https://www.akamon-clinic.com/聴覚過敏症(受験生)/
以前、受験対策の特集番組「生徒諸クン!」がテレビ朝日などテレ朝系列で放送され、私は解説係の心療内科医として出演させていただきました。
その中でお話させていただいた内容を、このサイトではより掘り下げて解説していきます。
今日、取り上げるのは、自殺を図る受験生には、その直前に、耳に共通する聴覚の特徴が現れることが多いということです。
その特徴とは、聴覚過敏です。
かすかな物音でもうるさく感じ、受験生を精神的に苦しめます。
どうして聴覚過敏と自殺がつながるのか?
受験生の脳の中で、どのような現象が起こっているのか?
受験生を専門に診療している心療内科医としての経験と専門知識をもとに、分かりやすく解説します。
自殺の前兆は増悪する聴覚過敏!
私の心療内科クリニックでは、自殺を図った受験生の親御様に対してカウンセリングを行う機会も多いのですが、それまでの経過を詳しくお尋ねすると、その前兆として、今から思えば聴覚過敏があったようだ…という話は、よく出てくるエピソードです。
家族の話し声がイライラして、勉強に集中できない…であったり、冷蔵庫やエアコンなど、生活雑音が気になって、勉強が進まない…といった悩みを持っていることが多いのです。
しかも、その悩みが日増しに増悪し、そのまま自殺につながったという場合も少なくありません。
具体的には、受験生がウルサイと言うので、ご家族は、廊下を歩くときも、一歩一歩、忍び足のように、そうっと・・・そうっと・・・という感じで歩いていたというケースもありました。
それでも、たまに、ほんの少しは、床がきしむ音がするわけです。
それだけでも、受験生は「ウルサイ」と怒鳴り散らしたそうです。
親御様は、単に受験のイライラを親にぶつけているだけだ・・・、単なる親への甘えだ・・・と思っていたそうです。
その後、以前のブログ、「受験生の自殺が1月15日に激増する理由」のところでご説明したパターンの自殺を図りました。
幸い、命に別状はありませんでしたが、傷跡は残り、ご家族は事前に気づいてあげられなかったことを大変後悔されています。
ブログ記事⇒
「受験生の自殺が1月15日に激増する理由」
もちろん、一般論としては、このようなケースで、ご家族にイライラをぶつけているという側面がないわけではありません。
でも、実際に受験ストレスが限界に達している受験生の場合、きちんと診察をすると、心因性聴覚過敏症(Hyperacusis associated with depression)になっていることが明らかになるケースがとても多いのです。
受験生に限れば、比較的、よくみられる現象ですが、このような症状は、脳の扁桃体の過剰な反応で起こることが多いのです。
入試の前夜に、時計の秒針の音まで気になり、眠れなくなった・・・という話はよく耳にされると思います。
これも、丁寧に診察すると、単なる緊張のせいだけでなく、受験生特有の扁桃体の過剰反応による場合も多いことがわかります。
通常、入試の時期が近づくほど、症状は重くなり、入試の前夜から入試の真っ最中にかけて、症状はピークになります。
だからこそ、入試の直前期を迎える前に対処しておく必要があるのです。
では、そもそも、なぜ、受験生は脳の扁桃体が過剰に活動し、聴覚過敏になってしまうのでしょうか。
実は、そこには、人間が生存するための生きる知恵が凝縮されていたことが、研究で解明されています。
受験は、誰であっても落ちる可能性があり、脳の扁桃体は、常に不安の感情を作り出しています。
原始時代には、肉食動物や敵対する部族に襲撃されるリスクが高いときに、扁桃体が強い不安を感じることが多かったのです。
そんな場合、ほんのわずかな物音でも敏感に感じ取ることができたら、いち早く逃げることが可能です。
人類は、それで命を守ることができたわけです。
ただ、人類全員が等しく聴覚過敏になるのではなく、一部の人だけ聴覚過敏になって異変に気づいたら、周囲の人も一緒に逃げることができました。
だから、聴覚の感受性には遺伝子によるバリエーションが、そのまま、現代人に受け継がれたわけです。
本来は、人類が生き残るために役立った聴覚過敏でしたが、身に襲いかかる脅威が肉食獣から入試の不合格に変わった今、この仕組みが仇となってしまったわけです。
自殺を予防するには受験生特有の聴覚過敏を知っておくこと!
このように、受験による聴覚過敏は、耳の内耳の異常による一般的な聴覚過敏とは、まったく異なり、原因は脳の働きにあるわけです。
ですから、求められる対処も、当然、普通の聴覚過敏とは違ったものになります。
自殺を予防するには、受験生本人もそうですが、それ以上にご家族が
受験生特有の心因性聴覚過敏症をよく理解しておくことが不可欠です。
そのうえで、脳医学とメンタル医学に基づいた適切な対策をとれば、聴覚過敏で入試に落ちるということも防げます。
ですから、悩みを抱える受験生には二重の福音となるわけです。
これについては、以下の「心因性聴覚過敏症(受験生)」の記事をご一読ください。
✓ 試験を受けているときや受験勉強をしているときに、本当は小さな音なのに大きな音に感じて、試験に集中できない場合、受験生に特有に見られる聴覚過敏症(Hyperacusis associated with depression)の危険性があります。
✓ 聴覚過敏には、発達障害による感覚過敏や突発性難聴による「リクルートメント(Recruitment)」と呼ばれる現象が原因としてあげられます。
✓ 受験生に特有に見られる聴覚過敏症の場合は、脳内の扁桃体(Amygdala)が不安や不満の感情を過剰に生み出し、これに連動して聞き取った音が増幅されます。
✓ 原因は受験ストレスなので、通常、入試の時期が近づくと症状が悪化し、入試の当日に最も症状が重くなるため、合格をつかみ取るには、早期の治療が不可欠です。
東京大学本郷キャンパス赤門正面
本郷赤門前クリニック
試験を受けているときに、本当は小さな音なのに、とても大きい音に感じて、試験に集中できなかったという経験はありませんか。
・周囲の受験生が答案用紙に書き入れるペンの音。
・周囲の受験生が消しゴムで消すときに机がきしむ音。
・時計の秒針が時を刻むチクタクチクタクという音。
この場合は、受験生に特有に見られる聴覚過敏症(Hyperacusis associated with depression)の危険性があります。
また、自宅で受験勉強をしているときも、イライラしたり不安になったりすると、聴覚過敏症の症状が出やすくなります。
たとえば、家族のなにげない会話や、洗濯機や冷蔵庫やエアコンなどの生活騒音が、本当は小さな音なのに、とても大きな音に感じる場合があるのです。
こうしたタイプの聴覚過敏症は、メンタル面の不調が発病に大きく関連しています。
だから症状は、緊張感が最大限に高まる入学試験のときに極端に重くなる場合が大半です。
学力が高くても入試に落ちてしまうため、早期に治しておく必要があります。
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本郷赤門前クリニック
発達障害や難聴とはことなり、受験生に特有に見られる聴覚過敏症(Hyperacusis associated with depression)の場合、直接の原因を生み出すのは、脳内の扁桃体(Amygdala)と呼ばれる部分です。
この部分が不安と不満の感情を生み出すと、音が増幅して感じられるようになる仕組みが脳に備わっているのです。
実は、この仕組自体は、どなたの脳にも備わっています。
扁桃体が不安や不満を生み出す場合、自分の身の回りで危険なことが起こっている、あるいは、自分の身に不利益なことが起こってるはずです。
そのような場合に、危険を回避したり、損をしないために、聴覚を過敏にして、身の回りに起こる些細な変化も見逃さないことが必要です。
つまり、不安や不満とともに聴覚を敏感にすることは、生き残るために必要なことなのです。
しかし、いくら必要な仕組みであっても、程度を超えて暴走すると、本人に不利益をもたらす病気となってしまいます。
受験生に特有に見られる聴覚過敏症(Hyperacusis associated with depression)は、受験ストレスのため、扁桃体が暴走してしまうことで起こるのです。・・・