵庫助とは柳生利厳のことです。柳生には二流派ありまして将軍家指南役で有名なのは江戸柳生。十兵衛も江戸柳生の人物。これに対して利厳は尾張柳生。江戸柳生の方が有名ですが、柳生新陰流の正統は尾張柳生なんです。

さらにこの人も予選突破。

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宝蔵院流槍術、高田又兵衛!
宝蔵院流槍術、バカボンドの読者なら分かりますな。2代目の胤舜が武しゃんと激闘を繰り広げましたが、あれと全く同時期に宝蔵院流を収めたのが高田又兵衛です。

そして3人目。

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小野一刀流、小野忠常!
徳川将軍家の剣術指南役は二流派あります。一つはもちろん柳生新陰流。そしてもう一つは小野一刀流。忠常はこの小野一刀流の3代目。ちなみに幕末に名を馳せた山岡鉄舟は小野一刀流の11代目なんですよ。

さてここで圓の試合。対戦相手は…

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抜刀田宮流、田宮長勝!
居合いの祖である林崎甚助、その弟子である田宮重正が開いた田宮流の2代目です。それにしても居合いの流派なんて今の世の中じゃ瞬殺で廃れちまいそうなもんやけどな…

そんな田宮流、刀の柄が通常の刀よりも長いのが特徴です。がしかしこれが裏目。

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たしかにそこを抑えられちゃあ刀は抜けない。抜刀術では陸奥圓明流には勝てねえな…

さらに続くのは天斗の試合。対戦相手は…

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薩摩示現流、東郷重位!
有名な薩摩示現流の開祖ですな。とにかく初太刀に全てを懸けて振り下ろす、まぁ浅く言ってしまえばシンプルな流派なんですが、シンプルがゆえに打ち破るのは難しい。結局のところシンプルイズベストに落ち着くんよね、世の中の全ての物事は…

そんな東郷どんの初太刀をかわした天斗。すると東郷どん、背中を向けちゃいます。
東郷
「おいの負けでごある。」
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う~む、これぞ男の意地!こーゆー男っぽいセリフを標準語で言うと薄っぺらく感じますが、そこはさすがの薩摩弁、男臭さしか感じません!


つーわけでこの5人に宮本伊織と柳生十兵衛を加えた7人が決勝トーナメント進出!

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決勝は間違いなく天斗vs十兵衛でしょ。ドラゴンボールの天下一武道会並みに展開が見え見えです(笑)

さて1回戦の十兵衛vs圓の試合、圓が中途半端に強いがばっかりに十兵衛が本気になっちゃいます!
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剣気で相手を圧倒する、そんなものフィクションだろと思う奴は想像力が無さすぎる。極道やプロレスラー目の前にして威圧感を感じない奴はおらんわけでしょ、その威圧感というものが武道的に研ぎ澄まされたものだとは捉えられないか?

つーわけでとても十兵衛には勝てないと判断した圓、試合をほっぽりだして家光殺害へ!そんな圓をかばって佐助は討ち死に…
そんな状況に飛び込んできたのは天斗。
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俗に言う腕ひしぎ腕固めですな。この時代に関節技という概念は無かったのかもな…

さて佐助の後を追って討ち死にするという圓に対し…
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佐助は圓に復讐ではなく普通の人生を歩んで欲しかったわけです。それはなぜか、そりゃ圓の事を娘のように思っておったからでしょ…

つーわけで家光を人質にして脱出する天斗と圓。がしかしその前に立ちはだかるのはもちろん柳生十兵衛!
「十兵衛、剣を引け、引かねば…」
十兵衛「どうとなりとするがよい。オレが目的は…おぬしだ…」
「受けるな天斗!」
天斗「どうやらそういうわけにはいかないらしい。」
「無理だ…勝てぬとお前も言ったじゃないか!」
天斗「今は勝てる…」
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そーです、天斗こそが陸奥圓明流28代目継承者、陸奥天斗!
まぁ全ての読者が分かっておったし、作者からも隠す意図はこれっぽっちも感じられませんでしたがね(笑)
戦国時代から江戸時代初期にかけて25代陸奥辰巳→26代陸奥狛彦→27代陸奥八雲、そして28代の陸奥天斗と連なったわけですが、天斗の後は33代目陸奥左近まで4人の陸奥が登場していません。江戸時代中期、陸奥と戦わせる題材となるような猛者が見当たらん事が理由の一つでしょーが、徳川家光の暗殺事件なんかに天斗が絡んじゃったもんだからそのほとぼりが冷めるまで天斗の子孫は人目を避けて暮らしていかないかんかったのかもなぁ…

つーわけで陸奥天斗vs柳生十兵衛!
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天斗の右回し蹴りに対し十兵衛は下段から。これは両者共にかわしますが… 
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ここで旋!
これは怖いと思うよ。刀を持ってる相手に対して一瞬とはいえ背中を晒すわけやからね…

これに対し…
十兵衛「ふふ…強い…なあ。」
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十兵衛といえば隻眼、隻眼といえば十兵衛ですが、修羅の刻においては十兵衛は隻眼ではありません。ただ強くなるために片目を塞いでおっただけなんです!
……まぁこれで強くなれるのかどーかは甚だ疑問ですが(笑)たしかに塞いでない方の眼の働きは通常よりも良くはなるかな…

そんなわけで両目の十兵衛は天斗を追い詰めますが…
天斗「強いな。人の域を超えてるぜ。だが…」
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誰か天津飯を呼んでこーい(笑)


つーわけで両者最後の激突!

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上段から振り下ろした刀でそのまま横薙ぎにいった十兵衛、これに対して踏み込む天斗!
ここまではね、陸奥出海vs土方歳三戦と一緒です。あえて踏み込むことによって刀を鍔元で受け止めて懐に入る、そしてここから無空破ないし虎砲というのが陸奥の必勝パターンです。
がしかしここで注目しなければならないのは十兵衛が横薙ぎにいってるという点です。土方の時は上段からの振り下ろしを肩口で受け止めた、だから虎砲が撃てたんですが、この十兵衛の場合は横薙ぎにきてるのを受け止めてるからここから無空破や虎砲にもっていくのは体勢的に厳しいということを見逃してはいけません。

なので天斗はここから左正拳!
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眼帯を外した十兵衛の眼に捉えられないものはありませんから。銃弾すらかわしますよ、たぶん(笑)

がしかし、ここからこーくるとは十兵衛もそして俺も予想していませんでした。
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俗に言う一本貫手です。目潰しは卑怯だなんて発想はスポーツだけなんです。むしろ生存を賭けた闘争においては目潰しや急所攻撃を使わない奴の方が愚かなんです。
それにしても指先すらも凶器に変える、これは空手や少林寺拳法においてのみ発展した考えかと思いきや陸奥は当然この時代から研鑽を重ねておったわけやね…まぁ現代格闘技において貫手を見ることはまず無いといっても過言ではないですが、四本貫手なら俺たちは子供の頃よくやってました。
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油断してる奴の喉元めがけて「ブッチャー!」って叫びながら突くのは定番中の定番でした(笑)

つーわけで十兵衛の右目を潰しておいてトドメは右回し蹴り。
十兵衛「てめえに会えて…よかったぜ…」
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これで決着。無空破や虎砲で決めたわけではなく、陸奥圓明流の技でもなく、単なる上段回し蹴り。これを地味な決着だとみるのは浅薄に過ぎる。派手な技は実戦には必要無いんです。必要最小限度の動きで相手の行動能力を奪う、戦場ではそれが必要であると同時にそれで十分。エンターテイナーは戦場では死ぬ、それをこの天斗の回し蹴りは教えてくれています…

さて最後に残ったのは宮本伊織。があっさり天斗に道を開けます。
伊織「残念ながらおぬしに付き合えるほどの「化物」は体に棲まわせておらぬ。」
十兵衛「そういう事だ…陸奥天斗、お前のような「化物」と付き合ってくれるやつはオレか武蔵くらいのものだ…たのしかったなあ。いいか…この十兵衛の名を忘れるな。退屈になったら訪ねてこい…」
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闘いに敗れてなおこの言葉を吐ける十兵衛、カッコよし。負けても折れない闘志と次はオレが必ず勝つという自信が無ければ絶対に出てこない言葉です。



…さて史実ではこの16年後、柳生十兵衛は山城国の山中で急死したということになっていますが…
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いいラストです。柳生十兵衛を英雄と呼ぶのかどうかは知らんけども、英雄には英雄に相応しい死に様というのがあるよな。布団の上で家族に看取られながら死ぬなんて柳生十兵衛の死に様にあらず。過去の偉人を題材にして物語を作るならばその生き様だけではなくその死に様にまで責任をもって描き尽くすのが作家の使命なのかもしんない。たとえそれが虚飾だとしてもさ…