改訂版きよの漫画考察日記26 うしおととら第7巻 | きよの漫画考察日記

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我が家の本棚のマンガを1冊づつ考察中。
ちなみに3,000冊近くあります...

第26回はこちら。
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うしとら第7巻。ついに獣の槍の秘密、そして母の秘密が明らかに!

お月様

第22章「時逆の妖」

さて潮の旅の終点にはこの妖怪が待ってました。
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時逆!
特技はタイムスリップという無茶苦茶な妖怪。
だけどもタイムスリップに関しては現実にも不可能ではないという学者は多い。相対性理論をちょっと勉強すると確かにそう思える。物理学的にも時間移動を否定する理論は発見されていません。もしかするともしかするのかもなぁ…
だけども真の問題はタイムスリップして過去を変えれば現代や未来も変化するのか否かという点じゃないでしょーか。変化するという考えに基づいてるのはバックトゥーザフューチャーやターミネーター、変化せずにパラレルワールドとして分岐してくと考えてるのは…ドラゴンボールのトランクスの未来なんかはパラレルワールド化してましたな。このどちらなのか、これこそが重要なんだろうね…


つーわけで潮ととらが辿り着いたのは…2290年前の中国!
何時代だっけ?春秋戦国時代だっけ?あ~高校生の俺なら即答できただろうに。脳の衰えが著しいショック!

そしてここでこの子が登場!

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俺の名前は「義起」ですが、中国語読みすると「ランクィ」になります。う~む、かっこよくない…

さて古代中国一発目の妖怪はこちら。
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鉤殻虫!
虫だと言うんだから虫なんでしょう、こいつは。妖怪ではなく。

さらに登場。
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ジエメイの親父さんと、兄のギリョウ!
中国人、韓国人を顔だけで判別できると言う奴らがいるが、それは嘘やと思う。俺はコリアンタウン大久保に2年間住んでたけど、顔だけじゃ絶対に区別できません。女の子はなんとか分かるとしても男は無理です。

さて神剣を打つ親父とギリョウ。参考にしたのはこれです。
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有名です、干将・莫邪の剣。西洋でいえばエクスカリバーやレーヴァテイン、日本でいえば天叢雲剣、そーいった伝説上の名剣の一種ですな。

さて強い剣を鍛えるために髪の毛が必要だと聞いた母コウシ。
コウシ
「夫の仕事のためには惜しい物などありません…」
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うむ、髪は命とかほざく世のバカ女どもよ見習うべし!

そんなわけで潮と一家は王宮へ。がしかーしここにはヤツがおるんです!

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白面の者は常に女性に化けます。その眷族にしても、斗和子だけでなくシュムナもくらぎも女性っぽい。そー言われるとあやかしも女性っぽく見えてくる。
なぜ白面は女性に化けるのか、これについてはですね、九尾の狐は実は臆病な妖怪で、常に権力者からの庇護を得て自身の安全を図るためだったとも言われております。決して白面の者自身が雌だというわけではないんです。

そんなわけでジエメイの親父さん瞬殺されましたドクロおばはんの髪の毛を材料にした剣程度では話にもなりません(笑)

そして潮はついに白面の者と対峙!
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うーん、怖い。
やっぱ野生の獣と対面すると恐怖心は感じるよな。それはやはり古代の人類から引き継がれるDNAなんでしょう。昔の人類はよく獣から身を守ったもんだわ…

そんな白面の吐いた炎、コウシおばさんを直撃!
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一瞬で消し炭に…
人間の身体はそのほとんどが水分。だからこれを燃やし尽くすのはかなり難しい。だからこそ昔は亡くなった人を火葬ではなく土葬で葬っておったわけやね。現在の天皇陛下が火葬を希望されてるというニュースを聞いて初めて気付いたけども、昭和天皇は火葬やなかったんやね…

そんなこんなで強い剣を作る方法は残り一つ。それは人身御供。そしてその事を知ってしまったジエメイ!
ジエメイ「お兄様…」
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ギリョウ「ジ…ジエメイ…な…何を言ってるのだ?そんなところに立つと熱いだろ…さ…こっちに降りろ…」
ジエメイ「…母様があの時父様に言われて髪を炉に捧げたように…今度は私の番なのですね…神剣を…白面を倒す神剣をつくるためならば…造剣の匠の娘として生まれた我が身をどうして惜しみましょう。」
ギリョウ「よいのだジエメイ!もうよい!父も母も亡くなったこの上…おまえまでなくして…兄はどうすればよいのだ!耐えられぬ!耐えられぬぞ!」
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「やめろ…ジエメイさん…」
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藤田漫画の真骨頂って何か分かる?それは『登場人物の死に様』『女の子の笑い顔』やねん。この二点に関しては藤田和日郎に追随できる漫画家はいない。次回作からくりサーカスを読むとよく分かることです。

そしてこのジエメイの死ぬ直前の笑顔、この解釈ははっきり言って読者に委ねられてます。のちに「満足する死とは何か?」を尋ねる妖怪も出てくるが、これうしとらの裏テーマなんじゃねーかと思う。漫然と読み進めていくんじゃなく、ふと目を閉じて考えたくなる、そんなシーンなんです、このジエメイの笑顔は…


そんなわけで高炉に溶けちゃったジエメイ。そこから取れた鉄をギリョウさんは叩きます!
ギリョウ「…ジエメイ…あの時なぜ微笑ったのだ…なぜこんな運命に妹を追い込んだ兄を許したのだ…せめて…せめて憎んでくれたなら…オレは自分で自分を軽蔑し、外道として生きもできたろうに…」
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そーゆーことです、獣の槍の刃の部分にはジエメイが溶けておるんです!いや、刃そのものがジエメイなんだと言った方がええのかもね…

そして剣を打っていたギリョウさんは…
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そーなんです、鬼として剣を打った者は槍になるんです!
ん~まぁよく理屈はわからんがそーゆー事でええねん!

そしてついに獣の槍が誕生します!
ギリョウ「蒼月よ…我が家族の生死に立ち会い、オレの最後を見とってくれた子よ。オレはもはや槍に変化して人間ではなくなるが…おまえは知っているな、この闇の槍がもとは人であった事を。ならば証人となってくれ、我と我が一家がこの槍にどんな思いをかけたかを…我はせめて証人の名を我が身に刻まん!」
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獣の槍に何か漢字が刻まれてたという伏線、壮大な形で回収されました。まさか潮の名前が刻まれておったとはね…まぁ潮が来たから獣の槍ができたのか、獣の槍があったから潮が来たのか、この辺りはニワトリと卵です。

ちなみに獣の槍に刻まれておる文字は『我屬在蒼月胸中到誅白面者』です。「屬」って文字は見慣れないけども「属」と同義です。

この後獣の槍と化したギリョウさんは中国で妖怪を殺しまくったあげく封印されます。
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獣の槍の封印の赤い布、この伏線についても無事回収。
こーゆーさ、「伏線の回収」「後付け」って物をしっかり区別して捉えなきゃいかんのよね。藤田和日郎といえども全ての伏線について当初から構想があったとは思えない。中には後付けだろうと思われる物もある。がしかしね、伏線を広げるだけ広げといて満足に回収できない漫画が溢れてる現在において、やはり藤田漫画の伏線の張り方とその回収の仕方は見事だと言わざるを得ない。こーゆー漫画家にはなかなか出会えません…

つーわけで獣の槍はひとまず封印されました。
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お前なんだけどね、実は(笑)


そして西暦753年、白面の者来日。

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日本の伝承だと、九尾の狐は吉備真備の乗る遣唐使船に乗って来日したとされています。この遣唐使船にはあの鑑真和尚も乗っていたんですよ。
それにしてもさ、GPSはもちろんのこと方位磁石すらない時代に帆船で航海に出た当時の奴らは凄いよな…

そして日本に来た九尾の狐はその後玉藻前と名乗り鳥羽上皇に寵愛されるものの正体を見破られ、那須野で討たれて殺生石へと変化した…これが日本における九尾の狐伝説ですが、うしおととらにおいてはちょっと違います。西暦1160年、白面の者と戦ったのは…
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人間・妖怪連合軍!
………なぜ日本に渡ってきた白面の者は400年以上もおとなしくしてたのでしょーかね?

この戦いに敗れ逃げ出した白面、がしかしこの逃げた先こそが問題なんです!
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白面「我が再びここを飛び去ることを考えよ。その時、この島を支える柱は全て崩れだし…この日本なる国は大海に没するであろう!」
小松左京の「日本沈没」的な世界ですな。小説版の日本沈没はホントに日本が沈没しちゃうけども、草彅くん主演の映画版日本沈没だと結局日本は沈みません。これはアカンと思う。映画興行的に観客を感動させたいっつーのは理解できるが、そこをイジッちゃあかんねんて!
まぁ柴咲コウが可愛かったから許すけども(笑)

そーゆーわけで白面の周りに結界を張ったジエメイの生まれ変わりのゆき。そしてそれから400年…
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御角ばーちゃんは西暦1500年代の人物なんです。つまり二代目のお役目様は現在500歳くらい!

そしてさらに300年後、三代目のお役目様に選ばれたのが…
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潮の母親は西暦1800年代あたりに生まれたわけですな。江戸時代~明治維新にかけての時代です。つまり潮のお母さんは現在150歳くらい(笑)

そんな須磨子、夢をみます。自分の息子が獣の槍をふるっている夢を。
ジエメイ「須磨子、たわむれにたずねましょう…その子に名付けるとしたなら何と…」
須磨子「はい…私が今、座するこの場所…そして何ものにも負けぬ力を持つという意より…」
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自分の名前に由来があるってええよね。俺の名前には由来が無いねんしょぼんしかも名付け親は両親じゃなくてどこかの坊さんらしいねん。何かね、この事実を知った時にはちょっぴり寂しさを感じてしまいました(笑)



第23章「暁に雪消え果てず」

ストーリー上重要な話が続いてましたが、このあたりは小休憩。

今回の舞台はここ!

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札幌、時計台!
どーも明治時代の建築物ってのには魅力を感じへん。建築史的観点から見れば画期的な時代なんやろけども、現代人としての立場から見ると古い良さと新しい良さのどちらも感じ取れへんのよね…


そんな時計台に住む妖怪が…

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雪女のと母親の朝霧!
雪山で生命の危機に瀕すると、種の保存のために男には本能的に性的欲求が生じます。この欲求が見せる幻、それが雪女だなんて言われますが、正直西日本育ちの俺にはピンとこーへん。だって雪山なんてどこにも無いねんもん!

そんなわけで垂と出会った人間の男、ヤス。垂に対する第一印象は…
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ぶははっにひひ言っちゃった「マブイ」!

「ナウい」「チョベリグ」に匹敵する死語の代表格ですな。ちゅーかそもそもマブいなんて言葉を使ってた奴、ホントに存在すんのかね⁉

そんでもってヤスに飲み物をおごってもらう垂。選んだのはHOTではなくCOLD。

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あらカワイイドキドキ

そんなこんなで潮vs朝霧。朝霧の攻撃はこちら!
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垂氷と銀竹!
どれが垂氷でどれが銀竹なのかは不明ですが。ちなみに垂氷とは「つらら」の古語。銀竹も同義です。一つの事象を表すのに様々な言葉を用いることができる…日本語を難解にしている欠点であると同時に、日本語の一番の良さなんでしょうな、これが。

さて札幌を凍らせようとする垂、その前に立つヤス。
ヤス
「やめてくれ垂…吹雪をとめてくれよ、垂ィ!おまえそんなヤツじゃねえだろ!」
朝霧「おまえ~垂をたぶらかすか~」
ヤス「てめえが垂のオヤかよっ!てめーの憎しみに子供を巻き込むバカオヤに一つだけ言ってやるぞ!」
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全ての子供は18歳になったら親元を離れて暮らす、そーゆー法律を作っちまえばいいと思います。じゃねーといつまでも自立心のない子供ばっかになっちまうし、親バカも治りません。親が子供に干渉していいのは18歳まで。

そんなわけでヤスの側についた垂。

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吹雪を吐きながらも会話が可能とは(笑)さすが雪女です。


さて爆発した車の炎で溶けちゃいそーな垂。
「お母様、私はどきません…この男は…氷点下に生きる雪女の私に暖かさをくれました。」

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何度もツッコむけど、どこで会話してるんだろうか(笑)


そして燃える車を素手で押しのけるヤス!
ヤス
「死ぬなァァ垂ィィ!せっかくてめーの運命を選んだんじゃねえかよ!おもしれーコトだってあるし、楽しートコだってオレが連れてってやらあ!」

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雪女は恋愛対象になりますか?と聞かれるとやはり難しいとこなんでしょーな。人魚も厳しいでしょう。エルフくらいまでならアリなのかもね(笑)

そしてクライマックス。

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低温の雪女に触れると人間は凍っちゃうんです。

ヤス「やい、ババァ…垂にあたるんじゃねえ…オレが消えるからよ…」
「ヤス…さん!」
ヤス「へへ…同じくたばるんでも垂を抱きしめていけるんだ、サイコーさ…」
「離して!離しなさい!」
ヤス「へへん、やーだねえ。」

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でました「べっぴん」(笑)
マブい発言といい、どーもヤスはしゃべりがジジ臭い。


「ヤス…さん…」
ヤス「おっ…と…今の…うちに…言っておくぜ…」

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関西人はこれが言えません。「好きだぜ」とか「好きだよ」とか言えません。どーしても「好っきゃで」か「好いとんぞ」になってしまいます。ロマンのかけらもありゃしねえ(笑)

「ヤス…」
ヤス「…ああ。」

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あすなろ抱きです(笑)いや、誰がなんと言おうがこの抱きしめ方をあすなろ抱きと俺は呼び続けます。

そんなわけで逆にヤスの手に触れる垂。

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垂溶けちゃいました…
ヤス「…バカヤロウ…バカヤロオーッ!」


結局人と妖怪は共存できぬものなんよね…

……
じゃねーんだよ馬鹿野郎!
雪女を人間にする方法、それはなぁ「愛情を込めて抱きしめて溶かす」ことなんだってさ!

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どこのどいつだぁこんなこっ恥ずかしいルールを作りやがったロマンチストは⁉