先日、ある中学生に国語の問題を解かせました。
その生徒は、どうも文章を読めていないようでした
そこで、僕は次の質問をしました。
「『AはBである。BはCである。CはDである。EはFである。』という文章で、Aとイコール(=)になるのはB~Fのどれ?」
僕の質問に対して生徒は応えました。
「分からない」
ここで僕が激怒したのは言うまでもありません
さて、上の質問を、
言葉を変えてもう一度生徒に投げかけてみました。
「『一万円は五千円札二枚分である。五千円札二枚分は千円札十枚分である。』という文章で、一万円とイコール(=)になるのはどれ?」
これなら生徒も楽勝です
「五千円札二枚分と千円札十枚分」
ここから分かるのは以下のことです。
件の生徒は、日常生活の中で
実際に見たり触れたりしたことのある物事なら、
それらを文章にしても相同関係(イコールの関係)が分かります。
一方、よく分からない抽象的な言葉が並ぶと、
そこから相同関係を読み取れなくなります。
数学の世界でよくあることですが、
数字同士の四則計算は難なくできるが、
文字同士の四則計算になるとできなくなる、
という現象と全く同じことが国語でも起きているのです。
これでは、日本語を使いこなせません
言葉というのは、
日常生活の具体的な事柄を表すだけでなく、
非日常の出来事や抽象的な概念を表し、
高度な思考を可能ならしめるツールです。
日本語に限らず、言語のこうした側面を用いて、
未知の世界を読み解き理解していく訓練が、
中学以降の勉強の大きな柱となってきます
しかし、件の生徒は、中学生でありながら、
小学校低学年レベルの日本語スキルで止まっています。
当然、国語に出てくる文章はまともに読解できませんし、
国語以外の中学学習内容もなかなか理解が捗りません
もっとも、拙い日本語力を以て、
この生徒の不勉強を責めることはできません。
これは、生徒個人の問題というよりも、
日本の国語教育の弊害と捉えるべきだからです
(といいつつ、僕は激怒したわけですが(笑))
これまでも何度となく指摘してきましたが、
日本の国語教育は何の役にも立ちません!!
日本語のルールや論理的な読解・作文など、
実践的かつ本質的なスキルの育成は一切行わず、
文学鑑賞に何時間も費やした挙句、
「自由に感想を述べましょう」で終わってしまうのです。
本当の意味での日本語教育は、
英語や古典に委ねられていると言っても過言ではありません。
ここまで役に立たない国語教育は、
もはや世界に誇ってもいいくらいです( ´艸`)
学校教育の一環として
文学作品を読ませる時間はあっていいと思います。
それとは別に、
日本語の読み書きスキルの育成を
もっと徹底して行っていく必要があるのではないでしょうか?
"This is a pen." の "a pen" を "a book" に変えたり、
疑問文や否定文に書き換えさせたり……といったことは
英語の授業では普通に行われていることです。
この手の短文作成や書き換えの練習は
生徒からしたら詰まらないことこの上ないのでしょう。
しかし、この程度のことがスラッとできなければ、
英語を使いこなすことなど一生不可能です
だからこそ、現在の英語教育でも
"This is a pen." が生き残っているのでしょう。
同じことを日本の国語教育でも行うべきです
"This is a pen." に相当する「AはBである。」の
短文作成や言い換えを何度も行わせ、
「AはBである。」が「A=B」であることを
子ども達の脳ミソにキッチリ刷り込むのです
そうすれば、どんな子どもでも、
「モナドは、延長を持たない実体である。」という文において、
「モナド」「延長」「実体」の意味が分からずとも、
「モナド=延長を持たない実体」という相同関係は把握できます
文章読解というのは、こういうところから始まります。
「『モナド』の意味が分からないので、
これ以上は何もできません~」
そう言って思考停止してしまうのはただのバカです
意味が分からないなら分からないなりに、
どことどこがイコール(=)なのか
くらいは正確に把握していきましょうね~
以上のような視点を欠いた日本の国語教育は、
子ども達の学力も将来も潰す最悪の教育です
日本の教育論争では、
英語教育を英会話重視にすべきだとか、
子ども達の理数離れが問題だとか、
そんなことばかり槍玉に挙げられます
しかし、そうした問題の根本には、
まともに日本語を教えない国語教育の問題があることを
何故か多くの人たちが見落としてしまっているのです。
国語教師や民間教育者の何人かは、
そうした国語教育に対して警鐘を鳴らしています
しかし、それらの声が
教育行政に反映されることはおそらく無いでしょう。
暗澹たる日本の将来にため息が出ます
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