花のように揺るぎなく 吉井和哉 『FLOWER』 2011.3.18 Mステ | あなたの夜を埋める物

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ミュージックステーションを見た。

震災をツイッターで知ってテレビから流れる映像に息を飲んだ日から1週間。そして2週間ぶりの放送となった今夜のミュージックステーション。

事前に予約もせずにぼーっとしていて発売日に買えなかった『LOVE&PEACE』を先週から毎日聴くようになっていた。
そんな日々の中、公式サイトで前々から告知されていたMステ出演を知ったのは今日の午後だった。またもやぼーっとしていたわけだ。

Mステ出演を知った時から「たまたま」「偶然」という言葉だけでは片付けられない「なにか」があるような気がしてならなかった。
ファンの欲目だといわれても仕方ないが、「吉井和哉ならなんかきっとやってくれる」と思った。

観客もおらず、暗闇の方が目立つ、鉄骨を組み上げただけの簡素なセット。
司会者と出演者全員がほぼ1画面に収まった映像とミュージシャンからのメッセージ紹介、そしてバックバンドもダンサーもいない。
各ミュージシャンがマイク1本ピアノ1台で予定していた楽曲ではなく変更された曲を歌っていた。

スタジオに映像が切り替わる度、ほぼ微動だにせず、タモさんの時に右、時に左斜め後ろで、こわばった表情で真正面を向いて座っている吉井和哉の姿にこれまでのMステ出演時には感じなかった緊張が見ている方にまでこみあげてきた。

ラストから2番目に吉井和哉登場。
タモさんのいつもに増して、だけど緊張しているであろう出演者へ過剰にメッセージを求めたりしない“いつもどおり”の進行に安心しながら、CMをはさみ、「ニューアルバムから初披露」となる楽曲『FLOWER』。

「ひとりでも多くの皆さんの心に花が咲きますように」。
小さな音量だと聞き取れないくらいのぼそぼそ声から、ライヴツアー時とほぼ同じ面子のバンドからギターの音がかき鳴らされた瞬間、圧倒的な存在感を放つロックスターに変わった。

「花」という使い古されたモチーフ、攻撃的なフレーズや派手なアレンジも無い楽曲。イエローモンキー時代と比べて「吉井老けたなー地味になったな」と久しぶりに吉井和哉を見た人は思っただろう。
だけど『FLOWER』はただ「花」の美しさを賞賛し、愛でる歌じゃなかった。

自分を愛せなくて、人を愛せなくて、過去の自分に襲い掛かられて、なかなか素直になれなくて、強い嵐で今日も心が荒らされる。
キレイな色で咲く小さな花にすらかなわない。
だけどじっとこらえて、嵐が止んだら、かたい蕾を開いて咲いてみよう、きっとキレイだよと歌っていた。

モニタや客席で観るだけの、多分一生手が届かないくらいのロックスターなのに、同じように、迷って、もがいて、間違えて、傷ついて、それを隠さずに共にいてくれようとしている。
その歌声は一番近くて深いところまで降りてきて、寄り添ってくれる。今までもそうだった、そして今夜も来てくれた。
そのことが嬉しくてうれしくて、1番のサビあたりで涙がこぼれた。

吉井和哉のみフルバンドだったのは前々から今日出演する事が決まっていた(今回のMステ生演奏枠だったのだろう)と曲目が変更にならなかったからと思われる。
「吉井だけ特別扱い」とか「エレキギター使ってる」とか思われる方がいらしゃるかもしれないのであくまで個人の推測だが記しておこう。

今夜放送された曲は3月30日に発売予定だったニューアルバムの最後の曲。
番組中で本人も話していたが歌詞を一部変えて歌うということで、アルバムが発売された時に変更部分を確認するべく、Mステで歌われた歌詞を写してみた。

アルバム発売延期の報を知った瞬間は正直ガッカリしたが、全国の吉井和哉の音楽が必要な人全員に行き届く体制になるまで待つんだ。

ミュージックステーションが見られなかった人とも、CDで、春から始まるライヴツアーで、『FLOWER』を一緒に聴いて感想を分かち合いたいと願う。




あれから何年経ったんだ? 相も変わらずに困難だ
だけど毎日を できるだけ good に

自分の血を愛せないと 人は愛せないとわかった
それは悪いけど たぶん本当だ

夕方の嵐 ガリッと鳴った魂
芽を出したら今すぐ 一気に咲こう

さあ 花のように さあ 揺るぎなく
大雨が止んだら つぼみ開こう キレイな色してる

切られた花でも生ければ あなたに何かを伝えた
すぐに枯れると わかっていても

眠る時想う 理想の夜空とは
どんな色? 星はどう? 一緒に見よう

そう 泣くことも そう 笑うことも
小さいが たくましい 花びらのよう 黙って揺れている

閉まりきった窓が 開かれた時の 風の音や匂い あの日の過ち
偏り過ぎてた 記憶のバランスが とれたら思いっきり 真っ直ぐ咲こう

さあ 花のように さあ 揺るぎなく
短いが美しい時を繋ごう キレイな色してる

黙って揺れている それは永遠に続く


吉井和哉 『FLOWER』 
※2011.3.18 ミュージックステーション出演時一部歌詞変更有り。


 

The Apples (初回限定盤)(DVD付)/吉井和哉
「3月30日とありますが、3月19日現在発売延期になっております」

 

The Apples/吉井和哉
「通常盤のジャケット初めてみたけどいいなぁ」