先日、ある生徒に、算数の文章題を教えました。
そのとき、僕は彼に聞きました。
「1本x円の鉛筆7本で代金はx×7円。
その代金が630円になったんだって。
じゃあ、これを式で表すとどうなるの?」
その生徒は思いっきり頭を抱えました
「x=630……
えっ、違うの?
じゃあ、630÷7?」
生徒本人も何が何だか分からない状態
僕とのやりとりを10分くらい繰り返して、
ようやく「x×7=630」という等式に辿り着きました。
以前から気にはなっていたのですが、
この生徒のような症状の生徒は非常に多いです。
たとえば、「代金x円は630円でした。」と言われれば、
大抵の生徒は「x=630」と答えることができます。
一方、「代金(x+130)円は630円でした。」と言われると、
「x+130=630」という式をなかなか思い浮かべられません。
当然、このタイプの生徒は代入が苦手です
「x=2のとき、x+3の値を求めなさい。」なら、
「2+3」というふうに代入ができます。
しかし、「x=a+5のとき、x+3の値を求めなさい。」だと、
「(a+5)+3」という変形ができないのです
つまり、xへの代入にしても、
1とか23とか最小単位の数字なら扱えます。
一方、a+5やy×2のように、
複数の文字や数字の塊になると混乱するんですね~
これはかなり厄介な問題で、
根が深いと思っています
前回の記事 で「AはBである。」を
「A=B」と認識できない生徒の話をしましたが、
このあたりとも関わってくる致命的な問題です。
たとえば、次の文の主語(部)を考えたいと思います。
「地球環境を守るために考えるべき大切な問題は二酸化炭素によってもたらされる地球温暖化である。」
「x×7=630」の等式をパッと作れない生徒は、
当然のごとく上の文でも主語(部)を見つけられません。
「主語は『地球環境』?『二酸化炭素』?」
と混乱してしまうのです
「AはBである。」という文の「Aは」が主語(部)ですから、
複雑な文になったとしても
「は」に注目してその前の部分を抜き出せばいいだけです。
上の文であれば、
「地球環境を守るために考えるべき大切な問題は」が主部です。
主語単体を抜き出すにしても「問題は」となるはずです。
たったこれだけのことを、
いつまでも理解できない生徒がいるのです。
というか、公立の小学校・中学校では、
こういう生徒がかなり多いと思われます。
彼らの頭の中は、
バラバラの単語や数字が秩序なく入り乱れて、
グッチャグチャのカオス状態になっています(笑)
そういう生徒は、大人の話も理解できません。
「授業中にしゃべらないことと宿題を毎日することと廊下を走らないことは約束ですよ。」
こんなことを大人に言われようものなら、
彼らは「授業中にしゃべらないこと=約束」で終わってしまいます。
「授業中にしゃべらないこと」と
「宿題を毎日すること」と
「廊下を走らないこと」の全てが「約束」だと分からないのです。
だから、彼らは大人たちに怒られます
「話を聞いていない!」と。
ただ、ここで注意すべきは、
彼らは話を聞いていないのではないということです
彼らは話を聞いているものの、
どことどこがどういう関係なのかを
正確に把握できていないのです
こうした問題が表面化するのが
算数の文章題だったり国語の読解問題だったりするので、
「文章題ができない」「国語ができない」と騒がれます
しかし、本当に問題なのは、
特定の科目や単元ができないことではなく、
まともな言語運用能力を欠いているということです。
では、その本当の問題を解決するにはどうするか?
僕のように細かいことまで気になる、
ねちっこくて口うるさい大人が、
しつこく何度も生徒の言葉遣いを
修正していくしかないと思っています。
時間はかかりますが、長い目で見れば、
生徒の言語運用能力をきっと向上させられる、と僕は信じています。