RYUICHI SAKAMOTO + SHIRO TAKATANI 「TIME」@新国立劇場 | yoshi's drifting weblog -揺蕩記-

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私の一番好きな言葉、揺蕩(たゆた)う。……
日常の、ふとした何気ない出来事について、
その揺蕩う様を書き留めていきます。

正確に書けば一昨日の東京女子プロレスの両国国技館大会の興奮が冷めやらぬ中で、昨日、坂本龍一と高谷史郎によるシアターピース(オペラ)「TIME」を見てきましたよ。

 

 

本来は希望休を出してたんですが、パートさんを休ませないといけない事情から午前中出勤となり、私、この3週間で2日しか休みがもらえてないっていう状況!!

 

 

なんそれ?!なんですけど、でもお向かいのお店の店長さんはコロナに罹った時以外、毎日ずっと出勤して働いてるので、そんな光景を見ちゃうと北島康介ばりに何も言えなくなってしまうのでありまして。

 

 

観劇前に働いたりすると寝ちゃうんじゃないか、という心配もありましたけど、まあ何とかなったかな?

 

 

一旦帰宅して、身支度してからの出発。

 

 

プロレスの時とは違って、軽く正装して行きましたよ。

 

 

ただちょっとドレスコード?を失念してて、まあそんなに気にすることもないと思いますけど、こういったお芝居の場合、明るい服を着ていくと後方のお客さんの目に着いたりして嫌がる人がいるらしいというのを聞きまして。

 

 

でもまあ、実際は客席は真っ暗になってたので目に着いてなかったと思いますがね。

 

 

私の前の席の人なんか、真っ赤なTシャツ着てましたし。

 

 

 

 

3、4回来た事のある初台ですが、そのいずれもオペラシティ方面でしたが、今回は新国立劇場方面。

 

 

 

 

駅直結と聞いてたのに、改札を出て左に行ってしまい、遠回りする羽目に。

 

 

 

 

 

 

 

 

すっげえ場違いな空気がギュンギュンしてくる。

 

 

前日までプロレス見て「HIMAWARIIIIIIIIIIIII!!!!」とか「マヒローーーーーーーー!!!!」とか「ぽむーーーーーー!!!」とか「イトーーーーチャーーーーん!!!」とか絶叫してたのにね。

 

 

 

 

物販はもう、パンフレットだけ購入。

 

 

書籍関係は全部持ってますし、トートバッグが売ってましたけど、それももう不要です。

 

 

音だけあればいい。

 

 

 

 

私の席は1階6列25番。

 

 

前から3列目の一番左側。

 

 

当たりなのかどうか、後方でもいいからもうちょっと真ん中が良かったけど、でも近しいことは良いのかな。

 

 

 

 

新国立劇場なんて、もう来ることもないだろうから記念にアイスコーヒー(500円!)を堪能。

 

 

眠気を覚まし、4回トイレに行ってから着席して、開演。

 

 

 

 

もしも見にいく人がいて、この記事を読んでいるのだとしたら、あんまり余計な前情報を持たずに見た方がいいかもしれませんね。

 

 

一応、ネタバレというかどんなお話なのかというのは教授から事前に提示されてますが、私はざっくりとした状態でしか持ってなかったので、見ながら推測しながら見てて、それはそれで楽しかった?ので、深く味わうのにちょうどいいのかもと思いましたよ。

 

 

とはいえ一応、書いていきますけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

(以下、ネタバレあり)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

舞台にはくるぶしほどの深さの水が張られていて下手側に大きめの石が置かれてる。

 

 

でもって、奥のスクリーンには太陽のように見える光が灯っている、といったセッティング。

 

 

演者は田中泯と石原淋、笙奏者の宮田まゆみの3人のみ。

 

 

開演前から場内ではずっと水の流れる音がしてたんですが、開演とともに水の音が大きくなっていき、で、お寺のでっかい鈴のような音が鳴らされながら、鉄を引き摺る様な音が鳴らされながら、下手から宮田まゆみが笙を吹きながら水を渡りながら上手に歩いていく。

 

 

そして、今度は上手から入れ替わるようにして黒いフードを被った田中泯が出てきて、水辺に立ち、驚愕の表情を持って水に手を差し伸べていく。

 

 

……といった感じで始まっていきます。

 

 

これ、宮田まゆみは「自然」の象徴として存在してまして、田中泯は「人類」の象徴として存在します。

 

 

この『TIME』のテーマは「人間と自然の対立」でして、舞台に張られた水は「海」です。

 

 

人類は初めて水・海を発見し、その壮大さに息を呑む。

 

 

そして、レンガ(「文明」の象徴)を作り、枝を使って橋の様なものを作り上げ、海を渡っていこう(「自然」を征服しよう)とするけど、大きな波呑まれて絶命する。

 

 

そんな中、自然は平然と海を渡っていく。

 

 

……というのがお芝居的な部分における大まかな流れです。

 

 

人類は自然の前には無力だ、というメッセージですね。

 

 

加えて、そこに3つのお話が挿入されて行きます。

 

 

一つは夏目漱石の『夢十夜』の「第一夜」

 

 

一つは能楽の『邯鄲』

 

 

一つは荘子の『胡蝶之夢』

 

 

それらが田中泯の朗読で読まれていき、高谷史郎による映像表現と合わさって提示されてきます。

 

 

まあ、言ってしまえば「時間感覚」についての表現でしょうか。

 

 

夢と現実という次元?ですかね、そういったものが人間の感覚、時間感覚にどのように影響を及ぼし、そして無力化させるのか。

 

 

その儚さですよね。

 

 

印象としては『async』の延長線上にあるものですので、全体的には非常に同期してない。

 

 

教授いうところの「SN/M比」で言うと、……8:2くらい。

 

 

それくらい断片的に描かれてる。

 

 

でも、それらを私たちは脳内で懸命に繋ぎ止めて再構成して、解釈して、味わう。

 

 

80分、非常に濃い時間が続きます。

 

 

でも、あっという間です。

 

 

永遠に続くんじゃないのかと思いますけど、気づくと終わります。

 

 

胡蝶之夢よろしく、なんだったのか、っていう感じ。

 

 

面白かった!!っていう感覚にはならないんじゃないでしょうか、私はなりませんでした。

 

 

面白い、っていうよりも、凄かった、っていう方が近い。

 

 

なんかすごいもんを見た、味わった、っていう感じだけが残る。

 

 

 

 

トレイラーがあるんで、見た方が理解は早いでしょう。

 

 

でも認識は、実際に味わわないとできないでしょう。

 

 

あの空間の、空気。

 

 

波紋の作り出す煌めきだったり、飛沫の飛び散り方だったり、永遠的に引き伸ばされていく時間感覚の、空気。

 

 

堪能しました。