「キリストだよう、バッカ。」 | あなたの夜を埋める物

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バッカ(初回限定盤)(DVD付)/吉井和哉
バッカ/吉井和哉
「もちろん初回限定盤当たり前なのだが、通常版のジャケも格好いい…あああ」

吉井和哉初のクリスマスソング『バッカ』を遅ればせながら買ってきた。

アルバムからのリカットシングルで、カップリングはシュレッダーとバッカのライヴヴァージョンなので、まあファンにとっては微妙な代物なのだが、初回限定盤には吉井和哉好きにはあらがえない魅惑のディスクがついていた。
それはシュレッダーとバッカのPV収録DVD。とくに『バッカ』。
秋のツアーで本人が「サラリーマンの格好でバッカのPVを撮るためにシングルカットした」と話していたのだ。

リーマン姿の吉井和哉………買うしかあるまい。

CDよりも先にDVD、PS2をセットする時間も惜しいのですでに立ち上げていたPCでバッカのPVを再生。
宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』の一節が映って、がやがやとガード下にありそうな居酒屋の映像。カウンターで飲む3人のサラリーマン。何も言わず煙草に火をつける右端の男…よ、吉井さん?

すっ、すば、素晴らしすぎるアップ

Oh!なんてこったい!?もうこんなリーマンいたらたまらないね!やめられないね!!とまらないね!!!←かっぱえびせんか。
想像以上の吉井和哉のサラリーマンコスプレ←コスプレっていうな。に感動。

冒頭の居酒屋ドラマの最後に「キリストだよう、バカ」という吉井和哉のセリフが入って、曲が始まる。この「キリストだよう、バカ」の“だよう”がなーんか芝居に不慣れというかいじらしい感じが出て、こう、なんか、いいね(笑)

このバッカのPVにKREVAが出るというのは知っていたのだが、他の出演者が吉井和哉ファンならなんとなくつながりが分かる、リスペクトしたり、されていたりのちょっとしたメンバー。

私はKREVAの名前が出た時点で、絶対吉井さんをボコボコにするチンピラ役だとばかり思っていたが、実際吉井さんにからんでボコボコにしていたのはRIZEの金子ノブアキとレギュラーの西川(親分役)だった。
でもチンピラ2人より吉井和哉のほうが断然ガタイがいいので、見ていてちょっとした矛盾が…(微笑)。

レギュラーの西川君はどういう関係なのだろうか?イエローモンキーのファンだったっけか?でも君は角刈りだから吉井さんのPVに出られたんだぞ←勝手すぎる推測。
よくも吉井さんをボコボコにしてくれたな、あるある探検隊め…。

そしてこのPVにはもうひとつ、見所があって、イエローモンキー時代に吉井和哉が監督をした『JAM』のPVに出ていた当時、小学5~6年の男の子と女の子が出演しているのだ。
PV中にも『JAM』のカットがいくつか入れてあって、繰り返しPVを見ているうちに『JAM』と『バッカ』この2曲を繋げた意味がうっすらと分かった気がした。

こんな夜は会いたくて 会いたくて 会いたくて
君に会いたくて 君に会いたくて また明日を待ってる 『JAM』

どうすれば君に会えるの? 『バッカ』


PVの中のサラリーマン吉井和哉は誰かに電話をしようとしてやめたり、レンタルビデオ屋の前で『JAM』の男の子と女の子の映ったテレビをぼんやりと見つめていたり、クリスマスケーキを買って携帯を出したところでチンピラにぶつかって携帯を落としてケーキもぐちゃぐちゃになってしまう。
『JAM』の男の子の時のまま、大人になった『バッカ』の中年サラリーマンも、ただ“君に会いたかった”のだ。

会いたい人がいるのに会えない。
人間として生きていく上で、これはとてもかなしいことだ。

監督の高橋栄樹氏による解説によると撮影場所は吉井さんが住んでいた北区で殆どおこなわれたそうで、吉井さんが子供の頃実際に遊んだ公園や住んでいた家も映っていて、ちょっとした吉井和哉の思い出ビデオのようでもある。

早くに亡くなった父親、幼い頃の自分、もう2度と会えない人たち。
小さな星の小さな国の小さな命がケーキの細いロウソクの灯りのように、灯されては吹き消される。その繰り返し、繰り返しで年に一度訪れるクリスマスという日。
世間では特別とされているこの日に、本当は特別でもなんでもない日に、君と一緒にいられたら…その願いが叶えられたら、クリスマスは、クリスマスじゃなくても特別な日になるのに。
どこまでも切ないクリスマスソングを作ってくれたものだ。

最後、『JAM』の男の子と女の子は青年と女性になって、電車から飛び出して晴れた公園へ走り去って行く。
サラリーマン吉井和哉は夜更けの公園でジャングルジムから落ちて、地べたに倒れた身体に雪が舞い落ちる。

クリスマスに会いたい人がいてもいなくても、クリスマスも仕事で特別でもなんでもなくても、この現代社会がこしらえた聖なる日に、ケーキのロウソク1本ほどの希望を灯してみても、いいかな?そんな気持になった。


夜なのに 今夜は聖なる夜なのに
絶え間なく続いて行くドラマ

ただ君と一緒にいたかった
独り言言うよ

メリークリスマス

◆「『バッカ』視聴・PV視聴・監督のメイキング文はこちらから」
 http://www.emimusic.jp/vmc/artist/domestic/yoshii/index.php