『オッペンハイマー』(ネタバレあり) | yoshi's drifting weblog -揺蕩記-

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私の一番好きな言葉、揺蕩(たゆた)う。……
日常の、ふとした何気ない出来事について、
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アカデミー賞作品賞の『オッペンハイマー』を見てきましたよ。

 

 

 

 

午後にいつものように地元のボードゲーム会に参加する予定があったので、ちょっとお高いのでどうかと思ったんですが、ドルビーシネマ版をチョイス。

 

 

まあ、音響にこだわる監督でもあるので間違いではないと思いますけど、でも金欠気味なのでね。……

 

 

劇中に津波の映像があったりすると注意書きが掲示されることがありますけど、原爆の映像による注意書きなんていうのもあるんですね。

 

 

そりゃそうだよね。

 

 

 

 

さて本題。

 

 

「原爆の父」と呼ばれた物理学者のロバート・オッペンハイマーの半生を描いた伝記映画でございます。

 

 

方々から「予習しておいた方がいい」ということを聞いていたので、YouTubeである程度の予習をして行きましたよ。

 

 

おかげである程度、……登場人物のなんとなくとか、オッペンハイマーの経歴とかを理解して見れたので、映画を見ながら

 

 

(これ今、何を描いてるので?)

 

 

みたいなクエスチョンはあんまり浮かばなかったので、物語に没入できましたかね。

 

 

これから見にいく人も予習していく方が良いでしょうね。

 

 

伝記映画なので、ネタバレもへったくれもないので書いていきますけど、お話はオッペンハイマーがイギリスに留学し、物理学者から物理理論学者になり、量子力学と出会い、アメリカに帰って教えを広め、ブラックホール理論を提唱し、その功績と時の世界情勢(ナチスの台頭、ソ連との競争など)から原爆製造を任され、開発に成功したものの、……といった感じです。

 

 

まず冒頭から、『アントマン』よろしく量子の世界を見せてくれます。

 

 

抽象的なミクロの世界と重低音の良さが相俟って、気持ちの良い映画体験を味わえます。

 

 

で、ケンブリッジでの行動、……実験が下手くそだったり毒リンゴ仕込んだりという人間としての不完全さ。

 

 

オッペンハイマーは神でもなんでもなく、ただの人であるっていうことの表れであり、その後のアメリカでの情事の際にいきなり「あの言葉」が挿入され、これは名言でもなんでもないただの言葉であるという風なある種のネガティブさを感じましたね。

 

 

そんな人間・オッペンハイマーが原爆を作っていくわけですが。

 

 

原爆、ということを除けば、ある意味でのプロジェクトX的な面白みはありましたかね。

 

 

街1個作っちゃって、すったもんだありつつ、それでもナチスに原爆を作らせてはダメだという信念で突き進んでいく。

 

 

で、トリニティ実験。

 

 

この描写は、ここの緊張感は、まあ息を呑みますよねぇ。

 

 

あの爆発の炎が渦を巻いてるあたりとか、太陽のプロミネンスのように見えたりして、なんとも禍々しい。

 

 

爆風の時差であるとか。

 

 

で、やっぱりこの映画の肝ってここでしたよね。

 

 

ここでオッペンハイマーの中に何かが生まれた。

 

 

「ヤバいものを作ってしまった」のではなく「世界を変えてしまった」っていうこと。

 

 

原爆のない世界にはもう戻れないわけで、そのストレスがもうグワングワンくる。

 

 

で、原爆投下。

 

 

一部では原爆投下の描写がない(あっさりしてる)ことが不評らしいですが、その気持ちもわかりますけど、でも私はこれくらいあっさり描かれてしまっていることの方が怖いですけどね。

 

 

怖さが伝わるというか、怖くないの?って不安になる恐怖が募りますけどね。

 

 

で。

 

 

3時間ある映画の2時間はここまでで、ここからの1時間はオッペンハイマーとルイス・ストローズの対立、スパイ疑惑に移行します。

 

 

ある意味では裁判劇みたいな?様相。

 

 

この場面も予習しておかないと何が起きてるのか理解できなかったかもしれないです。

 

 

まあ、ある程度は劇中にロバート・ダウニーJrが説明してくれますが。

 

 

オッペンハイマーが原爆を作った理由、なぜ水爆製造に反対なのか、そんでもってオッペンハイマーの人間としてのダメさ、それでも信念?を曲げずにいる頑固さみたいな人間臭さ、などなど。

 

 

破壊者ではなく、人間である、と。

 

 

そんな感じに思えましたね。

 

 

……それでも。

 

 

最後のシーン、オッペンハイマーとアインシュタインが何を話したのかが提示されるわけですが。

 

 

核の連鎖反応が世界中に広がった、これから始まるんだ、と。

 

 

でもっての、ロケットが世界中に飛んでいく光景。

 

 

映像的には綺麗なんだけど、でもものすごい終末観が漲ってる。

 

 

というところで終わり。

 

 

エンドロール流れて、場内が明るくなっても、ちょっと立てなかったですね。

 

 

……なんてことはありませんでしたけど、でもなんか凄いもん見たという感はありましたよね。

 

 

映画見たなぁという濃さもありつつ、それだけじゃないメッセージ性の強い余韻が残ってて、色々と考えさせられる一本であることは間違いないですね。

 

 

戦争、暴力としてのメタファーである核・原爆、だけではない、オッペンハイマーの背負った重たい十字架のお話でございました。

 

 

日本人なら、ということではなく、今最も見ておくべき映画なんだと思います。

 

 

というわけで『オッペンハイマー』考えさせられました。

 

 

さて次回。

 

 

桜を見に川越に行くので、ついでに川越スカラ座でかかってる映画をなんでもいいから見たい!!ってなってたんですが、あいにくの休館日(川越スカラ座には休館日があるのです)なので、浦和に行って『アイアンクロー』を見るかどうか検討中。

 

 

ではでは。