不要不急の外出をせずに引きこもり「今回で何周目だろう?」と感じながら『世界名作劇場 赤毛のアン』のDVDを眺める土曜日。
見る度に新たな発見があるのが本作の深さであり広さで、今回感じたのはギルバートの一途さだった。
彼は最初からアンにイチコロだったんだなあ。
ラスト、報われて本当に良かったなあ。
でも原作ではその後不仲になるんだよなあ…。
などとビールを飲みながらひとり呟く。
それはさておき、本作を眺めていて私が毎回もっとも心に刺さるは「マリラの泣き」のシーンなのだった。
孤児のアン・シャーリーを引き取った養母マリラ・カスバートという女性は信仰心が厚くて喜怒哀楽を表に出さないことを美徳としているのに、本作の後半は「マリラの泣き」のシーンの連続になる。
これがどれも印象的で、全シーンを下記にまとめてみた。
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- アンの背丈がいつのまにか自分と変わらなくなり、そして以前より思慮深くなったことに言い知れぬ寂しさと哀しみを覚え、その日の晩、小さい頃のアンの服を抱きしめながらマリラはひとりむせび泣く。シリーズ初泣き。(第37章)
- アンがクイーン学院に無事合格し、入学する前の日の晩、ドレスを着て詩を暗誦をする美しいアンを観て「いつまでも小さいままでいて欲しかったねえ」と思わずアンの前でマリラは吐露、落涙。アンは「心の中は、これからもずっとマリラの小さなアンのままよ」と答える。(第41章)
- アンがクイーン学院へ旅立った日の晩、グリーン・ゲイブルズの東の部屋にアンがいないことを考えた途端、枕に顔を押し付けてマリラ号泣。(第42章)
- マシュウが心臓マヒで急死し、村岡花子訳には無い「あんたのことは自分の腹を痛めた子のように愛しいんだよ。あんたが来てから、あんただけが私の喜びであり慰めなんだよ、アン」という名セリフを吐いてマリラ大泣き。(第47章・第48章)
- 眼医者の診察を受けたら「今の生活のままでは半年で失明」と告知され、絶望によりマリラ慟哭。その後、アンがレドモンド大学への進学を取りやめグリーン・ゲイブルズへ残ると決意したと知り、マリラ崩れ泣き。(第49章)
- アンのためにアヴォンリーの学校の教職を譲ったギルバートの優しさにマリラ嬉し泣き。(第50章)
この中で一番好きなのは初泣きシーンで、初見時、マシュウにとってアンは自分より背が高くなってもいつまでも最初に出会った頃の小さな女の子のままなのに、マリラはそうではないのだなあと切なくなったことを覚えている。
私は『赤毛のアン』の第二の主役はマリラ・カスバートだと捉えていて、マリラ視点で物語を眺めると別の表面、それは「結婚、出産経験の無い敬虔なクリスチャンの女性が母になる物語」が見えてくる、というようなことを1998年頃にwebに書いたら、すぐに『赤毛のアン』翻訳で著名な松本侑子さんからメールをいただきたいそう驚いたことをよく覚えている。
あの頃ネットは荒野だったが今よりもずっと狭かった。
で、マリラを含めての泣きシーンの回数が最も多いキャラクターはやっぱりアンで、2位はダイアナ、3位はルビー・ギリスとなる。
ルビーはその後『アンの愛情』で二十歳の若さで病死するのだった。
画像は書架にあった『赤毛のアンの手作り絵本』(1980年/鎌倉書房)と『月刊MOE』2001年7月号(白泉社)。
引き続き不要不急の外出もせずアンの世界にひさびさにに浸ろうと思った2020年の4月。
不要不急の外出が気にせずできるようになれば『赤毛のアン』飲み会がしたい。