『碁盤斬り』(ちょこっとネタバレ) | yoshi's drifting weblog -揺蕩記-

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念願の?とか、そこまで楽しみにしてたわけではないんですが、ちょっとタイミングが合わなかったのでようやっとという感が高かった白石和彌監督の『碁盤斬り』を観てきましたよ。

 

 

 

 

先日、両親がそれぞれ見に行ったらしく、父から「囲碁を知ってる人が見れば楽しいかもな?」なんて言われてまして。

 

 

そんな映画なのかなぁと思いつつ、古典落語『柳田格之進』をベースにしていることは知っていたので、そんなに囲碁寄りのお話でもないだろうなぁとは思いつつの観賞。

 

 

時代劇のせいか、年配のお客さんが多くて、劇中、終盤の良い場面で後方で見てたどっかの爺さんのケータイが鳴り響きまして。

 

 

映画館でケータイ鳴らす人、久々に出会しましたねぇ。

 

 

要するに、それくらい普段観に来ないような人も来てるのかなぁ、と。

 

 

で、お話。

 

 

江戸の長屋で貧乏ながらも慎ましく暮らしている柳田格之進(草彅剛)は、囲碁を通して質屋の源兵衛さん(國村隼)と懇意になるが、ある時、源兵衛さんの家で五十両が紛失し、格之進に嫌疑がかかる。濡れ衣を着せられた格之進は切腹しようとするが、故郷を追われた因縁の武士・柴田兵庫(斎藤工)の消息がつかめた一報がもたらされる、……といった感じ。

 

 

五十両を一時的に工面するにあたり、格之進の娘・お絹(清原伽耶)が吉原に身を売るんですが、(あれ?その話って「文七元結」じゃね?)と思いまして、

 

 

 

 

久々にパンフレットを購入。

 

 

確認したら、やっぱり「文七元結」も加味されてたみたいで。

 

 

でも、「柳田格之進」にも娘が吉原に身を売る話は出てて、「文七元結」のエピソードは遊郭の女将さん(キョンキョン)の台詞とか、ラストのハッピーエンドの下りとかに塗されてるご様子でした。

 

 

で、白石和彌監督の初時代劇ということで注目されてましたけど、私も期待してましたけど、まあ面白かった!!

 

 

まず、囲碁をよく知ってる方がより楽しめる、と言われてましたけど、そこまでじゃなかったな、と。

 

 

囲碁をよく知らなくても十分に楽しめる。

 

 

確かに、囲碁勝負の伏線となってた「ウッテガエシ」「中手」の部分は囲碁を理解してないと意味がわからないと思います。

 

 

囲碁って石を取るゲームではなく、石を使って囲んだ陣地の大きさを競うゲームでしてね。

 

 

なので、キョンキョンが指南受けてましたけど、相手の石を取ったところでその石をまた取られてしまうと自分の陣地がなくなってしまうので、大きな痛手なんですね。

 

 

「中手」も同様で、そこに打たれた石を取りに行くと最終的に取り返されて自分の石がなくなってしまうので、本当の対局の時には放置されてもう打たない(決着していて意味がないので)。

 

 

……という知識は即理解できてるので、劇中の囲碁勝負がノイズになることはなかったですが、でもそんなのキョンキョンの序盤の指南でわかりやすく解説してくれてるので、囲碁を知らなくても楽しめるし。

 

 

むしろ、囲碁を知ってて良かったと思ったのは格之進の仇である柴田兵庫との対局。

 

 

囲碁は陣地を取るゲームなので、いきなり碁盤のど真ん中に打つことはないわけでして、まずはしっかり足場を固めるために「星」(盤の全体に9箇所ある、中央の星は「天元」と言われる)よりも外側(小目)から打ち始めるのが定石となっておりまして。

 

 

その定石を兵庫は破ってる時点で、他とは違う人間であるというのがよく解る。

 

 

ちなみに、AIによる思考も取り入れられている現代の囲碁では、星に打つのは結構ありの戦法で、劇中に兵庫が打っていた星への三連打(いわゆる「三連星」)はよく見かけます。

 

 

その前に3打目に小目を打つ「中国流」というのもありますが。

 

 

他にも格之進と兵庫が「ケンカ囲碁」になってないのも、ああ格之進落ち着いてるな、……という風に感じられたりもできましたけど、それくらいの認識ができる利点はありましたけど、でも囲碁自体はそこまで重要な見所ではなく。

 

 

この映画の見どころはやっぱり落語の方。

 

 

「柳田格之進」と「文七元結」の方。

 

 

時代劇としてのドラマの濃厚さ。

 

 

武士のプライドだとか、吉原のシステムだとか、長屋の雰囲気だとか、奥さんの敵討ちだとか、そういったドラマの濃さが非常に時代劇らしくて、見応えバッチシでしたよね。

 

 

そんでもって何よりもその濃厚さを濃厚なものにしてるのが草彅剛の佇まい。

 

 

『青天を衝け』の徳川慶喜を思い出すくらいの佇まいから、濡れ衣を着せられて怒り狂う気迫から、兵庫との対決シーンまで、非の打ち所がないくらいにカッコよかった!

 

 

中山道を下っていく時の三度笠&外套のちょっとジェダイ入ってる感じとか。

 

 

複雑にこねくり回さないシンプルな展開だったからこそ、そういった濃さを味わえたし、またそれが時代劇の醍醐味でもあるよなぁと思いましたね。

 

 

一歩間違うと、囲碁の場面がノイズになりそうでしたけど、でも伏線をしっかり読み取れれば大丈夫そうだし、そこら辺は斎藤工の演技でカバーできてるし、なんならそこからアクション始まっちゃうからどうとでもなったかな、とも。

 

 

終盤。

 

 

「柳田格之進」「文七元結」が来てて弥吉が吉原に駆け込んでくから、なぜか「明烏」が過ぎっちゃったりもしましたけど、そんなこともなく。

 

 

でもって、ラスト。

 

 

ここでもなんでか「芝浜」が浮かんじゃって、あれツヨポンは幻だったの?なんて思っちゃいましたけど。

 

 

というわけで『碁盤斬り』堪能いたしました。

 

 

個人的に、この映画にピエール瀧が出てきたとしたら、どこの場面に出てきてたかなぁなんて考えたりもしてましたね。

 

 

白石組の常連俳優だったですから。

 

 

吉原のキョンキョンの配下あたりに収まってそうだったかな?

 

 

さて次。

 

 

も ち ろ ん

 

 

『マッドマックス:フュリオサ』一択!!

 

 

早く観たい!!

 

 

ではでは。