『アントニオ猪木とUWF』 | yoshi's drifting weblog -揺蕩記-

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私の一番好きな言葉、揺蕩(たゆた)う。……
日常の、ふとした何気ない出来事について、
その揺蕩う様を書き留めていきます。

「格闘王」前田日明と「テロリスト」藤原喜明の対談本『アントニオ猪木とUWF』を読み終わり。

 

 

 

 

もう、……ムッチャクチャ面白かった!

 

 

私の読書タイムは主に社食での昼食後とおやつタイムの2回なんですが、そのどちらとも声が出そうなくらいに笑えてくるので終始マスクで口元を隠さざるを得ないという状況に。

 

 

感想を一言で書けば、プロレス版「不適切にもほどがある」っていう感じでしょうか。

 

 

今じゃあり得ない?許されない?

 

 

でも、だからこその価値がある意味がある情念があるっていう。

 

 

そんな熱い熱苦しい内容でございましたね。

 

 

背景をざっくり説明しておくと、……

 

 

猪木の立ち上げた新日本プロレスの第1期門下生が藤原組長で、その5年後に前田日明が入ってくる。

 

 

で、放映権料でテレ朝と揉めた猪木が新団体を立ち上げてフジテレビに移行しようとして作ったのがUWFという団体。

 

 

ひとまずそっちに前田日明やラッシャー木村を送り込み、続いて高田延彦や藤原組長を送り込む手筈だったものの、猪木は一向にテレ朝から映ってこない。

 

 

どうすればいいのかわからない前田日明は高田が猪木から預かった伝言「前田、お前だけ新日本に戻ってこい」を聞いたものの、他の選手や社員を見捨てることはできないと団体に残ることを決め、擦った揉んだの果てに新日本プロレスと業務提携という形での出戻りを決断。

 

 

そして長州力の対する顔面蹴撃事件から前田日明はクビになり、新生UWFを旗揚げすることになり、……って流れ。

 

 

そんな波瀾万丈な前田日明のそばには常に藤原組長がいて、その信頼関係の厚さもなかなか漢物語なんですが、それ以上に目立つのがプロレスラーの悪ふざけや運営側の杜撰な営業実態。

 

 

結構、有名な出来事だったり事件だったりなので、すでに知ってることもかなり多いんですが、やはり当事者同士の対談形式で読み解くのは迫真の面白さがあるわけですよね。

 

 

前田日明がプロレスラーとしてデビューするにあたり、藤原組長が仕掛けたのが「プロレスラーはデビューする前に先輩レスラーを1人選んでケツを貸さなくちゃいけない」という同性愛の洗礼がある、というドッキリ。

 

 

半年以上かけて入念に仕掛けられた前田は、猪木から「俺と荒川と藤原、誰にするんだ?」と訊き、前田日明は「藤原さんでお願いします!」と答えたという。

 

 

前田日明「だから俺はジャニーズの連中の気持ちがよくわかりますよ」だって。

 

 

このエピソードの詳細が事細かに描かれてスタート。

 

 

他にも前田日明が初めて猪木とスパーリングをしてもらった際、プロレスを知らなかった前田(空手経験はあった)が「プロレスの知識がないので、何をしてもいいですか?」と訊き、猪木は「なんでもやってこい」と言ったので、いきなり目潰しと金的をかまして先輩レスラーからフルボッコにされた話だったり。

 

 

で、このエピソードを面白がった組長が初めて前田日明とスパーリングを組むようになり、それが後の総合格闘技の始まりになった、と。

 

 

前田日明が猪木に目潰しかまさなかったら、今のPRIDE、RIZINはなかった、と。

 

 

なんじゃそりゃ(笑)

 

 

そのスパーリングでも、ヘトヘトになった前田に組長が腕十字で動けない状態にしてから顔面に屁をかます、とか。

 

 

で、前田がキレて、組長が「それだよ!その怒りのパワーが大事なんだよ!」って。

 

 

まじかい(笑)!

 

 

あとは倍賞美津子の話とか、巡業先でのノゾキの話とか、裏ビデオ(リングス時代、負けたのにインタビューに応じる態度が悪かった坂田亘(*小池栄子の旦那)を前田日明がボコボコにシバいた映像が電通経由で流出した映像)の話とか、猪木の親友・星野勘太郎の”路上の伝説”とか。

 

 

神戸の不良で喧嘩に明け暮れてた星野勘太郎の、その喧嘩仲間がみんな山口組の幹部になってる、っていう。

 

 

朝倉未来よりも恐るべし。……

 

 

極め付けは熊本の旅館破壊事件。

 

 

当事者の全員が泥酔してたために真相が誰一人わからないというまさに『藪の中』というエピソード。

 

 

そんな噴飯もののエピソードが満載な中、団体経営の裏側、闇の部分なんかも語られてて。

 

 

これも有名な話が多いので知ってる部分も多かったんですが、でもやっぱり当事者の語り口はなかなか鬼気迫るものがありましたね。

 

 

UWFの資金繰りが上手くいかなくて、ようやっと軌道に乗ったと思ったスポンサーがまさかの豊田商事グループ、っていうね。

 

 

そりゃあ、ダメだ。……

 

 

他にも、前田日明を語る上で欠かせないアンドレ・ザ・ジャイアント戦の話とか、ドン・中矢・ニールセン戦とか、そういったプロレス(格闘技戦)の深いところの醍醐味もありましてね。

 

 

本当にあの頃のプロレス、……まあ私も平成のプロレスしか知らないので、昭和のプロレスは聞き齧りでしかないんですが、今の時代にはない熱量が堪らなく面白かったですね。

 

 

最高の一冊でした。

 

 

というわけで『アントニオ猪木とUWF』堪能いたしました。

 

 

さて次。

 

 

読む本なかったんで、……手持ちの本でも読み返そうかと思ったんですが、本屋大賞読んでなかったんで、文庫化して値下げした『52ヘルツのクジラたち』から。

 

 

ではでは。