夕食を自室に運ぼうとして遠くによけてあったから揚げの皿を取るために母親の後ろに回りこむと裸足に痛みがほとばしった。
「ぃいーーーーたぁっ!」あわてて足元を見ると右足の親指の股にスブリと針が刺さったらしい。母親の側にたたんでおいてあったすそ上げ途中のカーテンに打ってあったまち針を踏んだのだ。
「これじゃトゥーシューズが履けない、プリマになれないわ…」プリマドンナならぬプリマハムのような足を抱え痛みうんぬんよりも“針が刺さった”という事実がショックで動転している私を見て母は“ああ、これかぁ”と軽く笑って、
「ちゃんと下見て歩きなさい、どこでも踏むな」
「針山ならともかく、たたんだカーテンに針がついとるのやわかるかあっ!」
しかし“針のうちどころ”がよかったのか、針の先ほどの出血で痛みもすぐ治まった。
昔、胃カメラを飲んで「特に異常ないですね」と言われ「せっかくあんな苦しい思いをして飲んだのに何も無しかい。」と感じた時と同じことを思った。
どんな状況でもその行為に見合った代償を求めてしまう己のケチさが情けない。