大好きだった豊真将が引退した。



たび重なるケガに泣かされながらも復活し、土俵を沸かせてくれた豊真将だったが、昨年の名古屋場所で痛めた右ヒザは、やはりかなりの重症だったようだ。





ボクも子どもの頃から長く相撲を見てきているが、土俵での所作があれほど格好いい力士は他にいない。どんなに悔しい負け方をしても、不満な表情や態度などは一切見せず、深々と礼をとる姿勢は見ていていつも心が洗われた。
優しさと強さと礼儀正しさ。
日本人として、誇りに思う。




嫁は、引退会見での錣山親方(元・寺尾)の言葉が印象的だったと言う。

『横綱、大関といった強い力士にはなれませんでしたが、相撲道で一番、大切な礼に始まり礼に終わるを体現した数少ない力士だと思っております.
本人は復帰に向けて最後の最後まで頑張ってきましたが、願いかなわず引退となりました.(右膝は)1、2年で治るけがではありませんでした.ただ、稽古場では常に体を動かすことをやめませんでした.わが弟子ながら尊敬しています.』

願わくば、こういうお相撲さんにこそ横綱になってもらいたいところだが、これも勝負の世界の厳しさか。


ボクは朝日新聞の抜井規泰という人の記事を読んで、涙が出そうになった。

『豊真将の復活は、かなわなかった.昨年名古屋の5日目.日馬富士に潰され、豊真将の右ひざが、あり得ない方向に曲がった.靱帯、筋肉、さらに骨に及ぶ重傷を負った.「もう一度土俵に」.その思いで戦ってきたが、願いはかなわなかった.
この2年、けがに泣き続けた.2年前には左肩の動きをつかさどる腱板を断裂.「俺たちの根性とプライドを見せてやろうじゃないか」と背中を押してくれた師匠の声を励みに、はい上がってきた.だが、もう一度、三役を狙える地位まで戻った矢先の大けがで、土俵人生を断ち切られた.
引退会見の少し前、豊真将は私の手を握り、「あの記事を読みまして……」.
豊真将が負傷した翌日、こんな記事を書いた.
《全力士の手本と評される所作の美しさ.分け隔てない優しさ.古武士のようなド根性.豊真将の復活を、待っている》
「根性を……絶対に……僕は……」.言葉が続かず、豊真将の目からぼろりぼろりと涙がこぼれた.
豊真将の土俵が、好きだった.』


ボクも、豊真将の土俵が大好きだった。