日本語学校、この時期、受験に際して思うこと。 | 管理職日本語教師の、相当深~いつぶやき。

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私たちの可能性は、こんなもんじゃない。

受験真っ只中!というのは前回の記事で書きました。

 

そして気が付けば12月突入。

学生たちはというと、大学、大学院進学希望者以外は、ほぼほぼ進路が決定。

いや~よくがんばってくれました。

学生も、そして各クラスの先生も。

なんせ二人しか専任講師がいないのに、受験する学生は90名。

どう考えてもマンパワーが足りない。

それを各クラスの非常勤講師の先生の惜しみないサポート。

書類をチェックする、志望理由をチェックする、準備の遅い学生のお尻を叩く。

 

あと進路が決まっていないのは、各クラスに2.3名となりました。

 

ところが・・・ですね。

 

この残り2,3名というのが曲者!

受験指導のご担当者ならおわかり頂けると思いますが、この時期に未だに進路が決まっていない学生はほとんど、早くに進路が決まっている学生の3倍も4倍も手がかかる学生。

 

早くに高めの専門学校を狙って、落ちちゃった。

第一希望を決めていたのに、土壇場で迷いが入って出願をやめちゃった。

 

このあたりはまだいい。(よくないけど仕方がない。)

 

出願書類のチェックを教師と一緒にやらないで、自分で勝手に出願した結果、書類が不備だらけで落ちた。

志望理由の作文を事前にチェックしたところ、日本語はバイト先の店長に直してもらってきれいだが、内容は全く勝てるシロモノじゃなかったので、書き直しを命じたのに、面倒臭がって書き直さずにそのまま出願しちゃって落ちた。

面接の練習を、本番前に6回教師とやるように命じてあるのに、教師から逃げ回って一度も練習しないで受験しちゃって落ちた。

 

残っているのはこんなんばっかり。

ね、曲者でしょう?

 

はっきり言って、(程度にもよりますが)出席率と日本語の成績が悪くても、このあたりの教師の指示をちゃんと守って受験に備えている学生は、すでになんとか合格を勝ち取っています。

 

残っている曲者たちは、

 

①出席率もあまりよくない。

②日本語能力もあまり高くない。

③取り立てていいところがあまりない。

 

そして、それに加えて

④こちらの指示を守らない!

 

曲者。

 

どうして教師の指示を聞かないのか?

 

①面倒臭がり

②「自分だけは大丈夫」という、妙な自信

③教師よりも学校外部の同国人の友達や親類縁者の言うことを信用する

 

なんかこんな傾向が、あるような・・・。

 

でも、それがここまで来て、今まで全然こちらの指示を聞かなかったのに、急に焦りだしてるから、ちょっとかわいい。

 

12月に入って、初めて面接練習の予約を入れてきたり、

今まで自分では何もしようとしなかったのに、急に自分で専門学校に電話して説明を聞きに行ったり、

 

遅い!

もっと早くから準備してればよかったのにぃぃぃぃ。

 

私もかなり早くから、例年より前倒しで準備させてきたつもりでしたが、この有様です。

 

でもこの時期に来て、つくづく思うのが、「情報って大事だ。」ってこと。

 

この間、他校の日本語学校の先生方同士が集まっての、「情報交換会」があったんです。

お声がけいただいたので、ありがたく参加させて頂きました。

 

私もこの学校では初めての受験指導なので、去年からそれに備えて、できるだけ多くの大学、専門学校の留学生担当の方とお会いして、情報を集めてきました。

 

しかし、そういう情報って、当然「いいこと」ばかりですよね。

就職率とか

授業内容とか

だって、その学校の担当者の方から直接お話をお聞きするんですもん。

 

でも、実際に日本語学校の受験指導担当の方と情報交換すると、「いいこと」ばかりではなく「わるいこと」の情報も、いや~出るわ出るわ(笑)。

 

特に長年卒業生を出していらっしゃる学校さんの、卒業生からの聞き取り情報は貴重です。

 

某学校は、就職率〇〇%なんて言ってるけど、実際に就職はそんなにしていない。とか、

入学しても、半分辞めちゃう。とか、

その学校で1年ビザをつないで、次の年に他の高等教育機関を受験しようと思っても、出席証明と成績証明を発行してもらえないから、受験できずに帰国することになった人がいる。とか、

授業は超つまんない。とか、

専門学校からの就職なのに、専攻とは全然関係ない居酒屋とか、派遣会社とかへの就職ばかり。とか、

 

いやいや、勉強になります。

 

さて、ここで質問なんですが、

 

そんな学校だろうが、どんな学校だろうが、高等教育機関なんでしょ?

合格させてくれただけで恩の字。

ビザがつながればOK!

 

といって、学生をとっとと放り出すか。

 

あそこの学校は、こんな(悪い)学校なんだよ。

今ビザをつなぐことより、ちゃんと就職させてくれる学校を頑張って受験して、〇年後ちゃんと日本の会社に就職しようよ。

 

と、学生をやる気にさせて、なんとか協力して少しでもいい学校への入学を目指すか。

 

皆さんの学校はどちらですか?

 

まあ、最終的には学生が決めることです。

いくらこちらが「悪い学校なんだから!」と言っても、学費を払うのは学生側。

最終的に、こちらの反対を押し切って、入学して行く分には、自己責任です。

 

でも、ここで日本語学校の質が問われます。

 

学生の中には、そういう悪しき高等教育機関に入学してから現実を知る学生も少なくありません。

でも、入試を頑張って受けて、合格して、高いお金を払って入学して、からじゃ遅い!

 

「日本の大学や専門学校にも、お金だけ取って何にもしてくれない、悪い学校はたくさんある。」

ということを、入学した時から折に触れて話して聞かせて、

受験準備時期になったら、そういう学校をどうやって見抜くか、その技を伝授し、

できるだけ、カモるだけの学校にひっかからないように、普段から教えておくのも一つの方法ではないかと思うのです。

 

まあ、未だに曲者の結果が出てない学生を抱えている学校の教師の私が、大きい顔して偉そうには言えませんが。

 

当校ではそういう悪徳学校への入学者は、なんとか今のところ一人だけにとどまっておりますが、言い聞かせていても、弱い学生ほど楽な方に流れていくもんですね。

残念です。

 

出来の悪い学生、

手を焼いた学生、

どうしようもない!とこちらが半分さじを投げかけた学生、

 

そういった学生が、何とか「悪徳」じゃない、就職まで面倒見てくださる、良心的な高等教育機関への合格を勝ち取って、

何年か後、「先生、お久しぶりです。就職が決まりました。」

と、久しぶりに日本語学校へ顔を見せに来る。

下手だった日本語もすっかり上手になって、

気なんか使ったことないのに、手土産かなんか持って来てくれたりして、

先生の前ではどうしようもなく、すぐぶーたれていた子だったのに、笑顔で「あの時はお世話になりました。先生のおかげです。」とかなんとか、いっぱしの挨拶もできるようになって。

 

っと、こんなシーンを夢見ているんですよ。私は。

 

今まで20年近い日本語教師生活の中、こんなシーンは何回か、それこそ数えるぐらいだけどありました(ブログにも書きました。)

この20年、この仕事を続けてこられたのは、ほんの数回でもこのシーンを体験しているからと言っても過言ではない!

 

醜いアヒルの子が、白鳥に変わるときを、私は「覚醒」と呼んでいます。

そしてそれを感じるのは教師と学生だけじゃない。

何よりもずっと離れていた親なら、久しぶりに会ったわが子の、成長しているのがわかる。

日本語が上達したかどうかでなく、それ以外のわが子の変化がわかるもんです。

 

実際、国にいる親御さんからお礼の電話を頂いたこともあります。

あなたの日本語学校を選んでよかった。

私の子を日本へ行かせてよかった。

本当にありがとうございました。

 

通訳の職員も教師もみんな泣きました。

 

これぞエクスタシー!

これを体験したら、もう日本語教師をやめられません。

 

でも!

どんな学校でもいいから放り出せ!

という受験指導をしていたら、こんな夢のシーンは永遠に体験できませんよ。

 

そして!

いくらあなたがエクスタシーを目指しても、「放り出せ」主義の日本語学校に何年勤めていたって、エクスタシーを感じることはできませんよ。

 

ところであなたは、日本語教師のエクスタシー、感じたいですか。